本記事は、NightWalker氏の著書『最強のインデックス投資』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
危機は突然あさっての方向からやってくる
世の中は、いつも危機探しに夢中です。「マーケットにはこんな不安材料がある、安心してはいけない」という言説がメディアを賑わしています。雑誌なんかは、その方が売れますからね。しかし、本当の危機はメディアや論者が「危機がくる」とはやし立てるときではなく、ある日突然あさっての方向からやってきます。危機を予測することは不可能なのです。
私が運営するブログでは、マーケットが堅調なときと急落があったときの反応に差があります。マーケットが堅調なとき「浮かれていてはいけない、今こそリスク許容度をよく考えてみよう」と書いたときより、マーケットが不調になって、「こここそが踏ん張りどころだ」と書いたときの方が、アクセス数が多いです。これは、何年ブログをやっていても変わりません。
経験則ですが、暴落をやり過ごすことが長期投資の成功要因の8割以上を占めます。
マーケットのクラッシュにどう向き合うかについてのノウハウをまとめています。みなさまの長期投資の旅の糧になれば幸いです。
急落したら何をする?
本来は病気と同じで予防が大切なのですが、得てして痛くなってからじゃないとお医者さまには行きません。というわけで、「急落に備える話」をする前に「急落が起きてしまったらどうするか」というお話を先にしておきます。
(1)とりあえず「休む」
危機が訪れたときにはあわててはいけません。判断を誤ります。暴落に対処する極意中の極意が、「何もしない」「休む」です。更に長期投資家として、理想的なのは、「休んでいた」「はっと気が付いたら嵐は過ぎ去っていた」ではないかと思うのです。
サラリーマンの「つみたて力」はプロもうらやむ最終兵器休むと言っても、ホントに何もしないわけではありません。嵐が来ようと何が来ようと、ひたすら積立てましょう。むしろ、積立額を増やす検討をするのです。
実は、これこそプロのファンドマネジャーすらできないプロもうらやむ最終兵器なのです。プロのファンドマネジャーの場合、顧客による解約はどうすることもできませんが、サラリーマン投資家の場合は自分の胸一つです。
我々シロート投資家は、情報力、投資の知識と経験、資金の規模、全てにおいてプロの投資家に負けています。そんな私たちにとってプロには絶対できない、たったひとつのこと。それが、長期的視野に立って投資を続けること、暴落が来ようと動じないことなのです。個人投資家が、これを放棄しては、市場に勝つ術を失ってしまいます。
(2)ポートフォリオのリスク資産比率をチェックする。
急落があった場合、私が必ず最初にすることがあります。それが、ポートフォリオのチェックです。たとえば、あなたが、1,000万円の資産をリスク資産50%(500万円)無リスク資産50%(500万円)の割合で運用していたとします。そして、ある日ある時、株価が急落したとします。すると、あなたの資産はどうなっているでしょうか。
全額で見てしまうと、「げげっ、車が1台買えるじゃん、ああ、あのとき売っておけば……」とか、「50万円あったら海外旅行に行けたのにー」となりがちです。ポートフォリオを考えたとき、「半分くらい減ってもへっちゃらさ」と思っていても、いざその時が来ると悲しみにうちひしがれてしまうのが人間です。
相場が急落したら、リバランスの観点で見てみよう
私が実践しているのは、ポートフォリオを全額ではなく比率でチェックすることです。
すると、上記は、こうなります。
- 10%下落 リスク資産比率は、50%→47%
- 20%下落 リスク資産比率は、50%→44%
- 0%下落 リスク資産比率は、50%→41%
- 40%下落 リスク資産比率は、50%→38%
- 50%下落 リスク資産比率は、50%→33%
こうやって見ると少し冷静になれます。
つまり、リバランスの観点で見てみるのです。もしあなたが、リバランスの条件を「リスク資産45%未満になったとき」と決めていたとしたら、10%下落ではまだリバランスしなくてよいのです。メディアが騒ぐ多くの急落は「1日で数%の下落」がほとんどです。
このレベルでは、いちいち大騒ぎをしなくなります。
さすがに50%下落では、リスク資産も33%に減ってしまって大変なのですが、逆に「無リスク資産が67%もある。いっぱい買えるじゃん」という見方になります。
