この記事は2023年9月29日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「「稼ぐ力」全国1位を奪取した東京都の境界未定地域」を一部編集し、転載したものです。


「稼ぐ力」全国1位を奪取した東京都の境界未定地域
(画像=segawa7/stock.adobe.com)

(総務省統計局「経済センサス―活動調査」)

今年6月、総務省から「2021年経済センサス―活動調査」の詳細データが公表された。この調査は、全国の企業および事務所の経済活動を、地域別・産業別に横断的に分析できる統計だ。

図表は、全国の市区町村における「事業従事者1人当たり純付加価値額」を、上から多い順に並べている。純付加価値額とは、企業や事務所の売上げから原材料費や減価償却費などを差し引いたものを指す。ここから従業員への給与や税金が支払われ、残りが企業や事務所の利益となる。「事業従事者1人当たり純付加価値額」を端的に言えば、従業員1人当たりの稼ぎである。以下で、上位20市区町村にランクインする地域の特徴について紹介していきたい(注)。

まずは、全国1位の東京都の「境界未定地域」について。東京都には、市区町村の境界が定まっていない地域が存在する。なかでも、1人当たり純付加価値額が高いのが、JR東京駅や有楽町駅、新橋駅に近い「旧外堀川」「旧汐留川」の埋め立て地。千代田区と中央区、あるいは中央区と港区の間の帰属が決まっていない。

具体的には、中央区の日本橋川に架かる一石橋を起点に、外堀通りに沿って、そのすぐ西側(JR東京駅側)を東京高速道路の西銀座ジャンクション(JCT)まで南下した、幅20メートル程度(筆者推定)の帯状地域。もう1カ所が、さらにそこから東京高速道路の新橋出入口付近に至る高速道の高架下である。なかでも、東京駅の目の前を通過し、西銀座JCTに至る帯状地域には複数の高層ビルがあり、コンサルティング業や金融業などのテナントが多額の純付加価値を計上している模様だ。

次に、3位の東京都港区や6位の京都市南区、18位の大阪市中央区など、情報通信業の多い地域が上位を占めた。情報通信業は特に大都市に特化した産業であり、1人当たり純付加価値額は、全国全産業平均の2倍弱に当たる。

地方からは、7位の福島県西郷村、8位の群馬県明和町、9位の福島県矢祭町など、企業城下町や研究開発拠点の所在地がランクイン。これらの町村の多くは、雇用の5割前後を製造業が占めている。また、2位の北海道泊村、16位の宮城県女川町など、原子力発電所関連の町村も目立った。前回16年の調査結果でも、原子力関連6町村が上位20位までに入っていた。

一方、宿泊業や飲食サービス業のように、コロナ禍以前から事業従事者1人当たりの純付加価値額が低水準に沈んでいる産業もある。経済センサスは、各地経済の将来を考える上でも、参照する価値の高い統計といえよう。

「稼ぐ力」全国1位を奪取した東京都の境界未定地域
(画像=きんざいOnline)

オフィス金融経済イニシアティブ 代表/山本 謙三
週刊金融財政事情 2023年10月3日号