この記事は2023年6月30日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「海外投資家の買い増し機運で高まる日本株上昇の「第三局面」」を一部編集し、転載したものです。
2023年3月の最終週から、海外投資家が12週連続で日本株式を買い越している。買い越し累計額は7兆4,000億円で、この間に日経平均株価は23%上昇した。
海外投資家の買い越し累計額が7兆円を超える局面(月次ベース)は、03年以降で2回しかない。第一局面は、03年5月から07年8月まで。このときは06年6、7月に一時売り越しとなったが、その期間を除いて買い越し期間は計50カ月という長期に及んだ。小泉純一郎・第一次安倍晋三内閣が進めた構造改革への期待が背景にあったと思われる。この局面での買い越し累計額は36兆5,000億円に上り、日経平均株価は112%も上昇した。
第二局面は、12年9月から14年1月まで。買い越し期間は17カ月、買い越し累計額は15兆4,000億円で、日経平均株価は69%上昇した。第2次安倍内閣が進めたアベノミクスへの期待が背景にあったと思われる。
過去の2局面は海外要因として、米国株式市場が底堅く推移していたという共通点があった。一方、国内要因としては、①デフレ脱却、②政治への期待、③金融政策への信認、④構造改革の推進、⑤好調な業績見通し──などが共通している。
今年4月以降の現局面を振り返ると、円安と好業績に加え、相対的に高い名目GDP成長率、東京証券取引所による株価純資産倍率(PBR)1倍割れ企業への対策要請といった企業価値向上に対する期待が寄与しているとみられる。
さらに、賃金の上昇からのデフレ脱却期待や、足元では陰りが見えるがいまだに底堅い岸田文雄政権の支持率に見る政治の安定、植田和男日銀総裁に対する信認など、過去2局面との共通点も浮かび上がってくる。今後、東証改革による資本政策やガバナンス改革が23~25年の業績予想を押し上げるとの期待が強まれば、海外投資家による日本株買い越しが「第三局面」といった大きなうねりにつながる可能性も高まるだろう。
当社はデフレからの脱却、日本企業の企業価値向上への期待と好調な企業業績などを背景に、来年3月末の日経平均を、着地で3万7,700円、下限で3万2,200円、上限で4万900円と予想する。
三井住友DSアセットマネジメント チーフストラテジスト/石山 仁
週刊金融財政事情 2023年7月4日号