ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「ドル円に去年ほどの勢いはない。去年のドルは2位、今年は6位」

ドル円=137-142、ユーロ円=147-152、ユーロドル=1.05-1.10

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨10位(10位)、株価3位(3位)、ドル円に去年ほどの勢いはない。去年のドルは2位、今年は6位」
 ドル円に去年ほどの勢いはない。去年のドルは全体(12通貨中)で2位だったが、今年は6位だ。当局も去年ほどの円安への危機感は感じていない。先週は円安牽制はなかった。5月30日の財務相・日銀・金融庁の3者会談での円安けん制は「米国債務上限問題」への対応のオマケにすぎなかった。需給面ではまだ貿易赤字だが原油価格下落による輸入額の減少も影響している。ただ20世紀の大貿易黒字、大円高時代に戻るかどうかについては、中国やアジアに移管した日本の製造業の回帰が必要でそれは難しい。

 さて今週は日銀政策決定会合がある。先週、日銀植田総裁は「今年度後半に物価上昇が2%を割り込むと見ているので粘り強く金融緩和を継続していく」と発言しているので、それを反映して、イールドカーブコントロール(YCC)を軸とした現行の金融緩和政策の継続となるであろう。黒田総裁のように、植田総裁も度々緩和継続の発言をするが、貿易需給が変わりつつあるので、黒田総裁のような円安への勢いはない。
 日本の景気も実質賃金は伸びないが全体としては緩やかに回復している。1-3月期のGDP改定値は前期比年率2.7%増と、速報値の1.6%増から上方修正された。それも株価へ好影響をもたらしている・
ドル円では2週連続で週足は陰線だ。週のドル下降トレンドが継続か打ち破られるかどうかにも注目したい。ブレイクポイントは140円だ。

*米ドル「通貨6位(6位)、株価(NYダウ)15位(18位)、消費者物価、FOMC、ミシガン大。去年ほど強くはないドル」
 今週は米5月消費者物価、FOMC、6月ミシガン大学消費者態度指数を淡々とこなしていきたい。フェッドウオッチではFOMCは政策金利を1年3カ月ぶりに引き上げを停止するとの見方が7割以上だ。これは前回のFOMCでパウエル議長が「これまでの利上げの遅延効果や一連の地銀経営破綻が与信に与える影響について、一息入れて検証したい」という考えを示していたからだ。

 イエレン財務長官は労働市場が強さを維持しながらもインフレは低下の「軌道」にあるとの見方を示した。また、在宅勤務など働き方が変化する中で商業用不動産では「課題」が生じるだろうと述べた。ベージュブックは物価については、緩やかに上昇したが、多くの地区で上昇ペースが鈍化したとした。

 一方、景気は当初予想されたリセッションからは抜け出そうとしている。世銀は米国の2023年の成長率見通しは1.1%と、前回予測の0.5%から引き上げた。直近のアトランタGDPナウは2.2%、CNNの恐怖と欲望指数は77と「非常に強い欲望=リスク選好」となっている。景気が底堅くインフレが低下という望むべき経済へ向かっているがドルが昨年と比べると弱いのは、資源価格の下落で、ドル需要が減殺されているからだ。

*ユーロ「通貨5位(5位)、株価6位(6位)DAX)、ドイツが足を引っ張っている」
 今年は資源価格の低下で「持たざる国」の通貨が回復しているがユーロはやや一服。ECBは常に粘着質のインフレで金融引き締めの継続を示唆するが、ドイツはリセッションに陥ってしまった。物価も
物価もギリシャやスペインは3%前後で推移しているがドイツは6.1%と高く、ドイツの高インフレを抑制するための金融政策となっている。

 今週もECBの0.25%利上げが予想されている。インフレが下降傾向にあるとしても、ECBには利上げを一時停止したり、反転させたりする用意はない。コアインフレが着実に下降軌道に乗っているという反駁できない証拠はまだ十分ではない。ECBは7月に再度利上げを行った後、利上げを停止する可能性が最も高いと考えられる。
 ただ日本と違って、ユーロ圏の貿易収支は黒字である。それを牽引する独の貿易収支はロシアのウクライナ侵略の資源高でも赤字にならなかった強みがある。円程、弱くはならないだろう。
先週はユーロドルの日足がボリバン中位を越え、週足は5週ぶりの陽線となり、反騰の兆しを見せている。

