資産運用で年利5%を達成するための具体的方法
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目次

  1. インフレ時代に必要性が高まる資産運用
  2. 運用目標で重要な利率と利回りの違い
  3. どちらを選ぶ?年利5%を目指す運用方法
  4. 年利5%運用のリスク許容度を決めておこう
  5. 年利5%で運用可能な投資先5選
  6. 年利5%で複利運用した場合のシミュレーション
  7. 年利5%を目指す投資3つの注意点
  8. 年利5%運用でインフレ時代を乗り切ろう

長引く低金利で銀行預金ではお金が増えない時代になっています。

少しでも高い年利を確保するには資産運用を行う必要があります。本記事では、年利5%で運用するための具体的方法と運用先を紹介します。

インフレ時代に必要性が高まる資産運用

ロシアのウクライナ侵攻に端を発して起こった輸入物価の高騰によって、日本もインフレ時代に突入しています。預貯金だけではお金の価値が目減りするため、資産運用でインフレの影響を緩和することが必要です。

何もしなくても資産が目減りするインフレ

インフレになると物価が上がり、同じ金額で買える物の量が少なくなるため、お金の価値が下がります。

インフレ率が10%に達すると、これまで年間200万円の生活費で暮らしていた家庭では20万円の支出増になります。

増加分を給与だけで賄えなければ、預貯金を取り崩すことになりかねません。何もしなくても資産が目減りするのがインフレの怖さです。

銀行預金に預けておけば減る心配がないというこれまでの考え方を改めることが求められます。

資産運用は怖いという幻想から抜け出そう

日本人は貯蓄志向が高く「資産運用は怖い」という思いを持っている人は多いでしょう。

銀行に預けていてもお金が増えない今、資産運用は怖いという幻想から抜け出す必要があります。

資産運用は怖いと思う根本的な原因は、買った株が値下がりしたら損をするという不安心理にあるのではないでしょうか。

しかし、買った株は必ず売らなければならないわけではなく、長く保有して配当金を受け取り続けることもできます。

倒産する心配のない優良企業の株を買って、定期預金代わりに配当金を受け取る投資方法であれば、資産運用はそれほど怖いものではありません。

運用目標で重要な利率と利回りの違い

運用目標を立てるにあたっては、利率と利回りの違いを把握しておく必要があります。差し引かれる税金についても把握しておきましょう。

利率と利回りの違い

利率とは、募集時にあらかじめ約束された、毎年受け取ることができる利息の割合です。したがって、満期まで保有すれば確実に受け取れる収益といえます。

一方の利回りとは、利率に加えて債券等を売って得た売却益も含め、投資全体として受け取れる収益の割合をいいます。

買値より安く手放した場合は損失が出るため、売却してはじめて確定する数値です。

利率募集時にあらかじめ約束された、毎年受け取ることができる利息の割合
利回り利率に加えて債券等を売って得た売却益も含め、投資全体として受け取れる収益の割合

税引き後利回りとは

税引き後利回りとは、配当金や売却益から源泉徴収税が差し引かれた後の利回りです。

株式の配当金や投資信託の分配金から、NISA(少額投資非課税制度)を使わない場合、20.315%(復興特別所得税含む)の税金が源泉徴収されます。

例えば、10万円の配当金を受け取る場合は、2万315円の税金が差し引かれ、7万9,685円が証券口座に振り込まれます。

100万円の元本で5万円の配当金を受け取る場合の税引き後、利回りは以下のとおりです。

100万円×5%=5万円(税引前利回り)
5万円×20.315%=1万157円(源泉徴収税額)
5万円-1万157円=3万9,843円
3万9,843円÷100万円=3.98%(税引後利回り)

どちらを選ぶ?年利5%を目指す運用方法

年利5%を目指して運用するには、自分で運用するかプロに任せるか、どちらかに方針を決める必要があります。また投資のタイミングも重要です。

自分で運用するかプロに任せるか

自分で運用する場合は、銘柄の選定から買い付けまで自分で行わなければなりません。投資が好きで時間を割くのが苦にならない人は自分で運用するのも良いでしょう。

仕事や家事で忙しい人は投資信託を購入して、プロに運用を任せることができます。投資信託では自分で運用する場合には難しいような高い利回りを上げているファンドが多数あります。

積立投資信託にすれば、一度購入条件を設定するだけで毎月決まった日に決めた金額を、口座引き落としで買い付けてくれるので手間がかかりません。

スポットで投資するか積立で投資するか

投資信託に投資する方法には「スポット投資」と「積立投資」があります。スポット投資とは自分の好きなタイミングで買い付けることをいいます。投資する金額もその都度決められます。