実際、この時こそが10年に一度訪れるか訪れないかの「買い場」なのですから、長期投資家としては資産が減って悲しみつつも、喜ぶ局面なのです。
③スポット買いの誘惑に耐える
でも喜びすぎも禁物です。ある程度相場慣れしたときに陥るのが、スポット買い症候群です。「ラッキー、今がチャンスだ!」と調子にのって買いたくなっちゃうのです。でも、これまた、少々危険です。まだ株価は下がるかもしれないからです。
急落時にあせって買うべきではないと私が考える2つの理由
理由その1 そもそも暴落ではないことが多い
株価の標準偏差(σ)をざっくり20%と見た場合、私の感覚では、
- 下落:年次リターンがマイナス20% −σ
- 暴落:年次リターンがマイナス40% −2σ
です。日次とか月次ではなく、年次リターンです。意外とそこまで落ちてなかったりします。
理由その2 あせらなくても買い場は意外と長持ちする
長期投資家にとっての「買い場」では、下落や暴落の期間は意外と長く続きます。いやになるほど続きます。いやだなー、もう来ないで欲しいなー、心の底から思うときが「真の」買い場。株価低迷期は見逃しようがないのです。
「買い場」はありがたいことに、すぐには逃げていきません。あくまで冷静にリバランスの観点で見ることをオススメします。
急上昇したときには、逆のことが起きます。こちらは利益確定症候群とでもいうのでしょうか。必要以上に売ってしまうのです。先の例で言えば、リスク資産の比率が55%に上がったとき、リバランスで50%に戻せばいいのに45%ぐらいまで売ってしまうような行動です。これも運用を比率ではなく金額で考える人が陥りやすい罠です。
株価には、暴落とは逆に急騰局面もあります。『敗者のゲーム』という本では、『「稲妻がきらめくとき」(株価が急騰するとき)がパフォーマンスに与える影響が大きい』と指摘しています。売ってしまうと、その先にあるかもしれないチャンスを失ってしまいます。
売る場合も買う場合も、長期投資家は全運用資産に占めるリスク資産の比率を見て、判断するように心がけましょう。「ポートフォリオは比率で見る」これは、普通の人が投資を継続するための極意です。
(4)自分のリスク許容度を再点検する
正論を言えば、リアロケーション等でリスクを落とす場合、相場が堅調なときの方が良いに決まっています。相場が堅調なときに、運用資産額に応じたリスク許容度を見極めておき、急落の場面でも、じっとガマン、じっと積立てを続けるのが王道です。
しかし、人間、そんなにうまくできていません。誰しも、いざというときが来ないと「いざというときのこと」を考えられないもの。ですので、急落でしょんぼりしてしまったときは、自分がどの程度のリスク許容度を持っているかを知るためのチャンスだと考えましょう。
これまで述べてきたように急落したときの投資行動として絶対金額を用いるべきではありません。しかし、リスク許容度を決める場合、絶対金額で見た方が良い場合もあります。
運用資産額が100万円の時、500万円の時、1,000万円の時では、それぞれ心のリスク許容度は変わるからです。
最後に、暴落が来る前に持っておくと良い心構えや予防策としての行動パターンを、これまで述べてきた内容の復習も兼ねて7箇条にまとめてみました。
- ①分散投資をする
②つみたて投資を続ける
③キャッシュポジションを持つ
④少額投資にする(なかったと思えるくらいの金額にする)
⑤配当金があることを思い出す
⑥ゴールはずっと先ということを思い出す
⑦お金のことを話せる仲間をつくる
意外と効果があるのは⑦でしょうか。投資というのは、孤独な作業です。ひとりでだけで考えているとくじけそうになるときもあるでしょう。でも、仲間がいることは、何かを続けるときの強力な心の支えになります。これは、私が20年近くブログを続けてきた実感でもあります。
ちなみに、私のブログには、投資をしているみなさんへのリンクがたくさんあります。多くの普通のサラリーマンが、インデックス投資やいろいろな投資をしていることがわかります。仲間がいれば、苦しいときも楽しいときも心の支えになること間違いなしです。
自身が運用中のポートフォリオは、目下、全世界株式一本に集約中。無リスク資産を50%にしたリスク抑えめのカウチポテト運用。著書は『世界一ラクなお金の増やし方 #インデックス投資はじめました』(ぱる出版)。※画像をクリックするとAmazonに飛びます。