麺類大手のトリドールホールディングス<3397>、サガミホールディングス<9900>、グルメ杵屋<9850>の3社の間で、コロナ禍からの回復の足取りにバラつきが生じている。
うどんの「丸亀製麺」を展開するトリドールがコロナ禍真っ只中の2021年3月期に営業赤字に陥ったものの翌年には営業黒字に転換し、2024年3月期まで3期連続の営業黒字を見込む。
そばやうどんの「和食麺処サガミ」などを展開するサガミは2020年3月期に営業赤字に陥り2022年3月期まで3期連続の営業赤字が続いたものの2023年3月期は営業黒字に転換、2024年3月期も営業黒字を見込む。
これに対しそばの「そじ坊」やうどんの「杵屋」などを展開するグルメ杵屋は2020年3月期に営業赤字に陥り2023年3月期まで4期連続の赤字が続いており、2024年3月期にようやく営業黒字に転換する見込みだ。3社の回復の足取りを分けたのは何なのか。
積極的な海外出店が奏功
トリドールの2022年3月期は、国内で「丸亀うどん弁当」などのテイクアウト商品を投入したほか、アジアや英国などで積極的に出店した結果、丸亀製麺部門と海外事業部門が大幅な増収となり、これに伴って営業利益も大幅に増え、黒字転換を果たした。
2023年3月期は、テレビコマーシャルやSNSなどを活用したほか、「俺たち豚汁うどん」などの新商品を投入。さらにアジアや欧州、北米を中心に積極的に出店したことから、営業黒字を達成。2024年3月期も積極的な出店を続け、3期連続で営業利益を確保する計画だ。
頻繁なキャンペーンで客数が増加
サガミの2023年3月期は、全店の販売促進企画として「料理フェア」を9回開催したほか、季節ごとのクーポン券の配布や、自治体とのコラボ、選挙の際に投票済証明書の提示で値引きするキャンペーンなどを数多く実施したことなどから、既存店の客数や客単価が上昇し、4期ぶりに営業黒字に転換した。
2024年3月期は、国内で主力の「和食麺処サガミ」「味の民芸」の出店に取り組み、海外でも「SAGAMI」の出店を進める。このほかセルフそば業態の出店を加速することにしており、これによって2期連続の営業黒字を確保する計画だ。
業務改善が遅れ気味に
一方、グルメ杵屋の2023年3月期は、既存ブランドの店舗の出店を加速させ、15店を開業したが、これを上回る20店を閉店した。また店舗の省力化や効率化などの業務改善を進めており、新たなマーケットの開拓にも取り組んだが、4期連続の営業赤字から脱することができなかった。
2024年3月期は「利益が見込める新規出店に投資を集中する」としているほか、既存店の収益力の改善などにも取り組み、5期ぶりに営業黒字を達成する計画だ。
積極的な海外出店や頻繁なキャンペーンなどに取り組んだトリドールやサガミに対して、店舗の省力化や効率化が遅れ気味となったグルメ杵屋との間で、コロナ禍からの回復に差が生じたようだ。
文:M&A Online