目次
資産運用を始める人が迷うのは「いくらから始めるか」です。少ない金額では運用効果が小さく、あまり多いと失敗したときの損失が大きくなります。
そこで注目したいのは、バランスがちょうど良い100万円を投資する資産運用です。100万円がちょうど良い理由と、おすすめの運用方法を紹介します。
資産運用を始めるのに100万円はちょうど良い金額
100万円は、資産運用するにはちょうど良い金額です。
年利回り5%(税引後)を目指す場合、100円の投資では5円、1,000円の投資では50円、1万円の投資では500円しか収益を得られません。
せっかく5%の運用利回りを達成しても、「銀行預金よりはマシ」という程度です。
新NISA(少額投資非課税制度)にも関係することですが、年間10万円をNISA口座で投資したとします。
それでも30年で300万円しか非課税枠を使用できず、1,800万円の非課税投資限度枠が大幅に余ってしまいます。
その意味でも、資産運用を始めるなら100万円程度を用意したいところです。年間100万円ずつ投資していけば、長い目で見て大きな資産を築くことができます。
その他の「資産運用を始めるのに100万円はちょうど良い金額である理由」は以下の2つです。
1.100万円あれば分散投資がしやすい
1万円までの少額資金は1つの銘柄に投資しないと効果がありませんが、100万円あれば複数の銘柄に分散投資することができます。
株式の中で業種や銘柄を分散するのもよいですし、資産カテゴリーの中で株式、債券、不動産小口化商品などに分けるのもよいでしょう。分散することで損失リスクを低減できます。
2.100万円を運用すれば万単位のインカムゲインを得られる
100万円を5%の利回りで運用すると、配当金や分配金などで5万円のインカムゲイン(保有しているだけで得られる収益)を得られます。
インカムゲインを得るモチベーションを高めるには万単位の収益を狙いたいところです。
100万円を使う2つの投資スタイル
投資には、大きく分けて2つのスタイルがあります。「一括投資」と「積立投資」です。
個別株と投資信託にはそれぞれメリット・デメリットがあるので、一概にどちらが良いとはいえません。
1.一括投資で一気に増やす
一括投資は100万円の資金を1銘柄または複数の銘柄に一括して投資し、一気に増やすことを狙う投資スタイルです。
安値で買った後で価格が上昇すれば大きな利益を得られますが、高値で買ってその後下落した場合は価格が戻るまで時間がかかります。投資信託を一括して購入することを「スポット購入」と呼びます。
2.積立投資で着実に増やす
積立投資は100万円を一度に投資せず、毎月定額を継続して投資するスタイルです。
例えば月に8万3,000円ずつ積み立てると、1年間で約100万円の投資額となります。
株価が高い月は少ない口数を、安い月は多くの口数を買い付けることになるため、高値掴みを防げます。株価の動向を気にしたくない人に向く投資方法です。
新NISAで100万円を効果的に運用する方法
2024年1月にスタートした新NISAでは、個別株を中心とした「成長投資枠」で年間240万円、投資信託に特化した「つみたて投資枠」で年間120万円まで非課税で投資できます。
100万円を運用するには良い環境が整ったといえます。100万円を有効に運用する方法を考えてみましょう。
1.非課税枠1,800万円を有効に活用する
新NISAの非課税投資限度枠は1,800万円です。年間100万円ずつ積立投資をしたとすると、18年間続けることができます。
1,800万円の非課税限度枠内なら、保有投資信託から生じる分配金はすべて非課税になるため、無駄なく運用することができます。
ただし、成長投資枠の限度額は1,200万円なので、個別株を1,800万円分購入することはできません。
成長投資枠の1,200万円は非課税投資限度枠1,800万円に含まれるため、成長投資枠を限度額まで使うと、つみたて投資枠は600万円しか利用できません。
2.社会人になってすぐ始めれば15年で老後資金の確保も可能
「老後資金が2,000万円不足する」という問題を4解決するには、若い頃から資産運用を行って準備する必要があります。
下記シミュレーションにあるように、年間100万円を積み立てることができれば、22歳から始めた場合は利回り4%の運用により15年程度で資産残高は2,000万円を超えます。
100万円を運用した場合の年利・期間別シミュレーションと利回りの解説
100万円を運用した場合にどの程度の収益を得られるのか、年利・期間別にシミュレーションしてみましょう。
1.個別株の場合のシミュレーション
個別株に100万円を一括で投資して、5~20年間運用した場合のシミュレーション結果は下表のとおりです。
▽100万円を利回り1.0~5.0%で5~20年複利運用(1年複利、実質金利)した場合の資産残高
