総括
FX「「円高の夏」の雰囲気」
ドル円=139-144、ユーロ円=152-157、ユーロドル=1.07-1.12
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨10位(10位)、株価3位(3位)、「円高の夏」の雰囲気」
「円高の夏」の雰囲気が出てきた。7月第一週は全面円高スタート。ボリバン中位を割り込んだ。夏は従来円高に振れやすい季節。需給では円安の最大要因の貿易赤字が縮小、昨年夏以降は輸入の伸びが前年比で40-50%であったが、今年4月以降はマイナスの伸びとなっている。輸出入の差(赤字)が2兆円、3兆円から、貿易黒字も予想される状況となっている。
財務省も、米財務当局を巻き込んで円安をけん制し始めた。日銀副総裁も円安をけん制した。テクニカル、需給、当局牽制で円高が進んだ。日経平均が弱含んでいることもリスク選好の円売りを縮小させた。
季節的需給では、7月、8月のどちらかで円高になりやすい、特に7月末は円高傾向が強い。
(表は貿易統計より、輸入の激減が伺われる)
*米ドル「通貨6位(6位)、株価(NYダウ)15位(15位)、続「中くらい」の強さのドル」
引き続き、「ドルの強さも中くらいなり」の状態が続いている。ドルは12通貨中6位で中位に位置している。昨年は、資源高、有事でのドル買いが進んで2位であったが、今年はそれほどの危機感はない。昨年弱かった持たざる国(除く円)がドルより強い。経済指標はマチマチだ。
先週の6月雇用統計でも、非農業部門雇用者数が予想を下回ったが、失業率は低下、平均賃金の伸びは予想に反して加速した。FRBの追加利上げ観測が高まっているが、インフレ(今週の注目指標)が着実に低下していることも事実だ。株価も過熱感はなくナスダックは強いがダウは弱い。年末リセッション説は後退しているが、強いわけでもない。米中経済関係も対話は続いているが、具体的な半導体問題でも摩擦解消策は出ていない。世界情勢が昨年より落ち着いてくると、ドル安に繋がる貿易赤字もクローズアップされる。原油価格が低下しているが、サウジアラビア・ロシアは減産継続で価格を維持しようとしている。ウクライナ戦況悪化や国際緊張感が高まるとドルは強くなるが、現状は「中くらい」の位置を保っていける。
*ユーロ「通貨4位(5位)、株価7位(6位)DAX)、インフレ下げ止まりで、利上げ継続。ただ経済は強くない」
円より11.05%強く、ドルより2.5%強い(年初来)。インフレは下げ止まり、経済指標は弱い。独は貿易黒字を維持しているが、ユーロ圏は赤字となる月もある。ラガルドECB総裁は、以下のように述べた。
・インフレ率は低下し始めているものの、中期目標を達成するためにまだやるべきことが残っている。
・インフレ率は2022年秋口の2桁から現在は半分まで低下し、食料価格の上昇ペースも鈍化している
・しかしECBスタッフの予測によれば、インフレ率は依然として中期目標の2%を上回っており、2024年から2025年までこの状態が続く
・企業の利益率と賃金が同時に上昇していると判断すれば、ECBは対応する
ナーゲル独連銀総裁は「インフレへの対応が慎重過ぎたり、対応緩和が早過ぎたり、将来の物価上昇予想が不安定化したりしてはならないと指摘した。
シティグループはユーロ圏の2023年実質GDP伸び率予想を0.8%とし、従来から0.3%引き下げた。高金利環境で成長が圧迫されるとした。
独の1Q・GDPが下方改定されたことを受け、独のGDP伸び率見通しを1.0%から0.2%に引き下げた。
一方、イタリアのGDP成長率見通しを0.4から1.3%に引き上げた。観光客流入の正常化、財政刺激策の効果などを挙げた。一方、独のインフ6%に対し。スペインは目標の2%を下回る1.6%。ギリシャは2.8%と
南欧諸国は比較的低い。ギリシャやイタリア中銀は利上げに対して批判的でもある。ユーロ圏の南北問題はある。
*ポンド「通貨2位(2位)、株価19位(19位)、高金利でポンドは12通貨中2位と強いが株は弱い。リセッション懸念再び。今週は月次GDP」
ポンドはメキシコペソには及ばないが、1か月以上2位の強さを維持している。一方、FT株価指数はは高金利の影響もあり、年初来マイナス圏(2.61%安)となってしまった。収まらないインフレに対し、市場は、英中銀のターミナルレートが四半世紀ぶりの水準に上昇すると見込んでいる。スワップ金利の動向によれば、短期金融市場は8月に0.5%の利上げが再び行われ、政策金利が来年2月までに6.5%でピークに達することを織り込んだ。ピーク金利が6.75%に達する確率もほぼ50%と見込まれている。これらの水準まで英中銀の金利が上昇すれば、1998年以来となる。景気低迷を招かずインフレを抑制できるのか、トレーダーは英中銀の手腕を疑問視している。
今週は5月GDPの発表があり、前月比で0.4%減が予想されている。2023年初めのリセッションは回避されたが、金利上昇による打撃の約60%がまだ実感されておらず、今年後半はリセッションの可能性があると見込まれている。ハント財務大臣が、2023年秋の総選挙前の大型減税の可能性を否定したことも景気の下支え要因を失うこととなる。
*豪ドル「通貨7位(7位)、株価18位(17位)、政策金利は米豪共に据え置き。インフレは低下中、貿易黒字拡大」
