成約実績の8割は仲介業者
また、実績報告で上がったM&Aの契約数は譲渡側3,403件、譲受側3,275件の計6,678件だが、支援機関にとってメリットがあるはずの事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用事業)の申請数は毎回1,000件に到底及ばない。公募回数を重ねるごとに減少傾向も見られるが、支援機関に対する申請の働き掛け強化など当局が抜本的な対策に乗り出す動きは鈍い。さらに、成約実績はM&A専門の仲介業者に偏っており、4,109件と全体の約8割を占めている。
支援機関の種別は仲介とFAがほぼ6対4の比率だが、仲介に次ぐ1,210件の成約を達成したのは登録数が100件に満たない金融機関だ。中小M&A市場で支援機関の存在感を高めるためにはFAや士業等専門家、コンサルタント会社などの活躍が不可欠となる。
最低手数料の最頻値は500万円
一方、支援機関にはさまざまな業種・業態が参入しており、M&Aプロセスの手数料体系・算定方法も統一されていない。中小企業庁の調査によると、2021年度の成約実績を報告した事業者が設定する最低手数料の最頻値は500万円だった。次いで多かったのは2倍の1,000万円。また、成功報酬の算出でレーマン方式を採用している割合は、全体で84.1%だった。
国は支援機関の質の確保・向上による適切な取引環境の整備を目指し、中小M&Aガイドラインの改訂作業を進めている。国内初で唯一のM&A仲介業界自主規制団体であるM&A仲介協会(代表理事・荒井邦彦ストライク社長)も公正・円滑な取引の促進を掲げ、2023年度はM&Aアドバイザリー業務に係る責任賠償保険制度の創設などの施策を展開する。
文:M&A Online