関東の私鉄大手の東急<9005>と東武鉄道<9001>が快走を続けている。
新型コロナによる行動制限が撤廃されたことなどから、鉄道事業を中心に利用者数が回復しているためで、東急は2023年5月に発表した2024年3月期の業績予想を2度、東武は2023年4月に発表した2024年3月期の業績予想を1度上方修正した。
この結果、東急は営業利益がコロナ禍前の2019年3月期を上回り、東武も96.6%のところにまで迫る見込みだ。
帝国データバンクが2023年11月に全国の企業(2万6972社、回答率42.3%)を対象に実施した2024年の景気見通し調査によると、「回復局面」が前年より1.3ポイント増加し、「悪化」は前年より5ポイント減少した。
企業の見立て通りの景況になれば、両社の業績の伸びはさらにスピードアップする可能性がありそうだ。
全ての事業で増収増益に
東急は2023年8月に2024年3月期の業績予想を上方修正し、売上高を1兆329億円(当初は1兆306億円)、営業利益を780億円(同700億円)に引き上げた。
交通事業やホテル・リゾート事業で利用者数が回復したほか、鉄道の運賃改定や、不動産販売業の伸長などが修正理由だ。
この3カ月後の11月には再度上方修正し、売上高を1兆395億円(前年度比11.6%増)、営業利益を850億円(同90.6%増)に引き上げた。修正理由は1回目と同じで、交通事業、ホテル・リゾート事業、不動産事業、生活サービス事業(百貨店やスーパーなど)の全ての事業で増収増益となった。
減収減益予想から一転
東武鉄道も2023年11月に2024年3月期の業績予想を上方修正し、売上高を6260億円(前年度比1.8%増)、営業利益を650億円(同14.7%増)に引き上げた。
当初の予想は前年度比1.5%の減収、同18.0%の営業減益だったため、この修正で一気に増収増益に転じたことになる。
鉄道利用者や東京スカイツリータウンなどの商業施設への来場者数が増加したほか、都内ホテルを中心に稼働率と客室単価が想定を上回ったことから売り上げが伸長。さらにエネルギー価格が落ち着きを取り戻したことから鉄道事業の動力費などが減少し、利益も大きく伸びた。
両社はともにコロナ禍の2021年3月期に営業赤字に転落。その後、徐々に業績が回復していた。東急は2024年3月期の営業利益が、コロナ禍前の2019年3月期(819億7100万円)を5期ぶりに上回る。
東武鉄道の2024年3月期の営業利益は、2019年3月期(672億9500万円)には及ばないものの、売上高は2019年3月期(6175億4300万円)を上回る。