退職金運用
(画像=ZUUonline編集部)

退職金運用をする際には資産運用のプロに相談をすることがおすすめです。とりあえずメインで利用している大手の銀行や、最寄りの証券会社でしていないでしょうか。一口に「お金の相談」といっても、相談先によって得手不得手の領域があり、またそれぞれで販売可能な金融商品も異なります。

また、退職金の運用で失敗しないための金融商品や意識すべきポイントも紹介します。

退職金の運用をおすすめする理由

定年退職後の生活

定年退職後の生活費の柱は公的年金であることが一般的です。しかし、公的年金を受給できるのは原則として65歳からですので、仮に60歳で退職した場合、65歳までの5年間は無収入で生活をしなければなりません。

老後の生活が何年続くのかも大きな問題です。日本人の平均寿命は徐々に上がっており、1990年には男性73.35年、女性78.76年だった平均寿命は、2021年には男性81.47年、女性87.57年まで伸びています。(※出典:厚生労働省「簡易生命表の概況」)

さらに、2040年は男性83.27年、女性89.63年まで上昇する見込みです。

預貯金だけで老後を生活するのは難しい

老後資金は2,000万円が目安と言われていますが、2,000万円あれば本当に不安なく生活できるのでしょうか。

老後の最低日常生活費は、夫婦2人で月額23万2,000円、さらにゆとりある老後生活には月額で37万9,000円が必要とされています。(※出典:生命保険文化センター「生活保障に関する調査」)

一方、日本年金機構が2023年4月に発表した年金額は、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額で月額22万4,482円です。

最低日常生活費で老後をずっと生活できれば老後資金は2,000万円で足りそうですが、ゆとりある老後生活を考えると4年と5ヵ月後、つまり年金受給開始年齢に達するまでに2,000万円の資金が底をついてしまいます。

インフレが進んだ場合は資産価値が目減りする

将来のインフレも心配です。2022年に物価の上昇などを実感した人も多いと思いますが、今後もインフレが続く可能性は十分にあります。

たとえば5年後に物価が10%上がっていた場合、現在の2,000万円の価値は、2,000万円÷110%=1,818万円と同じです。つまり、インフレになると資産は目減りしてしまいます。

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退職金を運用しないとどうなる?

退職金運用をしなかったAさんの場合

大企業に勤めていたAさんは60歳の時に退職金として2,000万円を受け取り、退職しました。子どもはすでに大学を卒業して独立しており、教育費の心配はありません。

夫婦2人の生活費は月25万円ですが、65歳から受け取る年金は月額23万円です。Aさん夫婦は70歳までは年に1回旅行(20万円程度を予定)に行き、70歳以降は質素に暮らす予定でした。

ところが、いざ65歳(年金受給年齢)になってみると、退職金は400万円にまで減っていました。年1回の旅行をやめ、生活費を切り詰めればなんとかなると考えていましたが、孫が生まれるなど、思ったように支出は減りませんでした。

65歳時点の月々の収支は赤字2万円で抑えていますが、このまま何もなくても17年後、つまり82歳の時には資金が底をつく計算です。

資産400万円では運用も難しいため、Aさんは日々将来に不安を感じながら生活しています。

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退職金の運用でおすすめの金融商品

退職金の運用でおすすめの金融商品比較表

ここでは、退職金の運用先としておすすめの金融商品を3つ紹介します。

【退職金運用におすすめの金融商品比較】

外国債券個人向け国債投資信託
リターン中〜高
リスク中〜高
最低購入金額数万円〜百万円程度
(銘柄による)
1万円〜100円〜
購入元証券会社、IFAなど銀行、証券会社、IFAなど証券会社、IFA、
銀行(一部)など

外国債券

外国債券とは海外の国や会社が発行する債券のことです。債券は株式と同じ有価証券ですが、株式に比べると値動きが少なく、比較的安定した金融商品といわれています。

外国債券の特徴は、日本の債券に比べて金利が高いことです。たとえば、代表的な外国債券である10年の米国債は、2023年5月30日時点で3.74%の利回りがあります。

ただし、為替の影響(為替リスク)を受けるので、円高になると損失が出るかもしれません。また、販売しているのが一部の証券会社やIFAと限られているため、他の金融商品より購入しにくい金融商品です。

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個人向け国債

個人向け国債は日本国が発行する債券で、国が元本を保証しているため、非常に安全な資産といえます。また、変動金利型10年満期の商品は2023年5月時点で0.29%(税引き前)と、銀行の預金より金利は高めです。そのうえ、変動金利なので将来のインフレにもある程度対応します。