運用利回り | 運用期間5年 | 運用期間10年 | 運用期間15年 | 運用期間20年 |
---|---|---|---|---|
1.0% | 1,051,010円 | 1,104,622円 | 1,160,969円 | 1,220,190円 |
2.0% | 1,104,081円 | 1,218,994円 | 1,345,868円 | 1,485,947円 |
3.0% | 1,159,274円 | 1,343,916円 | 1,557,967円 | 1,806,111円 |
4.0% | 1,216,653円 | 1,480,244円 | 1,800,944円 | 2,191,123円 |
5.0% | 1,276,282円 | 1,628,895円 | 2,078,928円 | 2,653,298円 |
5%の利回りで15年間運用すると、元本の2倍以上になることがわかります。
個別株は業績の向上によって増配されることが多いので、始めは5%に満たなくても保有期間が長くなるにしたがって利回りが5%を超えるケースがあります。
2.積立投資信託の場合のシミュレーション
年間100万円を毎月8万3,000円ずつに分けて投資信託に積立投資し、5~18年間(最大非課税投資額約1,800万円)運用した場合のシミュレーション結果は下表のとおりです。
▽毎月8万3,000円(年間約100万円)を利回り1.0~5.0%で5~18年積立運用(1年複利、実質金利)した場合の資産残高
運用利回り | 運用期間5年 | 運用期間10年 | 運用期間15年 | 運用期間18年間 |
---|---|---|---|---|
1.0% | 5,104,421円 | 10,470,440円 | 16,111,462円 | 19,633,911円 |
2.0% | 5,232,931円 | 11,015,732円 | 17,406,184円 | 21,558,418円 |
3.0% | 5,365,677円 | 11,598,538円 | 18,838,733円 | 23,733,049円 |
4.0% | 5,502,815円 | 12,221,734円 | 20,425,511円 | 26,194,173円 |
5.0% | 5,644,505円 | 12,888,429円 | 22,184,982円 | 28,983,768円 |
毎月確実に積み立てることによって、2,000万円の老後資金を確保できることがわかります。
3.株式投資信託の種類によって目指す利回りが異なる
株式投資信託には、「インデックスファンド」と「アクティブファンド」があります。
インデックスファンドは、日経平均225種やTOPIX(東証株価指数)などの株価指数と連動するように設計された投資信託です。
指数採用銘柄と同じ銘柄で構成されているため、指数と同じ値動きになるのでわかりやすいです。
インデックスファンドには、信託報酬が低いというメリットがあります。利回りが5%以下でよいなら、インデックスファンドで十分でしょう。
アクティブファンドは、市場平均以上のリターンを目指す投資信託です。ファンドマネージャーが分析して組み入れた銘柄で構成しているため、高い利回りが期待できます。
利回り5%以上を目指すなら、アクティブファンドが適しています。ただし、信託報酬が高いというデメリットがあります。
100万円を投資するのにおすすめの投資先3選
安定運用である程度高い利回りが期待できる、100万円投資におすすめの投資先として、以下のような商品が挙げられます。
1.積立投資信託
100万円で時間の分散を図りたい場合は、積立投資信託がおすすめです。
一括で投資すると、高値圏で買ってしまった場合、安値圏で買った時よりも受け取る分配金の利回りが低下します。
毎月積立で購入すれば買値が平準化され、一定の利回りを確保できるというメリットがあります。
2.優良高配当株
少ないリスクで高い成長を期待できるのが、優良高配当株への投資です。優良高配当株への投資には、以下のようなメリットがあります。
- 1. 日本を代表する企業が多く、倒産リスクが少ない
- 2. 業績が好調で増配が続けば、年々利回りが上昇する
- 3. 累進配当制の企業なら減配されるリスクがほぼない
- 4. 企業が成長することによって、株価の上昇も期待できる
- 5. 株価が高くなると株式分割を行う可能性が高くなる
3.不動産小口化商品
現物の不動産に投資するには、数千万円から数億円の資金が必要です。しかし、不動産小口化商品は1口1万円から投資でき、1口が10万円・100万円のファンドもあります。
マンションを中心とした不動産クラウドファンディングは1口1万円や10万円のファンドが多く、投資しやすいでしょう。