一方の積立投資は先に述べたように毎月一定の金額を決められた日に投資するので、自分でタイミングを選ぶことはできません。

年利5%運用のリスク許容度を決めておこう

年利5%を目指すには、ローリスクの商品に投資しても難しいでしょう。上場企業が発行する社債でも年利1%前後です。

年利5%を目指すには、やはりある程度リスクを伴う投資をする必要があります。そこで大事なのが、どの程度までリスクを許容するかです。

例えば5%の下落まで許容するというルールにした場合は、株価1,000円の銘柄なら950円まで値下がりした時点で売却します。

それ以上損失を拡大させないためです。ただし、すでに50円の配当金を得ている場合は950円でも実質的な損失は出ていないので、900円まで許容範囲を拡大しても良いでしょう。

年利5%で運用可能な投資先5選

年利5%で運用可能な投資先として、以下の5つが挙げられます。元本保証ではないのでリスクはありますが、上手く運用できれば年利5%を狙える投資先です。

1.株式投資信託

株式でポートフォリオを構成して運用する商品です。

株式投資信託には大きく分けて「インデックス型」と「アクティブ型」があります。インデックス型とは、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などの株価指数と同じ動きになるように設計された投資信託です。

一方のアクティブ型は、ファンドマネージャーが独自に銘柄を選定して組み入れ、市場平均を上回るパフォーマンスを目指す投資信託です。

自由に売買できる投資信託には大きく分けて、銀行・証券会社のいずれでも買えるオープン投信と、東京証券取引所に上場していて証券会社でしか買えないETF(上場投資信託)の2つがあります。

オープン投信は株式市場の取引終了後に基準価額が決定するため、値段が付くのは1日1回のみです。

したがって、機動的に売買したい人には向いていません。もう1つのETFは株式と同じようにリアルタイムで売買できます。

2.高配当株

日本の株式市場には配当利回りが5%を超える銘柄が数多く存在します。

日本経済新聞の「予想配当利回りランキング」によると、2024年3月5日現在で32銘柄(全市場)が利回り5%を超えています。

4.5%以上に範囲を広げると116銘柄に及びます。企業業績が好調であれば増配する企業も多いので、買ったときは4.5%であっても、数年後には5%を超えることが期待できます。

日本でも連続増配株の中に3%以上の利回りになる銘柄もあるので、高配当+連続増配というポイントに当てはまる銘柄を狙うのも良いでしょう。

3.REIT(不動産投資信託)

REITはポートフォリオを不動産に特化した投資信託です。複数の大型物件に分散投資し、運用して得た収益から諸経費を差し引いて投資家に分配します。

REITには上場と非上場のファンドがあり、東京証券取引所に上場しているREITをJ-REITと呼んで非上場のREITと区別しています。

J-REITの平均分配金利回りは2024年3月5日時点で4.65%です。5%に少し欠けていますが、個別では5%を超えている銘柄もあるので、選択によって5%運用は可能です。

4.不動産クラウドファンディング

高額な不動産を少額ずつに分割して投資を募集する「不動産小口化商品」の1つです。REITと異なり、単一の物件に投資するファンドがほとんどです。

1口1万円から投資できるファンドもあり、投資しやすいのがメリットといえます。

予定分配金利回りが3~8%程度と高利回りのため、募集方法が先着式のファンドでは開始してすぐに満口になる場合があります。

運用期間は3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月などとファンドごとに決まっています。REITのようにずっと保有していることはできないので長期投資には向いていません。

5.外国債券

外国債券は国内債券よりもはるかに高い利率で発行されています。例えば、比較的安全とされる米国債でも2~4%台の銘柄が目立ちます。

世界的な大企業が発行する利付債に至っては4~5%台の高利率の銘柄が多いので大変魅力的です。

ただし、利回りは参考単価が100(額面)を超えると利率よりも低くなるので注意が必要です。逆に100を下回ると利率よりも利回りは高くなります。

新発債は額面価格で買えますが、既発債はその時点の金利動向などによって参考単価が変化します。

債券は一般的に新興国など発行元の破綻リスクが高いほど高利率に設定されます。したがって、高利率の債券は破綻する可能性があることを心に留めて購入する必要があります。

年利5%で複利運用した場合のシミュレーション

NISA口座を使って年利5%で複利運用した場合、いくらになるかシミュレーションしてみましょう。100万円の個別株を運用した場合と、月8万3,000円(年間約100万円)を積立運用した場合で計算します。

個別株の複利運用とは、配当金を再投資して株数と受取配当金を増やすこと、積立投資信託の複利運用とは分配金を支払わずに元金に組み入れる「無分配型ファンド」を購入することを指します。

個別株も最近は1株単位で購入できる証券会社が増えていますので、配当金を使って同じ銘柄を1株単位で追加購入すれば複利運用になります。

運用期間は、個別株が1~30年、積立投資信託はNISA非課税総枠の1,800万円以内に収めるために1~18年間としてシミュレーションします。

▽100万円の個別株を年利5%で1~30年複利運用した場合の資産残高(1年複利、実質金利)

