この記事は2023年7月21日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「高騰が続いた鶏卵価格に下落の兆し」を一部編集し、転載したものです。


高騰が続いた鶏卵価格に下落の兆し
(画像=Nitr/stock.adobe.com)

(総務省「消費者物価指数」、JA全農たまご「たまご相場東京M基準」)

鶏卵の全国消費者物価指数(2020年=100)は、22年4月(102.9)から23年5月(140.8)まで、13カ月連続で上昇した。前年同月比では、22年7月(0.0%)から23年5月(35.6%)まで、10カ月連続で上昇している。

東京都区部の消費者物価指数(6月中旬速報値)を見ると、鶏卵の指数は22年2月の105.5から振れ幅を伴いつつ上昇し、23年6月は139.2になった(図表)。前年同月比の連続上昇は、23年1月(5.1%)から23年6月(33.2%)まで5カ月連続となっている。

鶏卵価格が高騰した背景には、鶏の餌代の高騰と、高病原性鳥インフルエンザが猛威を振るったことが挙げられる。鶏の餌となるトウモロコシは大部分を輸入に頼っているが、ロシア軍によるウクライナ侵攻の影響で作付面積が減少。世界的に需給が逼迫したことに加え、輸送費高騰も影響した。さらに、22年10⽉28⽇に高病原性鳥インフルエンザの国内1例⽬が確認されて以来、23年5⽉末まで全国の飼養羽数の1割超に上る過去最多の約1,771万羽が殺処分対象となった。

しかし、ここにきて鶏卵価格の高騰に、沈静化の動きが見えてきた。JA全農たまごによれば、東京の卵Mサイズの1キロ当たりの卸売価格は、23年4月から350円で高止まりしているが、6月の平均卸売価格は349円となり、5カ月ぶりに下落に転じた。直近の7月(1~18日の平均)には、330円となり、さらに下落に拍車がかかっている。

下落の要因については、鶏卵価格はクリスマスケーキなどの冬場の需要が落ち着いた夏場に値下がりする傾向があることが大きい。さらに、そもそも高病原性鳥インフルエンザが、国内では4月7日に北海道千歳市の養鶏場で発生して以降、ウイルスが検出されていないこととも関係する。4月14日までに高病原性鳥インフルエンザのすべての防疫措置が完了したことから、農林水産省は、高病原性鳥インフルエンザの清浄化宣言を国際獣疫事務局(OIE)に提出し、6月20日に認められたと発表した。

こうしたことを受けて、昨年秋から今年にかけてインフルエンザが発生した農場の35%に当たる28農場が、5月末までに経営を再開している。そのため、7月の東京都区部の消費者物価指数では、鶏卵の指数に低下の動きが出ることが予想される。

高騰が続いた鶏卵価格に下落の兆し
(画像=きんざいOnline)

景気探検家・エコノミスト/宅森 昭吉
週刊金融財政事情 2023年7月25日号