2023年のM&A戦線は早くも折り返しに入った。上期(1~6月)の上場企業によるM&A件数(適時開示ベース)は前年を43件上回る501件と年間1000件のハイペースで推移している。そんな中、前半戦に最も多くのM&Aに取り組んだ企業はどこか?

SHIFT、半期で過去最多に並ぶ6件

上場企業に義務付けられている適時開示情報のうち、経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Onlineが調べた。

上期にM&Aを実施した企業は421社(501件)。約3900社ある上場企業の10.8%にあたる。このうち1社で複数のM&Aを手がけた企業は64社を数えた。

件数トップはSHIFTの6件で、次いでソラストの5件。これに、三井物産、KPPグループホールディングス(旧国際紙パルプ商事)、プロルート丸光など9社の各3件が続いた。1社で2件は53社に上った。

SHIFTが今年手がけた6件はいずれも買収案件で、半数の3件は取得金額が10億円を超えた。同社はソフトウエアの品質保証・テストを中核事業とするが、M&AをテコにWeb企画制作、ネット広告、ITコンサルティング、ソフトウエア開発、ネットワーク構築・運用、情報セキュリティーなどに周辺領域に事業を広げてきたことで知られる。

SHIFTは2014年11月の上場以来、少なくとも27件のM&Aを手がけている。アクセルを踏み込んだのはここ5年だ。2019年5件、20年6件、21年3件、22年3件で推移し、今年は半期ですでに過去最多の6件に並んだ。

2位のソラストは医療事務を主力に介護、保育事業を展開する。今年上期に手がけた5件はいずれも介護分野での買収案件。このうち2件は相手企業(売り手)が上場企業で、MS&ADインシュアランスグループホールディングス傘下の三井住友海上ケアネット(現ソラストケア、東京都世田谷区)、JR西日本傘下のポシブル医科学(大阪府東大阪市)をそれぞれ子会社化した。

三井物産、3件とも金額上位の大型案件

上期中、件数、金額ともに気を吐いたのは三井物産。同社は6月下旬、甘味料など機能性食品素材メーカー大手であるオランダのニュートリノバを約660億円で買収すると発表。これを含め、3件の買収を決めたが、上期のM&A金額ランキング(適時開示ベース)でみると、全体の10位、11位、12位に連ねる。

今回のニュートリノバ買収は11位。一つ上の10位は2月に発表した日米合弁給食大手のエームサービスを700億円で子会社化する案件。12位は600億円規模のTOB(株式公開買買い付け)案件だった。

2022年はヨシムラ・フード・ホールディングス、ケア21の2社が年間6件でトップだった。今年はどうかというと、上期を終えた段階で、ヨシムラは0件、ケア21は1件とここまで動きは鈍い。

◎2023年M&A件数:上場企業別ランキング(適時開示ベース)

6件 SHIFT
5件 ソラスト
3件 KPPグループホールディングス、揚工舎、デジタルプラス、電通グループ、日本創発グループ、プロルート丸光、三井物産、ミンカブ・ジ・インフォノイド、ワキタ
2件ENEOSホールディングス、アステラス製薬、塩野義製薬など53社

文:M&A Online