HILO(札幌市)は北海道大学発の医療診断薬ベンチャー。同大大学院医学研究院の大場雄介教授が開発した蛍光バイオイメージング技術を用いた薬効評価法を「光診断薬」として社会実装するため、2021年8月に設立した。

灯台のように患者の未来を照らす

社名は「Horizon Illumination Lab Optics」の略。光診断薬で、灯台のように患者の未来を照らす道標になりたいという理念を込めたという。

光診断薬とは色で治療効果が分かる検査薬。同社が開発している光診断薬「Pickles」は、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)という物理化学現象を利用し、がんの原因となっているBCR-ABLタンパク質の活性を測定する仕組み。患者から採取したがん細胞にPicklesを加えた上で、分子標的薬を投薬する。

慢性骨髄性白血病や急性リンパ芽球性白血病などのがん細胞で発現するBCR-ABL(チロシンキナーゼ融合タンパク質)の活性がなければPicklesは青色に、活性があれば黄色に、それぞれ変色する。つまり、青色になれば投薬した分子標的薬に効果があることが分かる。


がん患者のQOL向上と治療の効率化を目指す

分子標的薬はがん細胞だけを攻撃するため、副反応が少なく、治療効果が高い治療法として注目されている。一方で、患者個人の体質による「合う」「合わない」の差が大きく、薬価も非常に高い。患者の体質に合わなければ、副反応は激しく薬効が期待できない上に、経済的負担も重くなる。現状では実際に投薬してみないと、効果が分からない。

投薬前にPicklesで検査すれば、患者の体質に合うかどうかを事前に評価できるため、患者が副反応に苦しむリスクを抑えられる上に、無駄な投薬を防げるので医療費の抑制にもつながる。がん患者のQOL(生活の質)向上やがん治療の効率化に役立つ技術だ。同社は2026年の実用化を目指している。

創薬プラットフォームにも活用が可能で、画期的ながん治療薬の開発にも役立つ汎用性の高い技術だ。2023年2月に北洋SDGs推進2号投資事業有限責任組合の「北洋SDGs推進2号ファンド」を通じて、北洋銀行と北海道二十一世紀総合研究所から1000万円の資金調達に成功した。

2022年10月に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の人材発掘・起業家育成(NEP)事業成果発表会で天野麻穂社長が登壇して優秀賞を、翌11月には中小企業基盤整備機構の「FASTAR 5th DEMODAY」で「三菱UFJキャピタル賞」を相次いで受賞するなど、注目度も高い。

文:M&A Online