「マーケットピーク事件」からの教訓、なぜ若い人たちは投資詐欺に狙われるのか
(画像=Kiattisak/stock.adobe.com)

2023年5月、暗号資産に関連するマルチ商法を展開していた「マーケットピーク」のグループが摘発され、幹部が逮捕される事件がありました。暗号資産の値上がりによる利益と紹介者への謝礼で「儲かる」と謳って若い人たちを勧誘し、多くの被害者を生み出しました。

手口自体は古典的なマルチ商法なのですが、なぜここにきて若い人たちが狙われ、被害が拡大したのでしょうか。今後も同様の手口が登場することは必至なので、特に若い人たちへの注意喚起をする意味で、投資詐欺やマルチ商法に関する手口や対策を解説したいと思います。

「マーケットピーク事件」とは

「マーケットピーク事件」からの教訓、なぜ若い人たちは投資詐欺に狙われるのか
(画像=Arsenii/stock.adobe.com)

9人もの逮捕者を出し、7億円以上を集めたとされる「マーケットピーク事件」で何が起きたのかについて最初に確認しておきましょう。

中東ドバイに拠点があるという「マーケットピーク」が発行する暗号資産(仮想通貨)を購入することで得られる値上がり益や紹介者への謝礼などによって大きな利益が得られるとしておもに若い人たちを勧誘し、新規入会者に多額の現金を負担させていたのが「マーケットピーク事件」の概要です。

初期投資に140万円ほどが必要ですが、若い人たちのなかでそれを用意できる人は少なく、多くの新規入会者は消費者金融などからの借金で支払っていたといいます。それに備えて「マーケットピーク」側では消費者金融の審査に通りやすくする方法まで指南していたとのことです。

しかし、「マーケットピーク」が言うような利益が得られることはなく、多額の投資をした人たちのもとには借金だけが残ることになりました。こうした被害者は約2,500人にのぼり、集めた資金は7億円を超えます。

暗号資産をテーマとしている部分では今どきといえる「マーケットピーク事件」ですが、手口自体は古典的なポンジスキームです。古くから多くの事件が起き、被害者を出してきた手口ですが、近年ではSNSやマッチングアプリなどを介して若い人を中心にこうした「儲け話」が流布しやすいことも被害拡大の一因となっています。

なお、ポンジスキームについては詳しく解説している記事がありますので、そちらもご参照ください。

コロナ禍だからこそ気をつけたい!古典的手口「ポンジスキーム」の見破り方

同様の手口は金融庁も注意喚起していた

「マーケットピーク事件」からの教訓、なぜ若い人たちは投資詐欺に狙われるのか
(画像=Jintana/stock.adobe.com)

「マーケットピーク」は暗号資産ですが、これ以外にもFXや未公開株などは投資詐欺やマルチ商法のテーマとして定番といえるもので、金融庁はこうした一連の投資詐欺についての注意喚起をしています。

今回の「マーケットピーク」も、金融庁が注意喚起しているものに該当すると考えられます。これまでにも多くの投資詐欺やマルチ商法の事件があり、古典的な手口がいまだに健在であることを考えると、こうした事件は今後もなくなることはないでしょう。

手を変え品を変え登場する可能性は高く、今は大丈夫であっても今後に向けて被害を回避できるように備えておく必要があります。

SNSにあふれる「儲け話」にご用心

「マーケットピーク事件」からの教訓、なぜ若い人たちは投資詐欺に狙われるのか
(画像=panuwat/stock.adobe.com)

先ほども述べたように、近年は投資詐欺やマルチ商法の情報を拡散するのにSNSを活用する事例が多くなっています。FacebookやYouTubeなどで流れる広告はもとより、自分自身が成功者として名乗り、「自分の経験」と称して大きな利益を上げているような様子を投稿し、興味を引こうとするアカウントも多数見られます。

こうしたアカウントには多くのフォロワーや「いいね」がついており、信じてしまっている人が多いのではないかと危惧されます。うかつに話に乗ってしまうと高額な情報料や入会金などを求められる恐れがあり、こうしたアカウントはその後突然消失することも多いため、注意が必要です。

