2023年の外食・フードサービス企業を対象にしたM&Aの取引金額は2342億円(2023年12月26日現在)で前年比約3.8倍増となった。件数も23件で前年を上回った(2022年は19件)。上位3社の取引総額が大きく、全体をけん引した。

新株発行で次のM&Aに向け資金を確保

金額トップは、ゼンショーホールディングス<7550>の案件。同社子会社を通じて北米・英国持ち帰りずしチェーン、スノーフォックス・トップコの全株式を取得(874億円)した。ゼンショーは2000年のココスジャパン買収以来、M&Aで成長してきた企業。「世界から飢餓と貧困を撲滅する」という企業理念のもとに、グローバル展開を推進しており、2018年にも持ち帰りずしを展開する米Advanced Fresh Concepts Corp.を子会社化している。

大型案件を決めた同社だが、M&Aへの意欲は衰えておらず、11月24日に新株発行を決定。これはM&A待機資金を目的としており、国内外のマルチブランドの戦略の推進、その拡大を支える調達・製造・物流機能の強化に向けてM&Aを活用していくという。2024年の同社の動きは業界内外で注目されるところだろう。

経営環境が厳しさを増す給食事業

金額2位、3位はいずれも給食事業だった。2位は国内大手給食事業者のエームサービスが三井物産<8031>の完全子会社となった案件。三井物産と米アラマークの折半出資で設立された会社で、アラマークの持ち分を買い取った(約700億円)。三井物産は食を通じたウェルネス(健康)分野の事業拡大につなげるという。


3位はシダックス<4837>のMBO(経営陣による買収)で、創業家の資産管理会社、志太ホールディングスがTOB(株式公開買い付け)を実施。これに伴い同社株式の28.44%を所有する筆頭株主のオイシックス・ラ・大地<3182>はこのTOBに応じて全株式をいったん手放すが、TOB成立後に、志太ホールディングスに66%を出資、創業家と共同でシダックスを運営していく。原材料の高騰や人で不足で厳しい経営環境が続いており、オイシックスの傘下で事業シナジーを生み出し事業の立て直しを図るという。

給食事業を巡っては、2023年9月、広島市の事業者が経営環境の厳しさから破産手続きに入り、学校での給食提供がなくなり、大きな話題となった。シダックス同様、原材料の高騰や人手不足が招いた破綻であり、2024年のM&Aにも影響を及ぼすか注目されるところだ。