苦境に立たされる中国の不動産業界。不況により日本の不動産に買いが向かうか
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中国の不動産業界が苦境に立たされています。マンション販売が大幅に落ち込み、銀行の融資焦げ付きも増えているといわれます。中国政府はどのような対策を打つのでしょうか。中国の不動産不況によって、比較的安全な日本の不動産に買いが向かうのかを考察します。

中国の不動産不況の現状は?

苦境に立たされる中国の不動産業界。不況により日本の不動産に買いが向かうか
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はじめに中国不動産不況の現状を確認しておきましょう。中国の不動産はこれまで高騰の一途を辿ってきました。ブルームバーグによれば、北京と上海の住宅価格は今世紀に入ってそれぞれ10倍と12倍になったといわれます。一般的な所得水準の人では住宅が購入できないくらいの価格になり、不動産バブルの様相を呈していました。

不動産バブルになった要因の1つに、中国経済は不動産が占める比重が極めて高いという事情があります。日本や米国では投資の中心は株式などの金融商品ですが、中国の国民は不動産に資金を投じる人が多いのです。結果的に不動産バブルを招くことになり、それが現在はじけている状態です。

不動産不況のきっかけになったのは、習近平政権による「共同富裕」という政策です。内容は「共に豊かになる」というスローガンを掲げて格差是正を目指すものです。格差是正が目的の政策ですから、当然お金持ちが不動産で大きく儲けることは難しくなります。

具体策として中国政府は不動産バブルによって国民が住宅を買えなくなった状況を深刻に受け止め、2020年半ばから不動産会社への融資や、住宅ローン融資を規制したのです。融資が制限されたことにより、後述する中国恒大集団をはじめとする大手不動産事業者は巨額の債務を抱えたまま資金不足に陥り、バブル崩壊につながったのでした。

不動産バブルがはじければ融資している金融機関の経営にも影響が出ることから、中国の景気にも大きなマイナス要因となります。2023年1-3月期の中国GDP(国内総生産)は前年比4.5%増で改善傾向ではあるものの、コンスタントに6%以上成長していた2019年当時にはまだ及ばない状況が続いています。

中国景気が減速すれば日本の経済にも大きな影響を与える可能性があります。2023年5月の時点で中国は日本にとって最大の貿易相手国です。中国の景気が悪化すれば輸出の減少も考えられます。中国の不動産不況は日本にとって対岸の火事ではないのです。

苦境に立つ中国恒大集団ってどんな会社?

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中国の不動産不況が話題になりはじめた頃、中国恒大集団という名前が経済ニュースでよく聞かれました。中国恒大集団は1996年に広東省広州市で創業した中国を代表する不動産開発業者です。

同社は中国政府による不動産規制のあおりを受けて業績が悪化。2021年12月にはドル建て社債の支払いがデフォルト(債務不履行)と認定され、世界経済へ大きな影響を与えた経緯があります。

NHKの報道によると、デフォルト後は主な債権者との間で合わせて191億ドル(当時の為替レートで約2兆5,000億円)のドル建て債券の返済条件の見直しが合意に達し、再建への一歩を踏み出しました。

しかし、今後3年間は建設中の物件の完成と引き渡し業務のために、新たに最大3,000億人民元(日本円で約5兆7,000億円)の追加資金が必要とされ、資金繰りが厳しいことから、当面は先行き不透明な状況が続く見通しです。

中国不動産不況の象徴ともいえる中国恒大集団の再建の行方は今後も注視する必要があります。逆にいえば、中国恒大集団の再建が上手く行くようであれば、中国不動産不況も反転する可能性があるといえるでしょう。

中国の住宅ローン事情

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中国の住宅ローンを巡る状況はどのようになっているのでしょうか。中国では物件の完成前に住宅ローンを契約する例が多いといわれます。

そのため、中国恒大集団が経営破綻して住宅の工事も中断した結果、ローンだけ契約して実際には住宅に住めない人が続出しました。そこで一部の契約者が物件引き渡しの遅れを理由に、住宅ローンの返済を拒否する事態に発展しています。

中国では金融機関の貸出残高の2割を住宅ローンが占めており、返済拒否の動きが広がれば住宅ローンが不良債権化してしまうリスクをはらんでいます。つまり、中国の不動産不況は単に不動産業界に止まらず、金融システムの不安定化につながる問題でもあるのです。

不動産不況に対して中国政府が打つ対策とは?

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不動産不況を改善しようと中国政府もさまざまな対策を打ち出しています。その1つが銀行の資本増強です。地方政府がインフラ債券を発行して調達した資金を使って、中小銀行に公的資金を注入しました。日本経済新聞の報道によると、2022年に新規注入した金額は3,200億元といわれています。

もう1つは不動産基金の創設です。中国政府は開発企業の資金繰りを支援するため、最大3,000億元の不動産基金を作る検討に入っています。

さらにロイターの調査によると、市場関係者の見方では政府が2023年内に住宅ローン金利の引き下げや頭金の規制緩和など、住宅需要を喚起する政策を打ち出すとしています。

政府の対策の効果もあってか、2023年の不動産販売は市場関係者8人の予想中央値が8%減で、前年の25%減に比べて大幅に改善しています。

中国不動産不況で日本の不動産へ買いが向かうか

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今後は中国不動産不況によって世界の投資家の買いが、相場環境の良い日本の不動産に向かうかが注目されます。日本の不動産は元々海外投資家に人気が高く、事業用不動産サービスを提供するCBRE株式会社によると2021年の国内不動産投資額約4兆5,000億円のうち、海外投資家が30%を占めています。

2023年に入ってから、一貫して円安が進んでいるのも海外投資家の買いを呼ぶには追い風になっています。ドル円相場は、年初1月2日終値130円73銭から、7月4日現在で144円45銭まで円安が進みました。

日本の不動産が買いやすくなっていますが、とくに不動産不況に喘ぐ中国の投資家は日本の不動産への購入意欲が高まっています。その理由は中国と日本の不動産価格の格差が大きいことです。

一般財団法人日本不動産研究所が行った「第20回国際不動産価格賃料指数」(2023年4月現在)によると、マンション・高級住宅(ハイエンドクラス)の価格指数が東京を100とすると、香港242.7、上海155.8、北京124.2と中国各都市が軒並み大幅に上回り、日本の不動産価格の割安感が際立っています。

東京のマンションが高騰を続けているといっても、中国に比べればまだ割安なのです。先に述べた共同富裕政策のために今後中国の不動産価格は頭打ちとなる可能性が高く、高いお金を出して買ってもキャピタルゲインを得るのは難しくなるでしょう。

日本の不動産なら共同富裕の影響を受けないため、資産を日本の不動産にシフトする動きが広がる可能性は高いと考えられます。ただし、中国の不動産価格が下がることによって日本の不動産との価格差が縮小することから、資産価値の高い物件でないと買われない可能性があることは留意する必要があります。

物件候補としては、海外投資家だけでなく国内投資家の需要も高い、ワンルーム(1R、1K、1DK)の資産運用型マンション(ハイグレードマンション)を狙うのが無難です。万一海外投資家の買いが入らなかった場合でも、国内の賃貸需要だけで投資する価値があるからです。

中国の不動産不況と円安で日本の不動産が注目されるいまは、東京23区のワンルームマンション投資を検討する良いタイミングといえそうです。

※本記事は2023年7月4日現在の情報を基に構成しています。中国不動産市況の行方は流動的です。参考までにお考えください。

(提供:Incomepress



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