総括
FX「小幅な利下げに失望。対円では底打ち感あるも、対ドルでは弱い」トルコリラ見通し
(通貨最下位、株価5位)
予想レンジ トルコリラ/円4.7-5.7
(ポイント)
*小幅な利上げで、中銀の独立性に疑問が生じる
*インフレ報告書の説明が7月27に行われる
*依然リラ安放置。相場は市場に任せる。介入せず
*長期金利、株価の急激な動きも放置
*6月の消費者物価は前年比38.21%上昇
*成長率、今年は平均を大きく下回る2.7%の見通し
*今年のインフレ見通しは46%
*資金を中東に求める外交
*エルドアン大統領はEUに加盟したい
*付加価値税を2%引き上げ
*新財務大臣は合理的な政策に変わると主張、経常収支改善も目標
*ゴールドマン・サックスは、リラが1年後に1ドル=28リラまで下落と予想
*今年は建国100周年
(リラ低迷)
リラは依然、低迷している。対円では4日連続で上昇も、対ドルでは1ドル27リラという史上最安値の水準だ。政策金利は予想を下回る利上げ幅となった。
株価(イスタンブール100)は年初来21.53%高。10年国債利回りは政策金利引き上げで18.77%まで上昇。
(政策金利は小幅に留まる)
トルコ中銀は、政策金利を2.5%引き上げ17.5%とした。中銀はエルカン新総裁の下でエルドアン大統領が進めてきた低金利政策からの転換を継続。一段の引き締めを確約すると同時に、追加措置で支援する姿勢を示した。ただ今回の利上げ幅は予想を下回った。
6月の消費者物価は前年比38.21%上昇。伸びは前月の39.59%から鈍化した。ただ、リラの継続的な下落や増税などを踏まえ、年末には46%まで上昇するとの見方がある。中銀は決定会合後、増税などによりインフレに一段の上昇圧力かかるとの予想を示し、金融引き締めを継続すると表明した。
また7月27日には中銀のインフレ報告書の説明会が開催される。
(中銀の独立性に疑問)
今回の利上げ幅が前回に続き予想を下回ったことで、新総裁の下で中銀が独立性を確保する能力に疑問がでてきたと指摘されている。正常化の過程が緩やかすぎれば投資家信頼感が脅かされ、リラ相場のほか、トルコ資産に対する圧力が一段と高まる。政策金利は年末までに25%に引き上げられると予想。ただインフレ率をなお下回り、実質金利はマイナス圏から脱却できないとし、エルドアン大統領が影響力を持っていることで、中銀がどこまで政策を引き締められるかが制限されていると警告している。
(成長率、今年は平均を大きく下回る2.7%の見通し)
今年の国内総生産(GDP)成長率はエコノミスト36人の予想中央値が2.7%となった。甚大な被害をもたらした2月の地震に加え、金融引き締めや世界的な景気減速の影響により、成長率は過去数年の平均である5%を大きく下回る見通しだ。
今年末時点の消費者物価の前年比上昇率の予想中央値は46.4%となった。
今年のGDPに対する経常赤字の比率は、予想中央値が4.4%だった。来年は3.0%、25年は2.3%の見通し。現在進められている政策転換は望ましい効果を発揮しているとの評価はある。
(資金を中東に求める)
エルドアン大統領は、アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビを訪問し、ムハンマド大統領と会談した。両国はエネルギーや科学技術分野などで総額507億ドル(およそ7兆円)規模の覚書や協定に署名した。