総括
FX「ペソ安進行、独り立ちへ。メキシコ中銀がボラティリティーを抑制するためのヘッジプログラムを縮小。ファンダメンタルズは悪くはない=リーマンショック以来の高値更新で。成長見通し引き上げ、2Q経常収支は黒字」メキシコペソ見通し
予想レンジ 8.2-8.8
(ポイント)
*ペソ安進行、メキシコ中銀がボラティリティーを抑制するためのヘッジプログラムを 縮小。ファンダメンタルズは悪くはない
*8月28日はまたもや高値を更新、リーマンショック以来の高値更新していた
*消費者物価低下も中銀は慎重
*2Qの経常収支が黒字化
*中銀が2023年の成長見通し引き上げ
*ペソ高懸念は
*1-6月の郷里送金は過去最高
*米国の輸入相手国は中国を抜いてメキシコがトップに
*ファンダメンタルズは好調
*メキシコで労働問題が起きれば米国(USTR)が関与する
*IMFも成長率予想を引き上げ
*日本からのメキシコへの6月の輸出は前年比40.3%増
*最低賃金は大幅増
*大統領選は2024年6月
昨日のペソ安進行について 特別リポート ペソ独り立ちの痛み
「ペソ安進行、メキシコ中銀がボラティリティーを抑制するためのヘッジプログラムを縮小」
*ヘッジプログラム=トランプ前大統領が就任したばかりの2017年に創設され、パンデミック下の2020年に強化されたが、中銀の声明によると、9月から段階的に縮小される予定。
中銀はこれらの商品に約 75 億ドルの未払いポジションを持っている。
中銀の声明=為替市場の運営状況は流動性と厚みが「適切なレベルに戻った。信用機関やその他の経済主体は、為替相場に関連するリスクを為替市場で直接カバーする条件を備えている」
・ヘッジは9月から現在の金額の 50% で 1 回ロールオーバーされる。6 か月の運用の場合、期間は1 か月に短縮され、更新は金額の50% のみに適用す。9 か月および 12 か月の期間の運用は期限切れのままになる。
*市場の反応=ペソが高すぎる可能性があるという明らかな兆候だ、フォワードの在庫を減らすことで為替レートの柔軟性を回復し、必要に応じて将来的に介入する余地が生まれる。ペソが強いうちにこれを行うのは理にかなっている。
*8月31日 ペソ円 8.71→8.55(1.84%安) ドルペソ16.7715→17.0199(1.48%高)
・メキシコボルサ指数=2.52%安で年初来9.4%高 ・10年債利回り 9.71%→9.688
「メキシコ中銀のボラティリティーを抑制するためのヘッジプログラムとは」
*トランプ大統領就任後でペソ安ドル高が進み、メキシコ中銀は2017年2月21日、メキシコ・ペソ売りの流れに歯止めをかけることを目的に、200億米ドルを上限に為替ヘッジ・プログラムを新設し、3月6日に初回の入札を実施。この為替ヘッジ・プログラムは、中銀が希望者との入札を通じて相対で米ドル/メキシコ・ペソのNDF(ノン・デリバラブル・フォワード)を売却するもので、満期日には約定レートと市場レートとの差分がメキシコ・ペソで決済される。
この取引を利用すると、落札者は為替市場で直接的にメキシコ・ペソのヘッジ売りを行う必要がなくなるため、メキシコ・ペソの下落圧力が減じられる。また直接介入とは異なるほか、取引決済がメキシコ・ペソで行われるため外貨準備を使用しないという利点もある。
*要はペソの独り立ちである。最近のペソ高でこのプログラムは不要となった。
(またもや高値を更新)
またもや高値を更新した。年初来だけではなく、2008年10月のリーマンショックで下落する前のレベルに近づきつつある。
昨日の終値ベースの8.55では年初来27.23%高。買い持ちならこれに10%程度のスワップがつく。合計で40%(レバ1倍)近い。昨年同様に高収益を上げている。また対ドルでも12.77%高だ。ペソ高で株価は小緩んでいるが年初来9.45%高と弱くはない。10年国債利回りは9.688%で米国の4.2%の倍以上でこれも海外資金を引き付けている。
(消費者物価低下も中銀は慎重)
8月前半の消費者物価は前年比4.67%で前月の4.79%から低下した。コアも6.24%と前月の6.76%から低下したが、水準はまだ高い。
中銀はインフレ率を目標の3%に引き下げるため、政策金利を「長期にわたり」現行の11.25%に維持する必要があるとしている。 さらに、インフレ見通しは複雑かつ不確実で、上振れリスクも存在していると指摘した。
(2Qの経常収支が黒字化)
2Qの経常収支は62.47億ドルの黒字となった。1Qの142.82億ドルの赤字から改善した。ニアショアリングでの対内投資が1Qの17.8億ドルから186.35億ドルへ急増した。郷里送金も139.7億ドルから162.68億ドルへ増加した。この資金フローがペソを支えている。7月貿易収支は8.8億ドルの赤字で6月の3800万ドルの黒字だった。2Q・GDP確定は前年同期比3.6%で、4期連続3%超えとなった。
7月失業率は3.1%で6月の2.7%から悪化、今週は8月企業信頼感指数、製造業PMIの発表がある。
(ペソ高懸念は)
ペソ高懸念がないわけでもない。ドルの債権者である輸出業者、郷里送金の受け取り手、ドル建てが多い国境を越える運送業者などペソ高で手取りが減少している。ただ、まだ大論争にはなっていないのは過去(2000年代前半)にもっと対ドル(対円でも)ペソ高の時代があったからだろう。
(格付改善?ニアショアリング効果で)
S&Pは「ニアショアリング」の効果が経済を押し上げ続ければ、信用格付けが改善する可能性があるとの見解を示した。仮に、こうした状況(ニアショアリングの)の効果でメキシコが投資水準、生産性、経済成長を向上させることができれば、信用格付けの引き上げを検討する可能性がある」と述べた。
S&Pは7月、メキシコの長期格付け見通しを「ネガティブ」から「ステーブル」に引き上げた一方、長期外貨建て格付けは「BBB」に、長期自国通貨建て格付けは「BBBプラス」にそれぞれ据え置いた。
2008年10月以来の高値更新後、急落
日足、8月28日に8.776をつけ2008年10月以来の高値更新。ただ上ヒゲもでて反落。8月4日-31日の上昇ラインがサポート。8月29日-31日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向く、20日線上向き。
週足、年初来高値圏で推移。7月31日週-8月7日週の上昇ラインがサポート。5週線、20週線上向き。
月足、5か月連続陽線。8月はボリバン2σ上限から小反落。一時6月-7月の上昇ラインを下抜く。6月-8月の上昇ラインがサポート。5か月、20か月線上向き。
年足、22年の長い上ヒゲを上抜く大陽線。14年-22年の下降ラインを上抜く。21年-22年の上昇ラインがサポート。
VAMOS MEXICO
メキシコ中銀が成長率予測を引き上げ
中銀は、2023年の成長率予想を従来の2.3%から3%に上方修正した。2024年の成長率は前回予想の1.6%に対し2.1%とした。インフレ率を目標に戻すために金利を過去最高の11.25%に維持するという中銀のコミットメントにもかかわらず、成長率の引き上げは驚きとなっている。
ロドリゲス中銀総裁位は、米国への輸出がメキシコ経済の「回復力に貢献している」と述べた。また外国企業のメキシコへの投資も好調で、今年上半期は過去最高の290億ドルとなった。