この記事は2024年2月7日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「長野計器【7715・プライム】圧力計国内トップメーカー」を一部編集し、転載したものです。


今期から第二次中計スタート
水素向け展開で第3の柱創出へ

長野計器は、圧力計国内シェア6割を占めるトップメーカーで、圧力計測を一筋に100年を超える歴史を誇る。2024年3月期は2期連続で過去最高業績を更新予定。半導体向け、FA・産業機械向け製品販売が伸長し、業績を牽引している。今期スタートした第二次中期経営計画では、数値目標を最終年度の2025年に売上高753億円、営業利益97億円、営業利益率12.9%とする。既存事業拡大、海外展開、新規事業の水素関連製品拡充などを推進している。

▼佐藤 正継 社長

長野計器【7715・プライム】圧力計国内トップメーカー
(画像=株主手帳)

半導体、自動車、ロボットなど
超高圧から微圧力まで幅広く対応

圧力計老舗メーカーの長野計器。圧力計の国内シェア首位である6割を占める。事業セグメントは4つあり、売上構成比は圧力計が約50%、圧力センサが約34%、ダイカストが約8%、計測制御機器が約5%、その他が約3%となっている。収益性の良好な圧力センサが営業利益の約50%を占める。産業別では8分野に分かれ、自動車、建設機械・産業車両・土木建設、建築・空調・冷凍機、FA・産業機械、工業計器・プロセス計装、新・省エネルギー、半導体設備、医療福祉健康産業がある。

同社は乳幼児の寝息ほどの圧力から超高圧と言われる1万㎏を超える力に相当する圧力まで、地球上に存在する圧力の計測領域をカバーする製品を保有する唯一のメーカーだ。また、圧力の計測値をより正確に確認する目的で使用する校正器・基準器と呼ばれる製品も製作しており、まさに圧力計測を極めている。

「半導体・医療・食品分野ではごくわずかな異物混入を防ぐためクリーンルームが設置されており、部屋ごとの微細な圧力差を測定することが不可欠。また各所の発電所や化学コンビナート等をはじめ、水道・ガス供給のインフラ、工場設備など、圧力計測を必要とする用途は限りなく、未来永劫なくなりません」(佐藤正継社長)

利益成長6年で4倍見通す
全社員のコスト意識向上が奏功

同社は今期から第二次中期経営計画がスタートしており、最終年度となる2025年度の目標数値として売上高753億、営業利益は97億円、営業利益率は12・9%を掲げる。2020年度の営業利益率をみると3・2%で、利益成長は6年で約4倍になる計算で、前期は9%まで伸ばしている。

「前中計はほぼ計画通りの進捗でした。利益は上振れで着地。半導体や産業機械向け製品の需要が旺盛であったことに加え、原材料の高騰を踏まえた22年7月の製品価格改定もあり、業績も良い結果が得られました」(同氏) 

同社は5年程前から月次の売上・収益を全従業員にオープンにして共有するようになっている。手掛ける製品の利益とコストに関する問題意識が芽生えたことで収益改善プロジェクトが立ち上がった。社員主体で月次会議を開き、営業はお客様への価格交渉、技術は設計や代替品の提案、工場はコスト削減などを続けた成果が結実した。

第二次中計で掲げる成長戦略は四つ。①既存事業の競争力強化、②グローバル事業強化、③新たな事業領域の拡大、④経営基盤強化だ。

「①既存事業強化では圧力センサ素子の増産に注力しました。従来比で直径を半分以下にするダウンサイジングにも成功。材料費の削減効果も大きく、増産量は月産80万個から120万個を目指し、生産能力拡大のための設備強化に取組んでいます」(同氏)

また、近年、医療現場や半導体工場で必要とされる僅かな圧力差を計測する新製品をはじめ、Bluetoothとアプリを活用、ワイヤレスで圧力計測できる新製品を続々発表している。

②グローバル戦略では、海外市場向けに戦略製品を展開。圧力センサのコア部分である素子は日本生産、完成品の組立をメキシコ・中国の現地で行う地産地消を推進。現在の地域別売上高は日本が6割、世界が4割だ。生産体制を確立させ、いよいよ米・欧州を視野に入れた展開を始動する。

新たな柱となる新規事業に意欲
水素関連等センシング技術磨く

中計成長戦略の③新たな事業領域の拡大は、高精度製品の品揃え強化を進めている。

「まずは圧力基準機の強化。日本一の圧力計メーカーだから、日本一高性能なものを作らなければならない」(同氏)

また水素関連向け開発を推進。燃料電池車に不可欠な水素ステーションや、水素製造設備専用の圧力計・圧力センサも取り揃えている。

「水素に関しては新たな市場開拓と捉え、注力をしております。トヨタ自動車様から発売されている燃料電池自動車のミライにも当社の圧力センサが搭載されており、日本全国に点在する水素ステーションにおいても当社製品が使われています。約20年前から実際に高圧状態の水素を用い、最先端の様々な技術革新に携わり、専用の圧力計測技術を開発してきましたので今後も全面的に当社が保有する技術力を結集し、取り組んで参ります」(同氏)

水素は爆発する危険性がある上、金属を透過して脆化(※)する恐れがあり、これまで高圧状態の水素圧力を計ることは難しいとされてきたが、特殊材料を用いることでこれをクリア。過去の実績からも安全と安心の信頼を市場から得ている。

水素社会の実現には安全管理のための圧力計測が欠かせない。水素は気体から液体にすると体積が800分の1になるが、液化にはマイナス253℃の低温状態にする必要がある。これを実現するためには従来の方式で圧力計測することは困難であることから、電気式ではなく光で計測する光学式圧力センサを開発。光の波長の変化で圧力を測れるため、発火の心配がない。

「株主還元に関しては事業計画をクリアしたら毎年特別配を出しています。2024年3月期には最終的に業績結果を踏まえた上で、計画達成の目途が得られた暁には、投資家の皆様への還元も考えて参りたいと思います」(同氏)


2023年3月期 連結業績

売上高605億4,300万円10.2%増
営業利益47億2,500万円33.0%増
経常利益49億5,400万円14.9%増
当期純利益34億1,000万円35.7%増

2024年3月期 連結業績予想

売上高678億円12.0%増
営業利益61億円29.1%増
経常利益58億円17.1%増
当期純利益40億円17.3%増

※株主手帳24年2月号発売日時点

佐藤 正継 社長
Profile◉佐藤 正継 社長(さとう・まさつぐ)
1954年5月生まれ。73年、長野計器入社。2008年、事業本部事業管理部長。09年、執行役員製造本部丸子電子機器工場長。14年取締役事業本部製造本部担当などを経て2018年、代表取締役社長就任(現任)