この記事は2024年1月28日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「アミタホールディングス【2195・グロース】」を一部編集し、転載したものです。

資源再生からコンサルまで環境分野を総合サポート
企業や自治体の循環型事業モデル構築を後押し

アミタホールディングスは、「持続可能社会の実現」をミッションに掲げ、産業廃棄物の100%リサイクルから、環境管理業務のICT化やアウトソーシング、環境課題を解決するコンサルティングなど、環境に係るサービスを一貫して提供している。現在は2025年12月期の連結売上高84億円、営業利益21億円、営業利益率25%を目標に掲げ高収益化を図っている。末次貴英社長に事業内容について聞いた。

▼末次 貴英 社長

アミタホールディングス【2195・グロース】
(画像=株主手帳)

産業廃棄物を100%リサイクル
独自の調合技術で代替燃料等へ

世界で石炭需要が再び増加している。需要逼迫で価格が高騰する中、各エネルギー企業が注目するのが安価な代替燃料だ。アミタホールディングスは代替燃料を製造する企業として、その一翼を担う。

同社の2022年12月期の連結業績は、売上高48億2400万円、営業利益6億900万円。現在収益の柱が、産業廃棄物の100%リサイクルサービスだ。工場などから出る汚泥、燃え殻、廃液、金属くずなど様々な副産物を原材料として調達し、独自の調合技術により、代替燃料、セメント原燃料、金属原料などの再生資源を製造している。

2022年度は、847事業所から1742種類、17万トン以上の副産物を調達した。調達後は、国内外5カ所の自社製造拠点および4カ所のパートナー工場で受け入れ。その後、原料や燃料の代替品として再資源化され、セメント会社や非鉄金属会社などに納品される。22年度は25の事業所に納品された。

「ウクライナ侵攻の時は石炭価格が高騰しました。そのため国内のマーケットでも石炭に代わるものということで、代替品の需要が大きく伸びました」(末次貴英社長)

100%リサイクルサービスの収益モデルは、副産物の調達時に排出事業者から支払われる処理費と、再生資源の納品先であるユーザー企業に支払う代替品の使用委託料の利鞘で利益を得ている。同サービスの中でも伸長している商材が、北九州や姫路の製造所で行っているシリコンリサイクルだ。半導体の需要拡大に伴い、半導体材料(シリコンウェーハ)の製造過程で発生するシリコンスラリー廃液の発生量が増加。22年度の取扱量は昨対比で約105%となった。

アミタホールディングス【2195・グロース】
(画像=株主手帳)

21年から社会デザイン事業開始
持続可能な経営への移行支援

同社は2021年から、ミッションである「持続可能社会の実現」を具現化するため、社会デザイン事業を開始している。同事業の中核サービスが、企業向けに持続可能な企業経営への移行を支援する「Cyano Project(シアノプロジェクト)」だ。これは企業の循環型のビジネスモデル構築を支援するサービスで、戦略立案から事業創出、運営までを一貫してサポートする。

「僕らはサーキュラーデザイン(循環設計)と言っていますが、全サービスで共通して『循環』する仕組みを提供しています。循環に対して企画立案も実務もできます。そこがオリジナルなポジションであり強みです」(同氏)

同社は創業以来、産業廃棄物の100%リサイクルや企業の環境管理業務のICT・アウトソーシング、環境認証サービスなどのソリューションサービスおよび環境コンサルティングを提供してきた。取引先顧客数は、企業・自治体合わせて1541社におよぶ。これらのサービスを統合して「Cyano Project」として一貫したサービスを提供することで、より本質的な持続可能な支援を行うとともに、顧客企業の高まるサステナブル経営へのニーズに応えていく。

22年度の同サービスの提供先は、大手塗料メーカーや大手印刷会社など38社。特に環境コンサルティングの売上は環境意識の高まりもあり、前年対比178%増と拡大している。23年度は、長期化するウクライナショックや物価高などの影響により、受注計画に遅れが生じているが、今後も1社あたりの占有率を上げることで高収益化していく戦略だ。