詐欺まがいの被害に遭わないための心構えと教訓6か条

「マーケットピーク事件」からの教訓、なぜ若い人たちは投資詐欺に狙われるのか
(画像=Kiattisak/stock.adobe.com)

「マーケットピーク事件」が終わっても、ポンジスキームやそれに近い手口がなくなることはありません。そこで今後に向けて詐欺まがいの被害に遭わないための心構えと教訓を6つの項目で解説します。

1. そもそも儲け話を他人に教える人はいない

自分にとって大切な人や親しい人であればともかく、赤の他人にわざわざ儲け話を教えてくれる人はいません。「無料で教える」と謳っているのは、なおさらです。

手法によっては本当に儲かる方法であっても参加者が増えると儲けにくくなるものもあるため、わざわざ無料で他人に教えるメリットはさらに薄くなります。これは大原則なので、赤の他人から見聞きする儲け話は眉唾ものであると考えましょう。

2. 無登録業者は犯罪の可能性大

人から出資を募って投資をするなど金融商品取引行為をするには、金融商品取引業の登録が必要です。それがないのは詐欺の可能性が高く、お金を出すべきではありません。登録業者であるかどうかは金融庁のサイトで簡単に調べられるので、もしお金を出すことを検討しているのであれば、登録の有無を確認してからでも遅くありません。

免許・許可・登録等を受けている業者一覧(金融庁)

また、金融庁のサイト以外にも、対象の業者名や代表者名などでGoogle検索をしてみると、真実に関する情報が得られるかもしれません。

3. お金の話はゆっくり

公益社団法人ACジャパンは、地域限定の啓蒙キャンペーン「お金のはなしはゆ~っくり」を展開しています。特殊詐欺を含むさまざまな詐欺が多発するなか、お金の話を性急に決めるのはリスクが高すぎることを啓発しています。

信用できると思える話であってもすぐには決めず、一度持ち帰ってじっくり考え、必要に応じて誰かに相談するようにしましょう。

4. 「100%」「完全」「必ず」という表現を疑う

金融商品取引法では、確実に利益が出る、利益が保証されるといった文言を含む広告が禁止されています。「100%」「完全」「必ず」といった表現もこれに含まれるため、認められていません。なぜなら、投資にはリスクが付き物であり、そのリスクを説明しないのは法令違反になるからです。

そもそも100%絶対に儲かる投資は存在しません。こうした表現に出会ったら、その時点で詐欺を疑うようにしてください。

5. 18歳から20歳の人は特に注意

ご存じの方は多いと思いますが、民法の改正によって2022年4月1日から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。これにより、18歳からでも投資などの行為を自分の判断でできるようになりました。

詐欺まがいのビジネスを働く者はこれをチャンスととらえ、まだ十分なマネーリテラシーを確立していない人たちを勧誘するケースが目立ちます。18歳から20歳の人は特に注意が必要で、仮に自分自身の判断に自信があったとしても、そもそも投資できるだけの自己資金を持っていないのであれば投資はやめておいたほうが無難です。

「マーケットピーク」のように借金をさせてまで投資させようとするのは、仮に詐欺ではなくても誠意ある行動とは思えません。

6. 少しでも変だと思ったら相談を

「マーケットピーク」に限らず、こうした手口に引っ掛かってしまう人の多くは自分だけでお金を出す判断をしています。自分の判断力に自信があっても、自分だけで決めてしまうのは危険です。身近な人に相談するか、身近なところに相談できる人がいないのであれば、公的な相談窓口も活用しましょう。

以下の窓口で同様の相談を受け付けているので、少しでも変だと思ったら相談してみてください。

相談窓口電話番号
金融庁 金融サービス利用者相談室0570-016811
警察#9110
消費生活センター 消費者ホットライン188
法テラス0570-078374
日本証券業協会0120-344-999

(提供:Incomepress



【オススメ記事 Incomepress】
不動産投資にローンはどう活用する?支払いを楽にする借り方とは
お金の貯め方・殖やし方6ステップとは?ごまかさずに考えたいお金の話
日本人が苦手な借金。良い借金、悪い借金の違いとは?
あなたは大丈夫?なぜかお金が貯まらない人の習慣と対策
改めて認識しよう!都市としての東京圏のポテンシャル