この記事は2024年2月23日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「高まる日経平均の最高値更新期待、年後半には下押し圧力も」を一部編集し、転載したものです。
日本株は2月16日、1989年の史上最高値更新を試す水準まで上昇し、最高値更新がいつになるかが注目されている。過去30年間を振り返ると、企業利益は90年の水準の3倍近くに増加。更新時期は構造変化の勢いと世界の景気サイクル次第だが、着実に近づいている(図表)。この間、S&P500は90年の13.9倍、Euro STOXX600は4.5倍になった一方、日本株は横ばいが続く。
日本株は年明け後、①マクロ情勢の追い風(米軟着陸期待の高まり、円安、米需要上振れ)、②構造変化への期待(東証改革、個人投資家の日本株買い)──から、グローバル株式の中でも強いパフォーマンスを示した。セクター別には景気敏感なシクリカル株が反応しており、景気敏感な自動車、卸売、銀行などのバリュー株のほか、半導体・電気機器などのグロース株が上昇した。
一方、化学や運輸・サービスはアンダーパフォームした。グローバル株式のセンチメントは過去ピークに近づくなど、市場の過熱感には黄信号がともり始めているが、日本株は、年明けからの急上昇の勢いからはペースダウンしつつも、年前半は好パフォーマンスが続くとみている。市場が織り込む米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ時期が後ずれし、市場の為替予想は円安に修正されている。
「日本銀行によるマイナス金利解除は今春までには実施される」との見方が1月の日銀会合を経て一段と高まった。仮に緩やかな正常化であれば、株式市場への下押し圧力は限定的となる見込みだ。東京証券取引所の市場改革を受けた企業行動も、6月の株主総会シーズンに向け本格化することが期待される。年明け以降の円安や好調な企業決算を受けて、企業業績は上方修正されそうだ。
2024年後半には、FRBの利下げと円高進行が見込まれ、一転して日本株に下押し圧力がかかるとみられる。賃上げ決定後の企業利益率の改善、企業の資本効率改善、資金フロー改善がどの程度になるかが日本株の道筋を決めていくだろう。
当社は、日経平均株価の24年見通しを3万7,000円から3万9,000円へと上方修正した。現時点で、円安長期化や米半導体の需要サイクルの底打ち見込み、金利上昇見通しから、自動車や半導体、金融の株価は上昇しやすい。このほか、東証要請に対する企業の取り組みへの期待からバリュー株、個人投資家による日本株投資への期待から高配当株が、それぞれアウトパフォームすると予想する。
このように株式市場全体の基調は底堅い。そのため、日経平均の最高値更新は、近い将来あり得るとみている(2月19日時点)。
JPモルガン証券 チーフ株式ストラテジスト/西原 里江
週刊金融財政事情 2024年2月27日号