小口化所有オフィスは100万円や100万円×5口から購入可能な商品があり、普通なら手が出ない都心の一等地にあるオフィスビルを小口に分けて所有できるというメリットがあります。
贈与税の暦年贈与の非課税枠が年間110万円であることから、100万円の小口化所有オフィスは生前贈与で効率良く節税ができるので有利です。
100万円×5口=500万円で購入した小口化所有オフィスも、100万円ずつの小口に分けて贈与することができます(「Aシェア」の例で、商品によって最低購入口数は異なります)。
100万円投資で把握しておきたい4つのリスク
国が元本と利息の償還を保証する国債以外は、何らかのリスクが存在します。100万円投資を行う場合は、以下のリスクに注意しましょう。
1.破綻・倒産リスク
株式市場に上場しているのは基本的に民間企業なので、業績の悪化によって経営破綻や倒産に至る可能性は常にあります。
各業種を代表するような大企業であればリスクは低いのですが、資本金の少ない新興企業などは、業績の軽微な変化でも経営が悪化することがあります。
資産運用を目的に買うなら、大型優良株を選ぶほうが安心でしょう。
2.値下がりリスク
株式投資で日常的にあるリスクが、株価の値下がりです。株式を組み入れる投資信託にも同じことがいえます。
株価の値下がりを防ぐことは不可能なので、分散投資で銘柄、業種、地域などを複数銘柄に分けて投資する必要があります。
また、一度にまとめて購入せず、時間を分散しながら投資する必要もあります。
例えば200株を購入する場合、まず100株購入して値動きを確認し、大きく下がったら残りの100株を購入すると平均コストを下げることができます。
3.為替リスク
外国株式・外国債券は為替の影響を大きく受けます。円安時は外国の株式・債券を持っていると配当金や分配金の手取り額が増えますが、円高に転じると減少します。
外国為替市場で株式市場に影響を与えるのは主に米ドルと円で、ユーロや中国元の動向が注目されることはあまりありません。
株式市場では、一般的に円安になると輸出関連株が買われ、円高になるとディフェンシブ銘柄として内需関連株が買われる傾向があります。
4.地政学リスク
国際情勢を見ると、毎年どこかの国や地域で戦争や紛争・対立が発生しています。
ウクライナ戦争は典型的な地政学リスクです。また、新型コロナウイルスのような疫病は海外で発生したとしても、日本にも上陸して国内リスクに変化する場合があります。
100万円を運用する場合の注意点3つ
100万円運用を始める前に、リスクとは別に以下のような注意点を把握しておくことが大切です。
1.余裕資金で運用する
100万円投資は、使う予定のない余裕資金で行いましょう。使う予定のあるお金を投資に回すと、お金が必要な時に評価損が出ていた場合に損切りしなければなりません。
さらにやってはいけないのが、借金をして投資することです。「日経平均株価が史上最高値を更新」というニュースを聞くと、「借金をしてでも買わなければ」と思う人もいるでしょう。
一時的には儲かったとしても、借金をして投資することが癖になると極めて危険です。相場が反転して下落した場合は、返済できなくなる可能性があります。
2.投機的な商品に手を出さない
投資と投機は別物です。ビットコインを始めとする仮想通貨(暗号資産)は配当金がなく、短期の値上がり益だけを目的にした商品です。
また、デイトレードは1日のうちの株価の変動を狙って売買する投資手法です。いずれも投資ではなく投機の性格が強いので、手を出さないほうが無難です。「投機は資産運用ではない」と覚えておきましょう。
3.信用取引や先物取引は避ける
100万円を運用する場合、信用取引や先物取引は避けるべきです。信用取引(制度信用取引)は、保有できる期限(6ヵ月など)が決まっている取引方法です。
期日を迎えると自動的に決済されるため、保有株が下がっている場合は強制的に損失が確定します(一般信用取引では無期限のものもあります)。
保有中もケースによっては金利、貸株料、逆日歩、管理費などのコストがかかるため、資産運用には向きません。
先物取引も信用取引と同じく売買期限が決まっているため、期限が来れば強制終了となります。
さらに、少ない自己資金で大きな金額の取引ができる(レバレッジをかけられる)ため、身の丈に合わない取引をしてしまうリスクがあります。よほどの経験者でない限り、手を出さないほうが無難です。
余裕資金が100万円あるなら資産運用を始めよう
長引く超低金利で、100万円を銀行に預金してもわずかな利息しか得られません。
それだけでなく、インフレの影響で何もしなければ預貯金しているお金の価値は目減りするばかりです。余裕資金が100万円あるなら、資産運用で少しでもインフレの影響を緩和する必要があります。
ただし投資には多くのリスクがあるので、ここで挙げた注意点に念頭に置きながら、100万円の資金を有効に活用しましょう。
(提供:ACNコラム)