総括
FX「どこから水が漏れたのか。年初来高値更新後に急落。中銀が年内利下げを示唆」メキシコペソ見通し
予想レンジ 8.0-8.5
(ポイント)
*8.55の年初来高値を更新した後に大きく下落
*中銀理事が年内の利下げを示唆
*郷里送金ではペソ高懸念
*ブラジルは大幅利下げ
*GDPなど指標は好調
*来週は政策金利決定、消費者物価も
*ニアショアリングによる景気拡大は続く
*5月の建設は過去最高
*雇用改善、貿易黒字化、インフレ低下
*IMFは成長率予想を引き上げ
*日本からのメキシコへの6月の輸出は前年比40.3%増
*最低賃金は大幅増
*対米貿易の金額が中国を抜いて世界一へ
*大統領選は2024年6月
(中銀=政策金利を年末までに「小幅」引き下げる可能性で下げる)
7月31日に8.55の年初来高値を更新した後に大きく下落し8.180をつけた。ボリバン2σ上限というテクニカルでのピーク感もあって下落。さらに8月3日にヒース中銀理事が、政策金利は適切な水準にあるとし、米国が利上げを継続したとしても中銀理事会は追加利上げに消極的だとの考えを示したことも売りを誘った。
世界的にインフレ圧力は緩和しつつあり、中銀の焦点は国内の物価圧力に移っており、その動向を非常に懸念していると述べた。 労働市場の逼迫や1月の最低賃金引き上げにより、労働コストに一段の上昇圧力がかかる可能性があるとし、状況が悪化すれば追加引き締めが必要になる「別のシナリオ」も想定されると述べた。
ただ、最良のシナリオに基づくと、金利を年末までに「小幅」引き下げる可能性があると語った。
(GDPなど指標は好調)
2Q・GDPはは前期比0.9%増で、予想と一致。1Qの1.0%増から鈍化したものの、7期連続でプラス成長を確保した。前年同期比は3.7%増と、予想の3.4%増を上回った。小売売上高や建設業、鉱業・石油生産高が堅調だった。拡大するニアショアリング、高水準の外国からの送金、堅調な労働市場、インフレ率の段階的な低下などがメキシコの成長を支えた。
リセッションの可能性のある米景気の減速で、メキシコ景気も減速する予想もあったが、IMFが米国成長見通しを上方修正、米国株価も堅調でメキシコに悪い影響はない。IMFはメキシコの2023年の成長率予想も2.6%に引き上げ、4月時点の予想1.8%から0.8%ポイント改善した。
7月企業信頼感は53.6で前月の53.4を製造業PMIは53.2で前月の50.9をいずれも上回った。
(郷里送金ではペソ高懸念)
「スーパーペソ」と言われるほど強いが、懸念はペソを支える郷里送金がペソ高で手取りが減少していることだ。
(来週は政策金利決定、消費者物価も)
来週は7月消費者物価と政策金利の決定がある。インフレは低下しているが、強い成長、強い雇用でインフレ率を目標範囲まで下げるには据え置き期間を延ばしていくだろう。
テクニカル分析
年初来高値更新後、2σ上限から反落。5日線、20日線下向く
日足、ボリバン2σ上限から反落し下位へ下落。雲中に下落。7月28日-8月3日の上昇ラインがサポート。8月2日-3日の下降ラインがが上値抵抗。5日線、20日線下向く。
週足、13週ぶり週足陰線後は小動き。5週線下向く、20週線は依然上向き。5月29日週-7月24日週の上昇ラインがサポート。7月3日週-24日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、7月で4か月連続陽線。8月は陰線スタート。ボリバン2σ上限から小反落。6月-7月の上昇ラインを下抜く。1月-3月の上昇ラインがサポート。5か月、20か月線上向き。
年足、22年の長い上ヒゲを上抜く大陽線。14年-22年の下降ラインを上抜く。21年-22年の上昇ラインがサポート。
VAMOS MEXICO
中国もメキシコのニアショアリングを気にしている(人民日報)
米政府は近年、製造業の国内回帰と、自国の実体経済の競争力の強化を促す際に、より強硬で多元的で直接的な動きを見せている。しかしながら、米国側のこれらのやり方は予想されていた効果を手にしていない、もしくは製造業のさらなる国内回帰を促していない。多くの企業はより高い関税を支払うことになろうとも、依然として人件費の安いメキシコで生産活動を維持している。つまり米国の製造業の国内回帰が「横取り」された。
(米国側から言わせれば、中国回避でメキシコに工場が移転することは意図したものだ)