数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Onlineがおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

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「海外ビジネスマネジメント 現地法人の戦略的撤退と次世代進出」 フェアコンサルティング編著、金融財政事情研究会刊

海外で活動する日本企業の現地法人は2万5000社を超えており、560万人もの雇用を生んでいる。これら企業はコロナ禍によって、コロナ禍前に定めた前提や経営方針の見直しに迫られており、思い切った撤退も視野に入れなければならない状況に置かれている。

筆者はコンサルティング会社の経営者や従業員らで、同コンサルティング会社には海外からの撤退や現地法人の売却、帰国した日本人駐在員に代わっての業務実行、コスト削減などの相談が多く寄せられているという。

同社ではこうしたニーズに対応して、多くの撤退の支援を行っており、そこで得られた知見から「すべてを自社でまかなおうとする自社完結型の海外進出」や「撤退条件を明確に定めない進出計画」「管理より製造、販売などの現場を重視する運営」などからの脱却が必要な時期を迎えていると強調する。

M&A Online

(画像=「M&A Online」より引用)

本書は実際に撤退に関わった社員らが、手続きのやり方や、交渉の流れなどの具体的な内容をまとめたもので、11の事例(中国5、香港2、インドネシア1、タイ2、ドイツ1)と、撤退の検討の進め方や企業売却といった撤退の実務にかかわる78のQ&Aから成る。

例えば、渡航制限があるために日本本社の担当者が誰もいないまま従業員説明会や現地法人の銀行口座閉鎖などを完了した中国での事例や、業績改善の見込みめど立たないため撤退の作業に入ったものの、税務調査で追加納税を求められたインドネシアの事例などが紹介されている。

またQ&Aは「現地法人の撤退にはどのような方法がありますか」「現地法人清算の場合の注意点を教えて下さい」「撤退のための専門家とはどのような人たちですか」といった具合で、この二つの章で全体の3分の2ほどを割いている。

そのうえで筆者は資源のない日本では、企業の海外進出が避けられないとし、コロナ禍後の次世代の進出にも言及する。

海外進出を検討している企業には、撤退する日本企業の現地法人や、事業承継問題を抱えた現地企業を対象にしたM&Aによる海外進出を勧めるとともに、今後はベンチャー投資やCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を活用した海外進出が大きな流れになると予想する。

撤退を考えている経営者はもちろん、これから海外進出を考えている経営者や海外事業担当者、さらには企業を資金面で支える金融機関の担当者らにお薦めだ。(2023年3月発売)

文:M&A Online