牛丼チェーン店を運営する吉野家ホールディングス<9861>が調剤薬局や大学と相次いで連携を深めている。同社は女子栄養大学(埼玉県坂戸市)の監修のもと、成人が1日に必要な野菜の4割が摂れる牛丼「牛丼ON野菜」を開発したほか、日本調剤<3341>の11店舗で介護食に適した「きざみ牛丼の具」「やわらか牛丼の具」の販売を始めた。

コロナ禍などの影響で外食産業を取り巻く経営環境が厳しさを増す中、吉野家は2020年から2022年のまでの3年間に、レストランチェーンの「アークミール」や、持ち帰りずしチェーンの「京樽」、ファストフードの「グリーンズプラネットオペレーションズ」の3社を売却、事業規模を縮小してきた。

コロナ禍後の2024年2月期は経済活動の本格的な回復を踏まえ、「客数獲得」と「成長投資の加速」を最優先事項に掲げ、連携強化を推進することなどで再び成長性や収益性の向上を目指すという。連携とはどのようなものなのか。

産学連携包括協力協定を締結

吉野家と女子栄養大学は2023年6月12日に産学連携包括協力協定を結び、その第一弾として牛丼ON野菜の販売を、家族連れや女性が入りやすい「クッキング&コンフォート」スタイルの店舗で始めた。

同商品は、牛丼にガーリックと胡麻油をからめた温野菜5種類(赤ピーマン、ブロッコリー、かぼちゃ、れんこん、ヤングコーン)を添えたもので、成人が1日に摂るのに理想的なたんぱく質量20グラムを含むとともに、成人が1日に必要とする野菜量350グラムのうち、145グラムを摂ることができる。

同商品を販売しているクッキング&コンフォートはテーブル席が多く、ドリンクバーを設置しているためカフェとしての利用が可能。2023年4月時点で250店以上があり、吉野家の店舗(1202店)の5分の1ほどを占めている。

2024年2月期は、こうした新サービスモデル店舗への改装転換のスピードを上げ、期中に100店舗以上の改装を行う計画だ。

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(画像=吉野家の「牛丼ON野菜」(ニュースリリースより)、「M&A Online」より引用)

【吉野家の東京都内のクッキング&コンフォートの店舗】(2023年6月14日時点)

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(画像=「M&A Online」より引用)

固形物を舌や歯ぐきでつぶす

日本調剤が同社店舗で販売する、きざみ牛丼の具と、やわらか牛丼の具は、咀嚼(そしゃく=食物を歯で挟んだり、砕いたりすること)、嚥下(えんげ=口の中の食物を飲み込むこと)機能が低下した高齢者ら向けの商品で、きざみ牛丼の具は舌で、やわらか牛丼の具は歯ぐきで、固形物をつぶすことができる。

日本調剤では、これら商品によって「食事の楽しみを感じることで食生活をより良いものにするための行動変容につながれば」としており、店舗だけでなくオンラインストアでも販売する。

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(画像=吉野家の「やわらか牛丼の具」(ニュースリリースより)、「M&A Online」より引用)