「循環という仕組みを提供することで、1社あたりの売上をあげていきたいです」(同氏)

21年に営業利益率10%超
社内改革と外部環境が合致

同社の創業は1977年、住友金属鉱山の亜鉛・鉛の問屋業と鉄鋼ダストの物流管理業を目的に設立された。設立後に工場からの副産物の再資源化に着手し、79年から天然資源の代替資源取扱サービスを開始した。92年に再資源化施設の姫路工場を設立し、100%リサイクルサービスのモデルが確立した。その後も環境管理コンサルティング、環境認証審査サービス、クラウドサービスなど、社会的なニーズを事業化してきた。

2022年12月期の連結業績は減収増益で着地。売上高は、Cyano Projectや環境認証審査サービスの提供拡大および、国内半導体メーカーの増産に伴うシリコンスラリー廃液の取扱量の増加により好調に推移したが、収益認識に関する会計基準等の適用などにより減収。

一方で営業利益は2期連続で過去最高を更新した。営業利益率は、18年の2・9%から、19年5%、20年6・3%と伸び、さらに21年に10・9%、22年は12・6%と増加している。

「社外環境と社内改革が合致し21年は業績が伸びました。社内的には17年から全国の営業所を引き上げて東京と大阪の2拠点に変え、コロナ前からリモートや人員シフトなど、コスト削減と業態変革の準備をしていました。社外的にもSDGsやCO2問題、プライム市場移行で企業がTCFDを開示の流れがあり、ICTやBPOなど高利益率の事業が伸びています」(同氏)

中期経営計画では、最終年度の25年12月期の売上高84億円、営業利益21億円、営業利益率25%を目指す。さらに2030年に向けた事業ビジョン「エコシステム社会構想2030」(上図)も策定。同ビジョンの実現のために昨年度は2度の株式分割により資金調達を行うなど、取り組みを推進している。

「産業廃棄物の循環プラットフォームは既にある程度できています。今僕たちが着手しているのは、自治体向けに生活ゴミを循環させる仕組みを作ろうとしています」(同氏)

21年度には株主還元も再開した。

「今の基本方針は配当性向10%ですが、30%を目標に安定的に還元していきたい」(同氏)

持続成長可能な社会を実現するための事業ビジョン
「エコシステム社会構想2030」とは

アミタは「循環」を軸に、発展すればするほど人間関係資本と自然資本が増えていく持続可能社会の実現を目指している。この実現のための事業ビジョンが「エコシステム社会構想2030」であり、同構想の核となるのが、もの・情報・気持ちがめぐる「MEGURU PLATFORM」だ。互助共助コミュニティ型資源回収ステーション「MEGURU STATION®」で集まった情報等を蓄積し活用することで、企業や自治体はサーキュラービジネス・運営を展開することが可能になる。「MEGURU STATION®」は、現在2地域6箇所で展開するが、2030年に全国5万箇所の設置が目標。NTTコミュニケーションズや三井住友銀行などとパートナーシップを締結し、サービス開発や市場開拓を推進している。

アミタホールディングス【2195・グロース】
(画像=株主手帳)

2022年12月期 連結業績

売上高48億2,400万円
営業利益6億900万円8.7%増
経常利益7億1,500万円13.7%増
当期純利益5億3,100万円16.0%減

2023年12月期 連結業績予想

売上高52億8,300万円9.5%増
営業利益7億7,400万円27.1%増
経常利益8億8,700万円24.1%増
当期純利益6億2,000万円16.8%増

※株主手帳24年1月号発売日時点

末次 貴英 社長
Profile◉末次 貴英 社長(すえつぐ・たかひで)
1981年1月生まれ、福岡県出身。2005年4月アミタ(現アミタサーキュラー)入社。19年同社取締役(現任)、同社取締役執行役員。20年同社代表取締役、アミタホールディングス取締役。23年1月アミタ取締役(現任)。23年3月アミタホールディングス代表取締役社長兼CIOO(現任)