特集「令和IPO企業トップに聞く 〜 経済激変時代における上場ストーリーと事業戦略」では、IPOで上場した各社のトップにインタビューを実施。コロナ禍を迎えた激動の時代に上場を果たした企業のこれまでの経緯と今後の戦略や課題について各社の取り組みを紹介する。
※取材内容は10月17日時点の内容です。
創業から現在に至るまでの事業変遷
ーー創業から現在に至るまでの事業変遷について教えていただけますでしょうか。
株式会社アイビス 代表取締役社長・神谷 栄治氏(以下、社名・氏名略): 私は子供の頃からプログラムを組むような科学少年で、大学は名古屋工業大学電気情報工学科で情報科学を学びながら、たくさんのプログラムを書いていました。学生時代の終わりには、FTPソフト『コジロー』を一人で企画・設計・開発し、1本800円で販売したところ、プチヒットして何千万円程度の資金を得ることができました。
その後、2年間CADのソフトウェアを作るエンジニアとしてサラリーマンをして、2000年に自社製品を作る会社として合同会社アイビスを創業しました。しかし、1年経っても製品が売れず、株式会社アイビスとして受託と派遣の事業に舵を切りました。
それから4年ほど経って、私が作った携帯電話機向けブラウザアプリ『ibisBrowser』がプチヒットし、モバイル事業部ができました。
ところが、2009年にiPhoneが出現し、ガラケー向けの主力商品だった『ibisBrowser』はビジネスにならないと判断し、2011年にiPhone用のお絵かきアプリ『ibisPaint』をリリースしました。リリースしてから6、7年ほどは全然儲かっていませんでしたが、直近3年間で海外向けの広告に投資することによって、海外ユーザーのシェアを獲得することに成功しました。そして、海外ユーザーの増加に伴い、会社が急成長し、2023年に私たちはグロース市場での上場を果たしました。
上場に至った背景や思い
ーー次に、貴社の上場に至った背景や思いについて教えていただけますでしょうか。
神谷:会社の知名度やブランド力向上のために上場することにしました。 私自身は、創業当初から上場を目指していましたが、「アイビス」という会社の名前を世界中に認知してほしいという気持ちが強くなり、上場を決意しました。私は学生の頃から、海外と比較して日本のIT・ソフトウェアが強くないことに非常に悔しさを感じていました。そのため、『ibisBrowser』の開発の際も、1人で香港に泊まり込んで、海外の携帯に移植するなど、海外展開をするために強い気持ちで取り組みました。さらに、『ibisPaint』も日本のソフトウェアを海外にも展開していきたいという思いから、最初のバージョンから日本とイギリスでリリースしています。
思い描く未来構想
ーー神谷代表が思い描かれている未来構想や事業戦略を教えていただけますでしょうか。
神谷:これから私たちは2つの戦略を軸に事業を展開していこうと考えています。 1つ目は、海外市場でのシェア拡大です。現在も世界展開を進めていますが、インドをはじめとして、まだシェアを取り切れていない国があるので、シェアをもっと拡大していきたいと考えています。 2つ目は、社会人やプロでも使えるサービス設計です。現在、サービスのメインユーザーは中高生ですが、大学生や社会人の方々が使うにはまだ物足りない現状があります。現在のユーザーが大学や社会人、さらにはプロになっても使えるようなサービスにしていきたいと思っています。
読者へのメッセージ
ーー最後に、ZUU onlineの読者に向けたメッセージをお願いいたします。
神谷:私たちが上場してから半年経って、上場来最高値と比較すると株価は半値になってしまっていることに対して、株主の皆様に申し訳なく思っています。株主の皆様に応援していただけるように、とにかく結果を出していく必要があると思っています。 現在、私たちはサービスを世界中に展開しており、今後もさらなる成長を目指しています。どうか引き続き応援していただけると幸いです。よろしくお願いします。
- 氏名
- 神谷 栄治(かみやま えいじ)
- 社名
- 株式会社アイビス
- 役職
- 代表取締役社長