外為マーケットレポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

注目の中銀ウィークが終わった。

先ずはFOMC.
市場予想通りに政策金利(Fed Fund Rate.)の利上げを見送ったが年末のターゲット・レート(ターミナル・レート)中央予想値を前回の5.1%から0.5%引き上げて5.6%とした。

但し市場はこの決定に納得した訳ではなく、先物市場ではFed Fund Rate.がFOMC.前の5.1%から6月18日には5.2%へと小幅に上昇したに留まった。

相変わらずFRB.と市場には年末の金利水準に関してPerception.(感知、認識、知覚)の違いが有る模様である。

それはFOMC.メンバーとパウエルFRB.議長との意見の相違にも見られ、パウエル議長は7月の再利上げに関しては明確な意見は述べず、"我々は会合ごとに意思決定を続けていく。"とお茶を濁した。

過去2年、FOMC.のインフレ予測は外れていた。とも自戒しており、市場が"タカ派的FOMC."と呼んだ今回の会合に関してそんなにタカ派的とも思えないと言うのが塾長の個人的な意見である。

利上げは行わない。と言っておいて物価状況や経済指標によって利上げせざるを得ないよりは、"利上げを行う。"と言っておいて状況によっては利上げをしない方が市場には説得力が有るのではなかろうか?


次にECB.理事会。
此方も予想通りに8会合連続となる0.25%の利上げを行い、景気後退懸念よりも物価重視が優先であることを明確にした。

ラガルドECB.総裁は"ECB、利上げでまだやるべきことがある。"、"7月に利上げの公算が極めて大きい。"、"利上げの見送りや停止は議論せず、考えもしなかった。"と言い切り、躊躇なく更なる利上げを継続することを強調した。

これを受けてユーロは対ドルでは再び1.10の大台に近付く上昇を見せ、対円では凡そ15年ぶりの高値となる155円台を示現した。


そして最後に日銀政策決定会合。
此方も市場予想通りに、"何も変更無し。"
一部にはイールド・カーブ・コントロール(YCC.)政策の変更に期待する向きも有ったが、見事にそれは裏切られた。

但し決定会合後での植田日銀総裁のコメントには多少気になる表現が盛り込まれた。
植田総裁は金融引き締めが遅れるリスクは早過ぎるリスクより小さいとの認識を改めて示したうえで、YCC.修正は"ある程度のサプライズはやむを得ない。"とも語った。

言い換えれば、現状の政策を続行するものの、物価情勢により顕著な変化が見られたら唐突なタイミングでYCC.修正を行う可能性があることを示したのではなかろうか?

まあ、当たり前の事である。

中銀ウィークが終わり、FRB.は一旦利上げを停止したものの再利上げを仄めかし、ECB.は更なる利上げ続行を高々と宣言した。
そして日銀は現時点では頑なに緩和政策からの脱却を拒否。

これでは円安が進まざるを得ない。

但しFRB.、日銀共に明らかに状況の変化を認めている。
そしてこれからはFRB.は利上げ停止、そして利下げ開始、日銀は緩和政策からの脱却、そして利上げ開始(その前にYCC.の変更。)が待っている。

機(果物)は熟しつつある気がしてならないが、未だそれを食べるまでには至っていないのであろう。

台風が来て折角熟した実を根こそぎ落とされる前(介入やポジション調整などのドル売り&円買いの動き。)に、実を収穫する心の準備(良い所でドル・ショートに振る。)だけはしておきたい。

今週のテクニカル分析の見立てはレンジが上にシフト。
市場は22年10月高値の151円95銭から、22年1月安値の127円23銭の61.8%戻し(142円51銭)を当面の大きなレジスタンス(上値抵抗線)と見ており、又介入にも警戒したい。
139.50~142.50を新しいレンジとして、139.50が下切れた場合は要注意。