1年2年3年4年5年
1,050,000円1,102,500円1,157,625円1,215,506円1,276,282円
10年15年20年25年30年
1,628,895円2,078,928円2,653,298円3,386,355円4,321,942円

年利5%で運用すると、100万円が15年間で約2倍、30年後には4.3倍に増えます。配当金は業績によって増減するので、完全にこのとおりにはなりませんが、複利運用の効果はイメージできるでしょう。

使用したシミュレーター:CASIO「ke!san生活や実務に役立つ計算サイト」

▽毎月8万3,000円(年間約100万円)ずつ年利5%の投資信託を1~18年買い続けた場合の資産残高

積立期間1年積立期間2年3年4年5年
最終積立金額
1,019,145円
最終積立金額
2,090,431円
最終積立金額
3,216,527円
最終積立金額
4,400,235円
最終積立金額
5,644,505円
10年12年14年16年18年
最終積立金額
12,888,429円
最終積立金額
16,331,390円
最終積立金額
20,135,659円
最終積立金額
24,339,153円
最終積立金額
28,983,768円

毎月8万3,000円積立投資した場合の18年間の総投資金額は約1,800万円です。これに対し、18年後の残高は約2,900万円になっているので、1,100万円増えることになります。

しかもNISAの非課税保有期間は無期限なので、積み立てた2,900万円からはその後も分配金が非課税で入り続けます。

毎月買える金額は人によって異なりますが、積立額が少なければその分長く積み立てられるので、NISAの非課税限度枠以内で調整すれば良いでしょう。

使用したシミュレーター:金融庁「資産運用シミュレーション」

年利5%を目指す投資3つの注意点

年利5%を目指して投資する場合は、以下の3つのポイントに注意する必要があります。

1.期間利回りを確認する

投資信託を購入する場合、期間利回りに注意する必要があります。

例えば、運用利回り50%と聞くととんでもない高利回りに感じますが、運用期間10年による数字なら、10で割ると年利換算5%なので驚くほどの高利回りというわけではありません。

逆に運用期間3ヵ月など販売して間もないファンドの場合は、たまたま相場の上昇期と重なって高い利回りになっているだけかもしれません。

いずれにしても表面上の利回りだけで判断せず、運用期間はどれくらいか、過去の運用利回りはどの程度だったかなど、データをしっかりチェックして選ぶことが大事です。

2.リスクの高い商品に手を出さない

1つの銘柄で5%の利回りを得ても、別の銘柄で5%の損失が出れば運用の成果はゼロです。

資産運用で年利5%を達成するには、増やすと同時に減らさないようにすることが重要なポイントです。

発行株数が少なく株価が乱高下しやすい新興企業の株や、破綻リスクの高いエマージング債券(新興国の政府や公的機関、企業などが発行主体の債券)、投機的な値動きになりやすい暗号資産(仮想通貨)などは安定運用を考えるなら避けたほうが無難です。

3.株価の下落による高利回りに注意が必要

利回りランキングを見るときに、単に数字だけ見て投資を決めるのは危険です。何らかの理由で株価が下がったために利回りが上がったに過ぎないケースがあるからです。

株価データに記載されている配当金はあくまで予想配当であり、業績の動向によって最終的に減配される場合があります。

外国株式・外国債券には為替リスクがある

外国株式や外国債券に投資するときに注意しなければいけないのが為替リスクです。

日本株と異なり、外国株の配当金は同じ配当額であっても、買ったときより円安になれば手取り額が増え、円高になれば手取り額は減ってしまいます。外国債券の分配金や、外貨預金の利息も同じです。

もう1点、米国株の配当金はNISAを使って購入した場合でも、本国で現地課税される点に注意が必要です。

米国株には25年以上連続して増配している「配当貴族」、50年以上連続増配している「配当王」と呼ばれる銘柄があります。連続増配株を好む人は、米国株も投資の対象として考えられるでしょう。

米国株の配当金はまず本国で10%の配当課税が行われ、差し引かれた後の金額に対し、日本で20.315%が課税されます。

NISAを使うと日本での課税は非課税となりますが、米国での配当課税10%は差し引かれて支払われます。

年利5%運用でインフレ時代を乗り切ろう

年利5%は高からず低からず、目標にするにはちょうど良い数値といえます。

2024年1月からはNISAの非課税枠が拡大し、非課税保有期間も無期限になりました。年利5%の配当金・分配金収入を目指して資産運用を始めるには絶好の環境が整っています。

しかし、年利5%の運用益を上げるにはリスクがあるのも事実です。せっかく増えた資産を減らさないためにも、リスクの高い商品は避け、安定運用を心がけることが大事です。

本記事で紹介した運用法や注意点を参考に資産運用で年利5%を達成し、これからのインフレ時代を乗り切っていきましょう。

※記事中の投資方法やシミュレーションは一例であり、結果を保証するものではありません。参考程度にご覧ください。

(提供:ACNコラム