要旨

1月FOMC:金融市場の基調は不変
(画像=Wealth Road編集部)

株式市場・債券市場による反応が分かれた1月FOMC

1月30~31日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)会合およびその後の記者会見は、全体としては、ほぼ市場の想定通りの内容であったと判断されます。3月のFOMC会合での利下げが実施されない可能性をパウエルFRB(米連邦準備理事会)議長が強く示唆したことで、株式市場ではややタカ派的に受け止められましたが、債券市場ではややハト派的に受け止められました。

FOMC後も金融市場の基調は変わらないと予想

私は、今回のFOMCの結果がこのところの金融市場の基調に大きな変化をもたらす可能性は低いと考えています。米国では当面はディスインフレ的な傾向が継続し、これがFRBによる年内の4~5回の利下げを可能にしていくと見込まれます。

株式市場・債券市場による反応が分かれた1月FOMC

 1月30~31日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)会合およびその後の記者会見は、全体としては、ほぼ市場の想定通りの内容であったと判断されます。ただ、株式市場と債券市場では、1月FOMCへの評価が分かれる結果となりましたパウエルFRB(米連邦準備理事会)議長が3月のFOMC会合での利下げについて、「ベースケースとはいえない」と発言した点は3月の利下げを期待していた一部の市場参加者を失望させることになりました。直近の金融市場では5月、あるいは6月における利下げの開始を見込む声が既に多数派になってはいたものの、米国のS&P500種指数がFOMC後の記者会見を受けて下落した点は、株式市場ではFOMCに対してややタカ派的との評価が優勢であったことを示しています。

 一方、過去半年間におけるインフレ率の低下をうけ、パウエル議長は、今後もインフレ率の低下を期待していることをにじませ、そのメカニズムについても言及しました。具体的にパウエル氏が指摘したのは、①サービス価格の中で大きなウェイトを占める家賃・帰属家賃のインフレ率が低下するのは時間の問題であること、➁賃金が今後時間をかけて落ち着いていくとみられること―です。過去半年間においては、モノ(財)価格の下落(モノのインフレ率がマイナス圏にあったこと)がインフレ率の低下につながってきました。パウエル議長は、モノ価格の下落がずっと続くとは思えず、今後はモノ価格の上昇率がゼロ%近辺まで上昇するとの見通しを示した一方、サービス分野のインフレ率が低下することで全体のインフレ率が今後、低下を続けることを示唆しました。こうした発言を受けて、米国の金利先物市場で織り込まれる2024年末のFFレートの水準は、FOMCの声明文公表の前日時点での4.00%(1回あたりの利下げ幅を0.25%とすると5.3回分の利下げに相当)から、FOMC後には3.88%(同5.8回分の利下げに相当)まで低下しました。米10年国債金利も、FOMC前後で低下しており、債券市場では今回のFOMCに対してややハト派であるとの評価が強かったことがわかります。

FOMC後も金融市場の基調は変わらないと予想

 私は、今回のFOMCの結果がこのところの金融市場の基調に大きな変化をもたらす可能性は低いと考えています。パウエル議長の発言は、FRBが、賃金の落ち着きを伴ってインフレ率が低下を続けていることで、インフレ率が今後低下を続けるとの見通しを強めていることを示唆しています。私は、この点に関連して、米国景気の先行きについての記者会見でのパウエル議長の分析に注目しています。パウエル氏は、今後の景気が減速する見通しである背景として、サプライチェーンの正常化と労働市場の正常化による景気へのプラス効果が今後剥落していくことを挙げました。これまでの労働市場においては、労働参加率の上昇や移民の増加によって就業者が増加し、それが労働市場のタイトさを和らげて賃金の落ち着きとインフレの低下につながってきました。パウエル議長の想定通りに就業者数の伸びが今後低下すれば、家計の雇用者所得は減速してしまいますが、需要の減速はインフレの減速をもたらすでしょう。

 現実には、足元での各種景気指標は、就業者増加率の減速は限定的であることを示唆しています。この場合、就業者数がある程度しっかりと伸びることで、賃金上昇率が抑制されてインフレ率が低下方向に向かうと同時に、雇用者所得の伸びがある程度の水準を維持し、景気がある程度の強さを保つ公算が大きくなります。いずれにしても、ディスインフレ的な傾向が継続し、これがFRBによる年内の4~5回の利下げを可能にしていくと見込まれます

木下 智夫
グローバル・マーケット・ ストラテジスト

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