この記事は2024年2月12日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「アイリッジ【3917・グロース】スマホ活用した集客・販促支援事業を展開」を一部編集し、転載したものです。


通期業績予想下方修正
不採算案件のコスト増響く

アイリッジは「OMO(オンライン マージズウィズ オフライン)事業」を中心に、新規事業領域である「フィンテック事業」などを展開。前2023年3月期は営業利益、経常利益共に過去最高を更新した。しかし、今期は23年11月に、通期業績の下方修正を発表。この要因を社長の小田健太郎氏に聞いた。

▼小田 健太郎 社長

アイリッジ【3917・グロース】スマホ活用した集客・販促支援事業を展開
(画像=株主手帳)

企画から一気通貫の提供行う
ストック収益による積算構造

スマホ黎明期である2008年に創業した同社の強みはアプリ開発における技術力の高さだ。長年培ってきたノウハウで、アプリの企画から開発支援、成長サポートまで、一気通貫して提供が可能である。

主軸の「OMO事業」は、オンラインとオフラインを融合させて、サービスを提供する。具体的には、小売・金融・メーカーなど一般消費者向けの企業アプリ等(オンライン)から、ブランディングやプロモーションで店舗等への送客(オフライン)を促すマーケティング施策である。アプリは開発のみならず、保守や運用支援、追加サポートなどが発生するため、同社のストック収益となっている。顧客1社に対して、収益が積み上がっていく構造だ。

開発遅延等で影響受ける
案件進捗には手応えあり

2024年3月期第2四半期連結業績の売上高は、24億2400万円(前年同期比10・6%増)、営業利益は3億3000万円の損失(前年同期は2600万円の損失)、経常利益は3億2400万円の損失(同2300万円の損失)、四半期純利益は2億4000万円の損失(同700万円の損失)で、増収減益だった。この発表と同時に通期連結業績予想の下方修正を発表。売上高は5億円マイナスの60億円、営業利益・経常利益は共に、3億8000万円から1000万円に大幅な下方修正をした。

大幅減益の要因は大きく3つ。まず23年4月から提供する、同社3代目のアプリビジネスプラットフォーム「APPBOX(アップボックス)」への先行投資によるもの。2つ目にOMO事業のオフラインマーケティング関連で、新規顧客獲得が期初想定を下回ったことに伴う減収。3つ目が同事業のオンラインマーケティング関連における、一部開発遅延案件が影響した。

「開発プロセスにおいて、いわゆる不採算案件は発生し得ます。そこで、どうしても収益にマイナスインパクトを与えてしまう。ストック収益をもう少し積み上げていくことが、今の課題です」(小田健太郎社長)

24年3月期第2四半期時点でのストック収益は、全体の4割以上を占める。アプリ開発関連の需要は伸張しており、その状況下での個別の不採算案件であるため、体制を強化して軌道修正することは可能だと小田社長は語る。売上面では、期初の予想より案件は獲得できているが、その先の段階が進展しなかったのが要因だ。

「大きな広がりを期待できるお客様にアプローチしており、着実に進捗しているので手応えはあります」(同氏)

下方修正をしたが、増収となり、新規商談案件も堅調に推移しているため、同社の方向性は間違ってはいない。市場ではアプリがあり、集客・販促ができることが当たり前になってきている。2代目の「FANSHIP」は、スマホアプリに組み込むツールだった。3代目の「APPBOX」は、ゼロベースのスマホアプリの開発段階から、支援可能なビジネスプラットフォームに機能が向上している。昨今は、企業側もDXの広がりを強く意識している背景がある。CRMなどの要素を強化して企業側の要望に対応していくには、「APPBOX」の推進が重要だ。

「アプリを中心としたDX市場は変わらず強くあります。ここにしっかり応えていくことで、事業成長は確実にしていけます」(同氏)


24年3月期通期連結業績予想

【修正前】

売上高65億円
営業利益3億8,000万円
経常利益3億8,000万円
当期純利益

【修正後】

売上高60億円
営業利益1,000万円
経常利益1,000万円
当期純利益

※株主手帳24年2月号発売日時点

小田 健太郎 社長
Profile◉小田 健太郎(おだ・けんたろう)社長
1975年6月生まれ。99年エヌ・ティ・ティ・データ入社。2004年ボストンコンサルティンググループ入社。08年アイリッジを設立し、代表取締役社長に就任(現任)。21年DGマーケティングデザイン(現Qoil)代表取締役社長就任(現任)