牛丼チェーン店の「すき家」を展開するゼンショーホールディングス<7550>と、同じく牛丼チェーン店「吉野家」を展開する吉野家ホールディングス<9861>の間で、牛丼部門の売り上げ回復力に明らかな差が現れている。
コロナ禍の影響でゼンショーは2021年3月期に、吉野家は2021年2月期にそれぞれ牛丼部門の売り上げが減少。その後、両社ともに増収に転じているもが、2022年、2023年の伸び率に大きな開きが生じているのだ。その要因はどこにあるのだろうか。
出店戦略に大きな違い
ゼンショーはコロナ禍の影響の強い2021年3月期に牛丼部門の売上高が1.6%減少した。翌2022年3月期には7.5%の増収、2023年3月期はさらに大きく伸び12.5%の増収となった。
これに対し吉野家は2021年2月期に5.4%の減収となったあと2022年2月期は1.4%の増収、2023年2月期は6.3%の増収に留まった。両社の伸び率は2022年が5倍強、2023年が2倍ほどの開きとなった。
直近の2023年のそれぞれの決算を見てみると、すき家は「白髪ねぎ牛丼」「ニンニクの芽牛丼」などの新製品を投入したほか2023年2月に値上げを実施した。
吉野家は10年ぶりに「親子丼」を復活させ、「呪術廻戦」とのコラボを実施したほか、2022年10月には値上げを行った。
両社ともに販売拡大のための同様の取り組みを展開しており、値上げの影響についても両社ともに値上げ月の売り上げの伸び率は高く、その後は少し伸びが抑えられた状態となるなど、値上げ時期の違いなどの影響も見られない。
改装転換をスピードアップ
そうした中、両社の出店戦略に大きな違いを見ることができる。ゼンショーはコロナ禍の中でも、店舗数を増やし続けており、2023年3月期は3100店に達し、コロナ禍前の2019年3月期(2891店)より209店増えた。
一方、吉野家は2021年2月期に店舗数が減少に転じ、2022年2月期は1店、2023年2月期は7店の増加に留まっており、コロナ禍前の2019年2月期(1211店)より14店少ない状態にある。
この取り組みの違いによる売上高伸び率の差は、新年度に入ってもはっきりと現れており、すき家の2023年4月の月間全店売上高が123.0%と大きな伸びになっているのに対し、吉野家の2023年3月は109.7%、4月は110.1%に留まった。決して低い伸び率ではないが、すき家とは2倍以上の開きがある。
このまま両社の差は開き続けるのか。吉野家ホールディングスは2024年2月期に「新サービスモデル店舗への改装転換のスピードのギアを上げ、期中に100店舗以上の改装を行う」としている。この取り組みが吉野家反撃の始まりとなるだろうか。
文:M&A Online