円より強く、ドルより弱い。欧州通貨ほど強くはない展開が続く。RBAは先週、政策金利を4.1%%に据え置いた。これまでの利上げの影響を見極めたいとした上で、インフレ抑制に向け追加引き締めが必要になる可能性もあると指摘した。事前の予想は0.25%利上げと据え置きで意見が分かれていたので、発表直後は豪ドルが一時下落した。RBAの声明は以下の通り。
豪中銀声明の他の主な内容は次の通り。
・インフレはなお高過ぎる、当分の間持続すると見込まれる
・高いインフレ期待継続のリスクを警戒
・タイトな労働市場で賃金の伸びが加速している
・利上げ停止で景気見通し、リスク評価する時間が多く得られる
利上げ停止したFRBの声明にも似たところがあり、米豪間の金利差は維持された。8月の利上げ観測もあるが、TD証券の6月インフレ指数は前月比で0.1%の上昇で5月の0.9%上昇を大きく下回っている。
また5月貿易収支は117.9億豪ドルの黒字で4月の104.5億ドルの黒字を上回った。中国向けの輸出が前月比9%増加したことによる。
今週は12日にロウRBA総裁の講演、その他、7月消費者信頼感指数、6月企業信頼感指数、7月インフレ期待に注目したい。また9月に任期が満了するロウRBA総裁の後任(あるいは再任)人事にも注意したい。
*NZドル「通貨8位(8位)、株価11位(14位)、政策金利は据え置きか。対中貿易に活を求める」
12通貨中、豪ドル7位、NZドル8位と年初来ではパラレルに動いている。今週は政策金利決定がある。金利を5.5%に据え置く可能性が高い。経済をすでに景気後退に追い込んでいる20カ月にわたる利上げサイクルに終止符を打つことになる。中銀は、現在はおそらく「様子見」モードに入っている。
ヒプキンス首相はリセッション入りした経済の回復の糸口を中国に見出している。首相は先週、指導者として民間29社の代表とともに中国を訪問した。焦点の一つは、NZの最大の貿易相手国の中国との紛争を回避することだ。NZは長年、豪、米国、英国、カナダを含む安全保障グループ「ファイブ・アイズ」の中で中国に対して最も融和的な国とみられている。アーダーン前首相は、新疆ウイグル自治区や香港の人権問題や台湾海峡の緊張について懸念を表明していたが、ヒプキンス首相と習近平国家主席との会談後の声明では、こうした問題には一切触れなかった。中国・NZ自由貿易協定と地域包括的経済連携協定が発効した後、NZの乳製品大手のフォンテラ社は、健康志向の消費者にサービスを提供するため、中国事業をプレミアムカテゴリーに拡大すると発表した。乳製品輸出のさらなる拡大を目指している。
テクニカル分析
*ドル円「団子天井から下落、先週末は大陰線。5日線下向く。20日線上向き。ボリバン中位下抜く」
日足、団子天井から下落、先週末は大陰線。5日線下向く。20日線上向き。ボリバン中位下抜く。6月14日-7月7日、5月4日-11日の上昇ラインがサポート。、7月6日-7日の下降ラインが上値抵抗
週足、4週ぶり陰線。ボリバン2σ上限から反落。6月19日週-26日週の上昇ラインを下抜く。6月12日週-7月3日週の上昇ラインがサポート。6月26日週-7月3日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、3か月連続陽線の後、7月は陰線スタート。5か月、20か月線は上向き。5月-6月の上昇ラインを下抜くか。4月-5月の上昇ラインがサポート。22年10月-23年6月の下降ラインが上値抵抗。
年足、2023年はここまで陽線。2022年の長い上ヒゲを駆け上り一服。21年-22年、12年-21年の上昇ラインがサポート。
*ユーロドル「先週末、6月22日-7月6日週の下降ラインを上抜き大陽線。5日線。20日線上向き。5週線も上向く」
日足、先週末、6月22日-7月6日週の下降ラインを上抜き大陽線。5日線。20日線上向き。7月6日-7日の上昇ラインがサポート。6月22日-7月6日の下降ラインが上値抵抗。
週足、ボリバン上位で推移。5週線上向く。20週線上向き。7月3日週は下ヒゲ長い。6月12日週-7月3日週の上昇ラインがサポート。6月19日週-7月3日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、5月の3か月ぶりの陰線から6月は回復。7月も上昇スタート。ボリバン中位越え。4月-5月の下降ラインが上値抵抗。3月-6月の上昇ラインがサポート。5か月線上向く、20か月線下向き。
年足、年足陽転。20年‐21年の上昇ラインは下抜く。2022年は2年連続陰線もボリバン2σ下限到達し反発。22年の下ヒゲが長く反発力あり。02年-22年の上昇ラインがサポート。21年‐22年の下降ラインが上値抵抗。
*ユーロ円「15年振りの高値更新後、急落」
日足、団子天井から下落。5日線下向く。20日線上向き。一時ボリバン中位を割り込む。6月12日-7月6日、5月11日-6月7日の上昇ラインがサポート。
週足、4週ぶり陰線。6月19日週-7月3日週、6月5日週-12日週の上昇ラインがサポート。6月26日週-7月3日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、6月は大陽線でボリバン2σ上限上抜く。7月は陰線スタート。5月-6月の上昇ラインがサポート。2008年7月-23年6月の下降ラインが上値抵抗。5か月、20か月線は上向き
年足、3年連続陽線。今年も陽線。20年-22年の上昇ラインがサポート。08年-22年の下降ラインを上抜く。