コスト削減に努めている企業は多いはずだ。なかでも早急にてこ入れしたいコストが「仕入れコスト」だ。これは、近年の原材料費の高騰や円安に伴い、仕入れ価格が上昇しており「運送業界の2024年問題」で物流費のさらなる上昇が予想されるからである。
本記事では、企業が仕入れ見直しを迫られる可能性がある物流業界の2024年問題およびコスト削減のための見直し方法ついて解説していく。あわせて仕入れ先の開拓方法や仕入れ先との交渉方法等についても解説するので参考にして欲しい。
目次
仕入れの見直しが必要とされる理由
まずは、仕入れの見直しが早急に必要とされる理由について確認しておこう。大きく分けると以下の2つの理由がある。
- 原材料等価格の高騰による仕入れ価格上昇
- 物流の2024年問題による物流価格上昇
原材料価格高騰による仕入れ価格上昇
2021年ごろから始まった燃料費の高騰を主要因とした原料価格、物流費、包材費などの急激な上昇。その後も円安、ロシアによるウクライナ侵攻などの価格上昇要因が引き続き発生し、上昇傾向はいまだに収まっていない。
2022年7~9月期に日本政策金融公庫が生活衛生関係営業企業を対象に実施した「価格動向に関するアンケート調査結果」によると、76.6%の企業が「前年に比べて仕入れ価格が上昇した」と回答。前年調査(2021年調査)に比べて31.7ポイントも増えている。前年調査は2020年と2021年の仕入れ価格を比較したものであるから、「上昇した」割合が大きく増えているのは容易に理解できるだろう。
なお、仕入れ価格の上昇が経営悪化に影響しているかどうかという質問に対しては、39.9%の企業が「かなり影響がある」と回答している。「ある程度影響がある」と回答した企業(50.8%)と合わせて90.7%の企業が仕入れ価格上昇により経営悪化の影響を受けているようだ。
2023年後半に入った今も物価上昇、円安傾向は続いており、今後も収まる様子がうかがえない。企業体力が弱まってしまわないうちに、今一度、仕入れの見直しが必要だろう。
物流の2024年問題による物流価格上昇
仕入れ価格に含まれる物流費の上昇も懸念される。なぜなら物流費は、燃料費高騰による影響をすでに受けているが、いわゆる「物流の2024年問題」によりさらなる上昇が考えられるからだ。「物流の2024年問題」とは、2024年4月から施行される「トラックドライバーの働き方改革に関する法律」が関係している。
具体的には、時間外労働の960時間上限規制および改正改善基準告示が適用されることで、労働時間が短くなる。それにより輸送能力が低下し物流が滞る可能性があるという問題だ。政府は、2024年度には14%、2030年度には34%にものぼる輸送力不足の可能性があると試算しており、抜本的・総合的な対策を「政策パッケージ」として策定、法制化も見込んでいる。
この対策の一つとされているのが、物流における商慣行の見直しだ。具体的には、納品スケジュールの見直し、物流取引価格や運賃の見直しなどが施策としてあげられている。取引価格や運賃に関しては、物流の担い手の賃金水準向上等に向けた見直しも盛り込まれており、仕入れコストの上昇につながりそうだ。