1977年香川県生まれ。駒澤大学法学部政治学科卒業、2003年日本総険に入社後現在。 消費者目線のリスクマネジメントを主張し活動する保険仲立人。保険提供だけでなく、クライアントのビジネスやリスクの深い理解をベースにリスクソリューションを提供している。ビジョンは『日本人のリスクマネジメントを変える』。顧客のオタクとしての深い知識と専門性を活かし、リスクマネジメントの新しい形を追求している。
事業の変遷について
―それでは、御社の創業の経緯について教えていただけますでしょうか?
はい、1996年に保険仲立人制度が解禁されたタイミングで、日本人にリスクマネジメントを提供することを目的に私たちの会社が設立されました。
現在、日本には保険代理店制度と保険仲立人制度の2つの制度が存在します。保険代理店制度は、保険会社の営業代行を担当し、保険会社の立場から商品を販売します。
一方、私たちのような保険仲立人制度は、消費者の立場になって商品を購入します。もともと保険業界は、保険会社に偏った情報が多く、消費者側には情報が不足し、消費者からのクレームが多く発生していました。
この情報格差を埋めるために、消費者側の代理人として保険仲立人制度が誕生したのです。そして、先ほども述べた通り、法規制が変わったタイミングで先代が事業を始めたのが創業の経緯です。
―現在御社は、3つのグループ会社を有していますが、その後の事業変遷についても教えていただけますでしょうか。
はい、現在、保険仲立人の「株式会社日本総険」と保険代理店の「株式会社日本総険inカスタマー」、私が代表を務めるリスクコンサルティング会社の「株式会社日本総険トラストテクノロジーズ」という3つのグループ会社を有しています。
元々は、保険仲立事業として創業しましたが、お客様の多様なニーズに柔軟に対応するために、保険代理店事業の買収をしました。
しかし、その後、事業を進めるにあたって大きな課題が出てきました。それは、消費者の代理人である保険仲立人と、保険会社の代理人である保険代理店間で情報をやり取りすることが法律で禁じられていることです。
そこで、営業の分担を明確にするために日本総険トラストテクノロジーズという会社を設立しました。こうして、保険仲立人事業と保険代理店事業は、純粋に保険の提供あるいは保険業法の管理下に置かれた業務に専念し、コンサルティング業務や保証業務などその他保険に付随する業務を日本総険トラストテクノロジーズが担当することで、お客様のニーズに対し最適なソリューションをグループ全体で提供できるような仕組みを作り上げました。
日本総険の強みとは?
―次に御社の強みについて教えていただけますでしょうか。
私たちの会社の最大の強みは、単なる保険業者ではなくお客様の「オタク」であるということです。一般的なリスクマネジメントとしては、保険加入が安心安全の手段だとされてきました。しかし、私たちは保険はあくまで出口戦略の一つであり、リスクマネジメントの本質は、事故やトラブル、クレームなど、お客様の発展と成長を妨げる要素をどうやって防ぐかということにあると考えています。
例えば、飲食店の倒産の原因として、火災や自然災害、食中毒などが保険の観点でよく取り上げられます。しかし、実際には、キャッシュフローや人材定着、モチベーション、契約書問題、法律、近隣住民とのトラブルなど、保険とは全く関係ない要素が会社の倒産危機に多大な影響を及ぼすことも多いです。
それに対して、私たちは、保険に頼らないというスタンスを取り、お客様が自社のリスクを認識するためにBCP(事業継続計画)というレポートを提出しています。保険は最後の手段で、それ以前にも契約書の見直し、不当契約の回避、ポートフォリオ管理など様々な手段があり、平常時や緊急時に何をすべきかと認識しておくためです。
私たちはお客様のパートナーであり、それを支える存在でありたいと考えています。そのために、お客様の業務内容、ビジネスモデル、戦略、マーケットなどを徹底的に調査しています。そういった意味で、私たちはお客様の「オタク」といった存在です。そこで初めて、私たちはお客様のビジネスを守るための最善のソリューションを提案することができると考えています。
