旅行会社大手のJTB(東京都品川区)が2023年3月期に3期ぶりに営業損益を黒字化した。
2022年10月に始まった「全国旅行支援」による国内旅行需要の回復や、インバウンド(訪日外国人旅行客)の回復などで、旅行事業が好調に推移したことに加え、出版、商事など旅行以外の事業も堅調だったのが要因。同社ではこの傾向は2024年3月期も続くとみており、2期連続の営業黒字を見込む。
同じ旅行事業を手がける大手のエイチ・アイ・エス(HIS)<9603>は回復が遅れており、2022年10月期は3期連続の営業赤字に陥っており、2023年10月期も第1四半期では営業赤字から抜け出せていない。両社の差はどこから生まれたのか。
売上高が大台に復帰
JTBの2023年3月期の売上高は9779億7700万円で、前年度により67.9%増えた。個人や法人向けの旅行事業である「ツーリズム」をはじめ、観光事業者や自治体に対するソリューションを提供する「エリアソリューション」、法人に幅広いソリューションを提供する「ビジネスソリューション」、海外で展開する旅行事業の「グローバル」などがすべて増収となったことから、70%近い伸びとなった。
営業利益は336億3600万円で、前年度(48億8000万円の赤字)より、400億円近い増益となった。「グローバル」が100億円を超える赤字だったが、「ツーリズム」「ビジネスソリューション」が100億円を超える利益を計上したことなどから、大幅な増益を達成できた。
2024年3月期については、売上高はコロナ禍前に計上した1兆円の大台に乗る1兆1034億円(前年度比12.8%増)を見込む。国内の旅行市場がコロナ禍前の96%ほどに回復するほかインバウンドも92%に回復するとみており、この需要を捉えることで大台復帰を目指すという。
営業利益は134億円と前年度比60.2%の減益となるものの、黒字を確保し、最終利益でも黒字を見込む。
黒字化の時期は近い?
一方、HISは回復に手間取っている。同社の2022年10月期の営業損益は479億3400万円の赤字で、前年度の640億円の赤字からは減少しているものの、依然3ケタの赤字が続いている。
同社では2023年10月期の業績予想を未定としており、黒字転換できるのかは分からない状況にある。2023年10月期第1四半期の営業利益は34億3900万円の赤字で、このままの状況が続けば100億円を超える赤字になる計算だ。
ただ、2023年10月期第1四半期は前年同期(121億5800万円)に比べると、赤字幅が4分の1近くにまで縮小しており、期末に向けて黒字化してくることも予想される。
同社の売上高は2022年10月期に増収に転じており、2023年10月期第1四半期の売上高も37.4%増えている。国内の旅行需要やインバンド需要を捉えることができれば、さらなる増収も見込める状況にある。黒字転換の時期はそう遠くはないかも知れない。
文:M&A Online