この記事は2023年8月25日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「民間予想では24年末でのYCC廃止が最多」を一部編集し、転載したものです。
(日本経済研究センター「ESPフォーキャスト調査」)
日本銀行は7月28日の金融政策決定会合で、イールドカーブ・コントロール(YCC)をより柔軟に運用することを決めた。長期金利の変動幅(±0.5%程度)の位置付けは「メド」に変更し、10年国債を無制限に購入する「連続指値オペ」の対象となる金利水準を0.5%から1%に引き上げた。
2023年7月の景気ウォッチャー調査では、調査期間(7月25日~31日)が日銀の政策変更の時期と重なったため、景気の先行き判断で「金利」についてコメントしたウォッチャーが前回6月調査の3人から12人に増加した。「金利」関連先行き判断DIは43.8と、景気判断の分岐点50を下回っていることから、金利の動向は景気の抑制要因であることが分かる。
調査結果のコメントを見ると、「日本銀行の長期金利上限1%の発表があり、顧客の購入意欲にどのように影響するか心配」(住宅販売会社従業員)、「地価が高止まりしているため、今後の住宅在庫の確保に苦戦しそう」(同)、「資源価格や物価の上昇が続くところに金利上昇もあり経済環境は急速に変化している」(衣料品専門店経営者)などがあった。
ESPフォーキャスト調査では、「金融政策と金利見通し」を特別調査として毎月公表している。23年5月調査からは、①次回のYCCの政策変更時期、②具体的な政策変更の内容、③金利見通しについてのアンケートを実施している。
直近の8月調査(回答期間=7月27日~8月3日)では、日銀によるYCCの運用柔軟化決定後の①について、「24年7月以降」の回答が33人中20人と最も多かった(図表)。②については、31人中26人が「YCCの廃止」と回答した。
③の金利見通しでは、短期の政策金利について、23年末では現在と同じ「▲0.1%以上0.0%未満」と回答した人が34人中33人と最も多かった。一方、24年末の見通しでは同じく「▲0.1%以上0.0%未満」と答えた人が15人に減り、12人が「0.0%以上0.1%未満」と回答した。長期金利の誘導目標については、23年末で「0.0%以上0.1%未満」と回答した人が30人と最も多く、24年末では「(全ての年限について)誘導目標を撤廃」が1番多くの回答を集め、24人だった。
景気探検家・エコノミスト/宅森 昭吉
週刊金融財政事情 2023年8月29日号