この記事は2023年7月21日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「NEVシフトが進む中国、苦戦続きの日系自動車企業」を一部編集し、転載したものです。
中国の乗用車販売台数(当社による季節調整値)は今年1月に173万台にとどまり、上海が都市封鎖された2022年4月以来の低水準を記録。その後もしばらくは弱い動きとなっていた。その背景には、22年に実施されていたエンジン車取得税の半減措置や、NEV(注1)の販売代金の補填としてNEV企業に支払われていた補助金制度が終了したことなどがあるとみられる。
しかし、春先以降は販売が次第に回復し、6月の乗用車販売台数は232万台と増加基調にある。ゼロコロナ政策の解除を背景とする個人の消費活動の正常化に加えて、各地方政府による新車購入補助金の支給や、自動車企業による相次ぐ値下げなどが乗用車販売を押し上げたようだ。足元では、習体制が景気対策の一環として自動車ローン金利を引き下げ、NEV向けを中心に農村部における乗用車の購入支援を強化したことなどから、23年後半も中国の乗用車販売は回復が続くと考えられる。
乗用車販売市場において特に存在感を発揮しているのが、中国系自動車企業である。23年1~5月期の中国市場における中国系自動車企業の乗用車販売台数は、前年比12.2%増と堅調に推移。乗用車市場全体に占める中国系自動車企業の割合も49.5%に上昇している(図表)。中国政府が乗用車市場におけるNEVシフトを強化する中で、中国系自動車企業が技術力を高めながら、NEV事業に積極的に取り組んできたことが奏功したとみられる。実際に、同期のNEV販売台数の内訳を見ると、中国系自動車企業が82.8%と、圧倒的なシェアを占めている。
中国では、NEVクレジット制度(注2)の厳格化などを背景に、エンジン車の販売減少とNEVの販売増加が見込まれており、今後もNEVへのシフトが一段と進むだろう。今年4月には中国政府系シンクタンクが、新車販売のNEV比率が25年に60%、30年に94%に達するという強気の見通しを発表した。
一方、NEVシフトへの対応で出遅れた日系自動車企業は、苦戦を強いられている。同じ1~5月期の日系自動車企業による乗用車販売台数は、前年比14.1%減と大幅に減少。中国の乗用車市場全体に占めるシェアも17.5%に低下した。そのため、日系自動車企業は、NEV量産化を急ぐなど、NEVの生産体制を迅速に整える必要に迫られている。
浜銀総合研究所 調査部 主任研究員/白 鳳翔
週刊金融財政事情 2023年2023年7月25日号