2000年に㈱アイル(現GMOグローバルサインホールディングス㈱)に入社。
その後、現アマゾンジャパン合同会社などを経て、2017年に㈱Eストアーに入社し、2018年に執行役員、2020年に取締役に就任(現任)。
2020年に㈱コマースニジュウイチの代表取締役社長に就任(現任)。
一貫してインターネット業界とEC業界に携わる。
1999年の創業後、大規模EC向けシステムを独自開発し、ECシステムの構築と運用を行なうSIer企業として、国内大手企業を中心にECビジネスを支えてきました。
近年はSI事業に加え、コンサルティング事業に着手し、クライアント企業と共に消費者に対して、価値の創出を徹底的に重視したバリューチェーンに向き合い、社会への価値の創出に挑戦しています。
これまでの事業の変遷について教えてください。
当社は創業からSIer企業として、柔軟性・拡張性・可用性を特長とした大規模ECシステムをアパレル・美容・スポーツ・ホームセンター・出版社など多種多様な業種のクライアントに向けて提供をし続けてきました。
私の社長就任は2020年です。就任して以降、請負業である従来のSI型ビジネスから脱却し、主体的にクライアントと向き合い、最適なサービスを提案するコンサルティング型SIビジネスに舵を切りました。この背景には、大量生産・大量消費の時代が終焉に向かい、消費者が消費よりも複合的な体験を求めるようになった社会の変化があり、私たちは受託開発という受け身の役割から、主体性をもった役割に大きく変革する必要がありました。
一番感銘を受けた書籍とその理由は?
私は正直、国内の書籍はほとんど読むことがなく、洋書を読むことが多いです。あとは個人的にはフレッシュな今の情報が載っている新聞には目を通します。強いてここであげるならば、私が影響を受けた書籍は、漫画『ONE PIECE』(ワンピース)です。
『ONE PIECE』から得た一番の教訓は、個々のキャラクターが自分の役割を理解し、その役割に基づいて主体的に行動し、全体としての目標達成に貢献するという姿でした。私はこれを「組織内の個々の自立」と定義しています。この考え方は、我が社の経営における中心的な原則であり、社員一人ひとりが自分の役割と責任を理解し、それに従って最善を尽くすという組織風土を醸成しています。また『ONE PIECE』に登場するキャラクター達が一緒に冒険をする中で絆を深め、チームとしての強みを増していく様は、チームビルディングの大切さを私に伝えてくれました。仲間としての絆や連携は、個々の力を超えた力を生み出し、困難を乗り越える一方で個々の成長も促します。これが『ONE PIECE』から得たもう一つの大切なメッセージです。
読書はどのように仕事に生かせたでしょうか。
私は、価値が標準化された現代へ「人と違っていいんだよ」ということを伝えています。ただし、「社会の一員として自覚ある者のみ」と前提があります。社会の一員としての自覚と責任を持たず、個々人の利得や都合、価値観で「人と違っていい」ということは無いです。『ONE PIECE』のような作品を読むことで育まれる想像力や共感力は、業務や組織運営における人間関係の理解や新しいビジネスアイデアの創出に重要な意味を持っています。また、物語中のキャラクターたちが遭遇する様々なエピソードや、目標に向かって困難を乗り越えていくシーンからは、経営や人生における足元の課題や、目標への道のりで待ち受ける困難に対する視点や解決方法を学び、自身の課題対応能力に磨きをかけることができます。社員には会社という船に乗って共に、未来の人生のドデカイ目標を目指してほしいと考えています。経営者として、また一人の人間として、我々が遭遇する課題や困難は多岐にわたりますが、それらに対し冷静かつ構造的に、そして時には創造的に思考し対処する能力は、読書を通じて培われたものです。
経営において重要としている考え方を教えてください。
経営において私が最も重要と考えているのは、「自分たちの未来は自分たちで作る」という考えです。会社経営とは、単に現在の業績を達成するだけではなく、会社や社会の未来を作り出す役割だと強く認識しています。そのため、今期の業績を追求するだけでなく、会社の未来や社会全体の未来への対策も重要だと考えています。そのため、将来の社会的価値を創出するための投資や研究開発を進めること、また新たなサービスや製品の構想も積極的に考えて行っています。これらの行動は短期的には業績へ貢献する規模は小さい又はゼロとなる可能性もありますが、中長期的には会社の成長と社会の発展に寄与すると考えています。
また、社会の発展を目指す以上、私たちは単に会社の成功だけを追求するのではなく、その結果として社会に貢献することも念頭に置いています。これらはすべて、「自分たちの未来は自分たちで作る」という私の考えが反映されたもので、私たちが日々行っている事業活動の中核をなす要素となっています。
最後に、御社の未来構想や従業員への期待について教えてください
当社の未来構想について、現在の利益を追求しつつも、一番は未来の社会的価値を豊かにすることを目指しています。30年後や50年後の社会を意識し、私たちは現代の業界や市場の枠組みを超えた新しい価値を創り出すイノベーションだけでなく、一般的な小売流通業界における売る人買う人の単なる売買商取引スタイルではなく、より人への配慮を重視したビジネス概念を取り入れたいと考えています。誤解を恐れずに言えば、昭和へと逆行するように、人と人との繋がりを意識し合い、そして構い合い、自分以外の人々をも大切にしていく社会に戻していきたいと考えています。
また、このメッセージが当社の若い従業員へのワクワクにつながれば良いなと思います。私は彼らに、彼らの未来を創るチャンスを惜しまず与えたいですし、自分たちの存在に自信を持ってほしいのです。技術や製品が一時的な強みにすぎない中で、私たちは人材こそが社会を、会社を成長させる最大の資産だと考えています。資産だからこそ、私たちはこれからも若い人に投資を行い、新たな価値を生み出す若い人たちを積極的に迎え入れていきます。
- 氏名
- 田中裕之(たなか ひろゆき)
- 会社名
- 株式会社コマースニジュウイチ
- 役職
- 代表取締役