―ありがとうございます。そういった意味だと、人材の教育や育成にも力を入れているのでしょうか。
人材という面で、当社は、保険業界出身者は誰も採用をしていません。その代わり、特定のものに深く興味を持ち、探求心を持つ、強いオタク気質を持つ人材の採用を重視しています。
それゆえに、看護師やレントゲン技師、民泊運営者など様々なバックグラウンドを持つ人材を採用しています。これによって、個々人が多様な視点を持ち、お客様のリスクを見つけることができると考えています。
その上で、人材教育や育成に関しては、お客様のビジネスやリスクについて複数人で徹底的に議論し共有し合うという方針をとっています。
―御社のビジネスと関わりが深いと思われる、知財について、何かお伝えいただけることはありますでしょうか。
前提として、私たちはリスクに詳しく、最適なソリューションを提供できる企業です。そして、そのソリューションの中には、どんな保険でも作れるという特性があり、実際にクラウドファンディング型保険という保険を作りその特許も取得しています。
知財について言えることとして、リスクマネジメントの一環である知財管理を日本、特に地方企業ではより重要視すべきだと考えています。例えば、私たちのクライアントの中で、自社名が既に中国で特許申請されていたケースもあり、知財管理の重要性を見落としがちな企業が多いと感じています。
海に囲まれている日本では、国境が曖昧な海外と比べて気づきにくいかもしれませんが、ITやAIの進化もあり、現在も今後もビジネスはどんどん国境を超えてきています。その現代だからこそ、リスクマネジメントの基本である国際特許申請、商標権取得を始めとした知財管理を、より重要視していくべきであると考えています。
過去のブレイクスルーや壁を乗り越えた経験について
―続いて、過去の成功実績やその秘訣について教えていただけますでしょうか。
活動範囲を限定しない活動が成功の秘訣だと考えています。当社は四国の企業ですが、海を渡るという観点でみれば本州、北海道、九州、沖縄、さらには国外も同じであるため、国内外問わず積極的に営業活動を進めています。
創業17期までは、地元の小さなマーケットで事業を展開していましたが、より多くの人々のニーズに応えるためにも、営業エリアを広げることは必至で、そのために、北海道から沖縄まで、自社のサービスを必要とする企業に対して時にはカプセルホテルや夜行バスも使用し、まさに地道な営業活動を行ってきました。
その結果、今があり、自分たちで制限を設けずに活動してきたことがブレイクスルーの要因だと考えています。
日本総険の目指す未来とは
―それでは、御社が思い描いている未来構想について教えていただけますでしょうか。
日本の労働人口が減少している現状を考えると、若い人材や国内企業が日本に留まり続ける理由が今後なくなっていくと予想しています。実際、フィリピンやカンボジア、ベトナムなどには日本の会社が数多く進出しています。
よって、私たちは、日本から海外に進出する企業を迎える企業になりたいと考えています。
国が変わると、法律や文化、宗教、通貨など全てが変わり、それに伴うリスクも増えます。そのようなリスクを管理するために、私たちは先回りしてリスクマネジメントの体制を整え、お客様が海外に進出したいと思ったときに、最適なリスクソリューションを提供したいと考えています。
これは当社の企業理念にも繋がるものであり、日本企業が世界で安心して安定した成長を遂げるためのリスクマネジメントサービスを提供し続けたいと考えています。既存事業の拡大に関しては、とにかく「オタク」化を進めていくことが短期的にも中長期的にも必要だと考えています。そのために採用や露出などを増やし、私たちのミッションに共感してくださる人材が集まる会社を作っていきたいと考えています。
―とても興味深いお話でした。本日はありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。
- 氏名
- 葛石 晋三(かっせき しんぞう)
- 会社名
- 株式会社日本総険
- 役職
- 専務取締役