*ポンド「通貨2位(2位)、株価18位(16位)、先進国で一番高いインフレ。金融引き締め継続でポンド上昇もリセッション懸念は残る」
 英ポンドは12通貨中2位と強い。インフレは先進国で一番高く、株価は弱い。2023年のインフレ率は6.9%と予想。今年の総合インフレ率が英国よりも高いと予想されているのはアルゼンチンとトルコだけだ。6月22日の金融政策委員会で政策金利を0.25%引き上げて4.75%にすると予想されている。

 金利上昇やインフレの持続などの要因が今後2年間の英国経済の成長を押し下げる可能性がある。英国が景気後退に陥るリスクは依然として高い。今週発表される4月の英国のGDPは、前月比0.2%回復すると予想されている。 3月は0.3%下落。イースター休暇中に観光業が回復したため、サービス部門の活動が成長を牽引する可能性が高い一方、製造業は依然として弱い関係にある可能性がある。一方、失業率は4月までの3カ月間で3.9%で変わらないとみられる。

 さてEUを離脱してからは積極的にそれ以外の国と経済外交を展開している英国だが、先週の英米首脳会談では、人工知能への取り組み、グリーン産業とサプライチェーンを支援するための緊密な経済協力に関する協定に署名した。米国のインフレ抑制法に明記された米国の巨額補助金と減税を最終的に英国の製造業者に利用できるようにする協定に向けた作業を開始することで合意した。ただ米国と英国は依然として包括的な自由貿易協定の締結には程遠い。

*豪ドル「通貨7位(8位)、株価19位(17位)、市場の予想外の利上げで豪ドル上昇も景気は強くはない」
 豪ドルはやや強含んでいるが、資源価格の下落の中では勢いはない。RBAは先週は予想外に0.25%の利上げを行ったが、本紙では、据え置き予想に違和感を伝えていた。まだインフレが低下する状況ではなかったからだ。4月の消費者物価は前年比で6.8%上昇、3月の6.3%から加速し、予想の6.4%も上回った。最低賃金も、生活費高騰を受けて7月1日から最低賃金を5.75%引き上げると発表されていたからだ。RBAロウ総裁自身も「インフレに対するリスクは上向きで、われわれはそれに留意する必要がある」と述べていた。

 予想される今週のFOMCでの政策金利据え置きは、豪との金利差が拡大することもあり豪ドルを支えている。市場は早速、7月、8月の追加利上げを視野に入れているが、それは時期尚早だろう。あくまでもデータ次第だ。1QのGDPは1年半ぶりの低い伸び率だったことなど急激な経済減速リスクも高まっている。 GDPは前期比0.2%増で、伸び率は昨年4Qの0.5%から鈍化し、予想の0.3%を下回った。
 前年比では2.3%増加。予想の2.4%増に届かなかった。物価高と金利上昇により個人消費が打撃を受けた。

*NZドル「通貨9位(9位)、株価17位(12位)、リセッションとなるか、免れるか」
 ドル安の流れや、豪ドルの強さでNZドルも先週は連れ高となった。ただ予想外の利上げを行った豪ドルに対しては弱く、豪ドルNZドルレートはここ3週間で1.05台か1.10台へ上昇(豪ドル高・NZドル安)している。NZ中銀は、RBAとは逆に政策金利が現水準の5.5%でピークを迎え、2024年半ばまで同水準にとどまると予想、オア中銀総裁は、金利上昇がすでに望ましい効果をもたらしている兆候があるとの認識を示している。NZ中銀の元総裁補佐を務めたジョン氏は、銀行コストの上昇が見込まれており、環境がさらに厳しくなり、政策金利(OCR)が早期に引き下げられる可能性が高まるまで述べている。

 4月の新規住宅着工許可件数は、前月比2.6%減少した。利上げ打ち止め感の要因となってうた企業信頼感は5月は上昇した。多くの活動指数が上昇に転じたため。向こう1年間に経済が悪化すると予想した回答は差し引き31.1%と、4月調査の43.8%から改善した。
 また、向こう1年間に自社の事業が縮小すると見込んでいる回答は差し引き4.5%。先月は7.6%だった。インフレ指標は緩和したものの、向こう3カ月にコストが増加するとみる企業の割合は依然高いと指摘されている。今週は1Q・GDPの発表がある。リセッションとなるか、免れるか。