この記事は2023年9月8日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「阪神タイガース“アレ”の年に見る景気動向」を一部編集し、転載したものです。


阪神タイガース“アレ”の年に見る景気動向
(画像=terovesalainen/stock.adobe.com)

(日本銀行「全国企業短期経済観測調査」)

阪神タイガース秋季練習の初日だった昨年10月24日。阪神に15年ぶりに復帰した岡田彰布監督は、「1年目から来シーズン当然優勝を目指して、今日だけ優勝と言います。明日からは“アレ”としか言わないけれど」と選手たちに訓示した。

阪神は9月5日現在、アレ(優勝)までのマジックを14とし、セ・リーグ首位を快走している。読売新聞の世論調査(調査期間2023年1月24日~2月28日)によれば「見るのが好きなスポーツ」の1位は「プロ野球」だった。プロ野球で好きなチームは「1位 巨人(17%)」「2位 阪神(8%)」の順で、この順位は、阪神が最後にセ・リーグを制した05年の調査でも変わらず「1位 巨人(26.6%)」「2位 阪神(12.5%)」だった。ただし、人気球団の順位は同じでも、巨人・阪神共に直近のファンの割合は低下している。

阪神が優勝した年は実質GDP成長率が高い傾向にある。1973年から2022年までの50年間における実質GDP暦年成長率の単純平均は2.1%。一方、阪神が優勝した1985年、2003年、05年の実質GDP暦年成長率の単純平均は2.8%で、50年間の平均を上回っている。

プロ野球シーズン終了直後である12月調査の日銀短観で、全産業の大企業における業況判断DIを見ると、直近50年間の前年差変化幅の平均はマイナス0.2ポイントだ。人気球団の巨人が優勝した年では、改善年と悪化年がおおむね半々だが、前年差変化幅平均は5.7ポイントと大幅に改善している(図表)。阪神が優勝した年では、改善2回、悪化1回で、前年差変化幅平均は1.7ポイントの改善となっている。残るセ・リーグ4球団(ヤクルト・広島・中日・DeNA)が優勝した年では、改善12回、悪化15回で、前年差変化幅平均がマイナス4.7ポイントだった。

22年12月の日銀短観(全産業の大企業・業況判断DI)と、直近23年6月の日銀短観は同じ13だった。日銀短観と連動性が高いことで知られるロイター短観とQUICK短観の製造業と非製造業のDIの変化幅から全産業DIを推測すれば、8月は6月から改善していることが明らかで、9月もこの基調が続くと思われることから、9月の日銀短観は14以上の着地となりそうだ。

阪神がセ・リーグ優勝した年は3回とも、日経平均株価の前年末比が上昇し、平均上昇率は26.1%。阪神がアレしそうな今年は、これまでのところ日経平均株価の前年末比は20%台の上昇となっている。

阪神タイガース“アレ”の年に見る景気動向
(画像=きんざいOnline)

景気探検家・エコノミスト/宅森 昭吉
週刊金融財政事情 2023年9月12日号