この記事は2023年6月30日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「景気ウォッチャー調査から景況感の好材料・悪材料を分析」を一部編集し、転載したものです。


景気ウォッチャー調査から景況感の好材料・悪材料を分析
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(内閣府「景気ウォッチャー調査」)

景気ウォッチャー調査は、地域の景気に関連の深い動きを観察できる立場にある人たちから「景気の肌感覚」を聞く調査である。5月の調査では、現状判断DIが55.0と4カ月連続して景気判断の分岐点である「50超」かつ「上昇基調継続」となった。

この調査では、景況感の「現状」「先行き」判断が数値化され、DIとして発表されている。現状判断では、3カ月前に比べて景気が「良くなっている」「やや良くなっている」「変わらない」「やや悪くなっている」「悪くなっている」の5段階で景気ウォッチャーに評価してもらい、それぞれ「1」「0.75」「0.5」「0.25」「0」の点数を割り振り、回答数で加重平均して数値を算出している。

また、注目される事象に関連するコメントを抽出し、誰でも簡単にDIを計算することもできる。5月の調査では「新型コロナウイルス」関連DIの現状判断が65.7と4カ月連続で60台になった(図表)。新型コロナの「5類」関連DIの現状判断も67.3と良好だった。新型コロナの5類移行による人出増加が売上げ増加につながり、景況感が良くなったことを示唆している。

インバウンド需要も好調だ。「外国人orインバウンド」関連DIは、現状判断が71.6、先行き判断が68.6だった。「G7」関連DIの先行き判断も85.7で、G7広島サミットの観光に及ぼす影響が極めて大きいことがうかがえる。

5月は全国的に大きな地震が多発した。しかし、地震についてコメントした景気ウォッチャーは計4人と少なく、景況感への影響は小さかったようだ。

「価格or物価」関連DIは現状判断が47.0、先行き判断が44.9で、共に50を下回った。ただし、どちらも30台だった1月に比べれば悪影響は軽減されている。

物価高の悪影響の軽減要因は「賃上げ」だ。賃上げ関連DIは、現状判断が61.1、先行き判断が56.0と共に50超となった。「ボーナス」関連DIの先行き判断も63.5で、夏のボーナスへの期待の大きさが分かる。

先行きの明るい要因として、設備投資が挙げられる。「設備投資」関連DIの先行き判断は71.4。時代に取り残されないためにもDX投資やGX投資は欠かせないが、そうした設備投資が活発化するとみられる。

5月の景気ウォッチャー調査の調査期間は5月25日~31日だった。その期間中の日経平均株価が3万円台だったため、先行き判断で日経平均株価についてコメントしたウォッチャーが4月の1人から23人に増加し、DIは4月の75.0から66.3になった。今後、株価などの上昇が個人消費の増加の呼び水となる「資産効果」も期待できそうだ。

景気ウォッチャー調査から景況感の好材料・悪材料を分析
(画像=きんざいOnline)

景気探検家・エコノミスト/宅森 昭吉
週刊金融財政事情 2023年7月4日号