この記事は2023年9月1日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「全国で記録的な猛暑も、電力不足生じず」を一部編集し、転載したものです。


全国で記録的な猛暑も、電力不足生じず
(画像=pdm/stock.adobe.com)

(東京電力パワーグリッド「でんき予報・最大電力」)

今年の東京の真夏日(最高気温30℃以上)は、7月6日から8月15日まで41日間連続となり、2004年の最長記録(7月6日から8月14日までの40日間連続)を更新した。本稿執筆時点(8月29日)で、最長記録は55日間連続と記録更新を続けている。今年の夏がいかに暑いかを、数字が物語っている。

過去をさかのぼると、東京の真夏日が最多日数だった年は10年で、71日間だった。今年は8月29日現在で68日と、あと4日真夏日を記録すると最多日数を更新する。これまで東京で真夏日が発生した月は、5月から10月まで。最近5年間に限ると、10月に真夏日が4日間発生している。今年も10月まで真夏日が発生し、真夏日の年間最多日数を大幅に更新する可能性がある。

今年の「ESPフォーキャスト調査」では、3カ月に1度のペースで景気リスクに関する特別調査を行っている。23年7月調査で、エコノミストが選んだ最大の景気リスク要因は「米国景気悪化」だった。同調査では、景気のリスク要因として「電力の供給不足」の選択肢も用意されていたが、この選択肢を選んだエコノミストは皆無だった。

気象庁の「7月の天候」によると「気温は北日本を中心に暖かい空気に覆われやすかったことや、東・西日本と沖縄・奄美を中心に太平洋高気圧に覆われ晴れた日が多かったため、北・東日本でかなり高くなった」ということだ。今年は記録的猛暑となっているが、不思議と電力不足の声は聞こえてこない。

東京電力パワーグリッド「でんき予報」から、東京エリアの各月の最大電力(その月の最大電力発生日の最大電力実績)を調べてみると、今年は1月から7月まで、すべての月で前年同月を下回っている(図表)。電力消費量が抑えられている背景には、高い電気代を節約したい国民心理がある。8月も29日までの最大電力実績は8月4日の5,475キロワットで、昨年8月2日の最大電力実績(5,930キロワット)を下回っている。

貿易統計の原粗油の輸入数量は、前年同月比で5月が6.7%減、6月14.8%減、7月は2.9%減と減少し続けている。電力に対する需要が減少傾向にあることを裏付けるデータと捉えることもできる。

全国で記録的な猛暑も、電力不足生じず
(画像=きんざいOnline)

景気探検家・エコノミスト/宅森 昭吉
週刊金融財政事情 2023年9月5日号