デメリットはやはり利回りが低い点です。預貯金よりは高利回りですが、個人向け国債だけでお金を増やすのは難しいでしょう。

投資信託

投資信託とは、多くの投資家から集めたお金を1つの資金として、専門家(ファンドマネージャー)が株や債券、不動産などに投資する金融商品です。

少額から購入でき、専門家があらかじめ分散投資をしている銘柄を購入するため、投資初心者でも始めやすいでしょう。

ただし、個別の株式や債券を購入する場合と違い、ファンドマネージャーが株式や債券を組み合わせて運用しているため、信託報酬という手数料が常にかかります。

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退職金の運用で意識すべきポイント

増やす運用よりも減らさない運用を意識する

収入が限られる退職後の運用では、積極的にリターンを狙うのはおすすめできません。というのも、リターンが高い投資はリスクも高いからです。インフレが起こった時、または円安になった時に備え、資産を目減りさせない運用を目指しましょう。

ライフプランに応じた運用方針を決める

運用には「○○年後に○○万円の資産を築く」といった目標が必要です。なんとなく投資をしていてもうまくいくことは稀でしょう。この目標を決めるには、それぞれのライフプランが必要です。まずはどのような老後を送りたいかを明確にしましょう。

資産アドバイザーに相談する

資産運用の経験が少ない場合は、お金の専門家に相談することも検討しましょう。退職後の資産運用には失敗が許されません。専門家に相談することで、老後のさまざまなリスクや具体的な運用方法を提案してもらえるはずです。

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退職金を運用する際のおすすめの相談先

銀行や証券会社だけではない! 退職金運用の相談先を決める上で重要なポイント

退職金の運用先として、メインバンクや最寄りの証券会社が思い浮かぶかもしれません。しかし、それらを「なんとなく選ぶ」のはおすすめできません。それは、相談できる内容や購入できる金融商品は、相談先によって異なるからです。

まずはご自身の退職後のライフプランを決めた上で、必要な金融商品を扱っている事業者を選びましょう。

銀行では個別株式を取引できません。投資信託も販売している商品の種類が限られています。また、メガバンクや大手の証券会社は系列会社が金融商品の販売に力を入れていることが多いため、顧客のニーズに完全に叶う提案をすることは難しいでしょう。その代わり、販売商品に対する情報は豊富です。

一方、FPは基本的に保険以外の金融商品は販売していないので、金融商品の説明よりはライフプランを元にした運用方法を中心に提案します。

IFAは証券会社と契約する独立系の金融仲介業者です。ライフプラン作成重視タイプか、商品提案重視タイプかは、それぞれの事業者によって異なります。

相談先を選ぶ時は、それぞれの事業者がどのような金融商品を取り扱っているか、また得意分野がどの分野なのかを調べるといいでしょう。

退職金運用の相談先比較表

銀行証券会社FPIFA
商品の提案内容
(系列の商品が多い。営業ノルマがある)

(系列の商品が多い。営業ノルマがある)
×
(商品を販売できない)

(幅広い商品)
長期的なサポート
(転勤あり)

(転勤あり)
相談の気軽さ
(取引がないと敷居が高い)

(取引がないと敷居が高い)



債券
(国債のみ)

(表に出ていない銘柄も購入可能)
個別銘柄
不動産×
プライベート
エクイティ
××
ヘッジファンド×
(国内投資信託として組成された商品)
×
(海外のヘッジファンドを直接買えるケースもある)

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退職金の運用におけるよくある質問

Q.退職金を運用すべき理由は何ですか?

A.将来インフレが起こった時や、想定以上の長生きに備えるためです。あくまで資産を目減りさせないためなので、大きく増やそうという欲は持たない方がいいでしょう。

Q.退職金の平均受給金額はいくらですか?

A.厚生労働省が2018年に発表した「平成30年就労条件総合調査」によると、勤続20年以上かつ45歳以上の退職者の平均退職給付額は、大学・大学院卒で1,983万円、高校卒(管理・事務・技術職)で1,618万円でした。

Q.退職金の運用はどこに相談したらよいですか?

A.相談する目的によりますが、全体的な資産運用なら独立系FPやIFA、購入したい金融商品が決まっているのならその金融商品を販売している事業者(銀行、証券会社など)がいいでしょう。

Q.退職金はどのように運用したらよいですか?

A.あくまで「守りの運用」を心がけてください。比較的値動きが少ない国内債券や外国債券を中心に、インフレや円安に対応できる運用がおすすめです。

Q.退職金運用の注意点は何ですか?

A.1つの相談先で運用方法を決めないことです。多くの人にとって、退職金は人生で最も大きな金額が一度に得られるタイミングです。1つの相談先が勧める2〜3個の金融商品で運用せずに、さまざまな意見を聞き、しっかりと分散投資を行いましょう。


松岡 紀史
松岡 紀史
この記事の執筆者

日本FP協会認定AFP。筑波大学大学院経営・政策科学研究科(現システム情報工学研究科)でファイナンスを学ぶ。元システムエンジニア。節約や貯金など地道な作業の大切さと、「投資だけ」「保険だけ」に偏ることのないバランスの取れた資産運用を広めるため、執筆・セミナー・個別相談などを行っている。ライツワードFP事務所代表。
■保有資格
プライマリーPB資格
AFP資格

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