「これから資産運用を始めよう」とお考えの方が気になるのは、資産運用の種類ではないでしょうか。資産運用といってもたくさんの種類があるため、初心者はどれを選ぶべきかわからないかもしれません。
しかも、資産運用の種類によってリスクやリターンの度合いが異なるため、どれが自分に合っているのかを知るのも簡単ではありません。
そこで、これから資産運用を始めようとお考えの初心者に向けて、代表的な資産運用法を9つ紹介します。
それぞれリスク度やどんな運用法なのかを解説した上で、実際に運用を行うにあたって知っておくべき知識を網羅します。
「資産運用を始めたいが、何がよいかわからない」という方は、ぜひ参考にしてください。
資産運用の種類9選リスク別に解説
最初に、代表的な資産運用法として以下の9種類を紹介します。見聞きしたことがあるものもあれば、初めて見るものもあるかもしれません。
リスク度順に並べており、上に行くほどリスクが低く、下に行くほどリスクが高くなります。まずは資産運用にはどんな種類があるのか、確認してください。
リスク度 | 資産運用の種類 | 概要 |
---|---|---|
低 | 預貯金 | 1,000万円まで元本保証のため、極めてローリスク |
低 | 個人向け国債 | ほぼ元本保証でありながら預貯金と比べると金利が高い |
中 | 株式投資 | 大型株や高配当株の長期保有であれば比較的低リスク |
中 | 投資信託、ETF | 分散性に優れ、プロに運用を委託できるので初心者向き |
中 | 不動産投資 | 不動産物件の裏付けがあるため比較的低リスクで、安定的な収入が期待できる |
高 | FX | ハイリスク投資の代表格で、短期的に大きな利益を狙える一方で資産の大半を失うリスクがある |
高 | 暗号資産 | ほとんどの通貨は値動きが荒く、FXと並んでハイリスク投資の代表格 |
高 | 個別株の デイトレード | 株式運用の中でもリスクの高い投資法だが、技術の向上によって高い利益を狙える |
番外編 | NFT | 暗号資産の仕組みを応用したデジタル資産への投資で、あくまでも番外編として利用すべき |
以下で詳しく解説していきます。
1.預貯金|1,000万円まで元本保証(ローリスク)
銀行の定期預金や普通預金などの預貯金は1,000万円まで元本が保証されているので、極めてリスクの低い運用法です。
ただし、広く知られているように預貯金の金利はとても低く、大手メガバンクの定期預金であっても金利は0.002%(2024年3月時点)です。これを資産運用と呼べるのかは微妙なところですが、お金を安全に保管できるという機能は備えています。
預貯金はローリスクだといわれていますが、「日本円の現金に集中して資産を保有している」ともいえます。
今後さらに円安になったり、インフレが進行して現金の実質的な価値が目減りしたりすると、預貯金であっても安泰とはいえません。
2.個人向け国債|預貯金と比べると金利が高い(ローリスク)
日本政府が発行している国債のうち、個人向けに販売しているものを個人向け国債といいます。
個人向け国債もほぼ元本保証されているため、リスク度は低い部類に入ります。しかも預貯金と比べると金利が高く、第167回「変動10」の金利は0.49%です。
日本ではマイナス金利解除や利上げの見通しもあるため、実際に金利が引き上げられると、個人向け国債の金利も今より高くなる可能性があります。
3.株式投資|長期保有であれば比較的低リスク(ミドルリスク)
ミドルリスク投資の一つに、株式投資があります。
「株式投資」というと、デイトレードのように売買を頻繁に繰り返すスタイルを思い浮かべる人もいるでしょう。
ここでいう「株式投資」のスタイルは、大型株(時価総額が大きい有名企業の株)や高配当株などを長期で保有して、株価の長期的な成長や配当収入を狙うものです。
超長期的な視点で見ると、株式市場は緩やかな右肩上がりの成長を続けています。リスクの低い銘柄の株式を長期で保有することで、その緩やかな成長を資産形成につなげることができます。
4.投資信託、ETF|プロに運用を委託できるので初心者向き(ミドルリスク)
投資信託はプロのファンドマネージャーに運用を委託できることから初心者向きで、しかも複数の金融商品を組み合わせて運用しているため分散性が高く、リスクに強いというメリットもあります。
おすすめは株式で運用するタイプで、その中でもインデックスといって株価指数と連動するものがよいでしょう。
日本の株式市場であれば日経平均株価やTOPIXと連動する銘柄、米国であればS&P500やナスダック100指数と連動する銘柄、といった具合です。
投資信託の中で、証券取引所に上場している銘柄群をETFといいます。上場しているので株式と同じ感覚で売買できますし、信託報酬(運用コスト)が安いので長期投資向きです。
5.不動産投資|安定的な収入が期待できる(ミドルリスク)
数ある資産運用法の中で、不動産投資はミドルリスクに属します。
アパートやマンションという現物の不動産があるため、ある日突然無価値になることは考えにくいです。
不動産投資には、少額から始められるように小口化された商品があります。
不動産で運用する投資信託であるREITや、複数の投資家で物件を所有する不動産小口化商品など、資金の規模に応じて投資形態を選べるのも不動産投資の面白いところです。
6.FX|ハイリスク投資の代表格(ハイリスク)
FX(外国為替証拠金取引)はハイリスク投資の代表格です。世界中のさまざまな通貨を売買して、為替差益や「スワップ」と呼ばれる金利差による利益を狙います。
世界には多くの外国為替市場があるため、時差の関係でほぼ24時間取引が可能です。
そのため利益を狙うチャンスは多いのですが、FXで利益を上げるのはチャート分析など特有のテクニックが必要です。
それらをマスターすればそれほどリスクが高い投資ではありませんが、最大25倍というレバレッジの高さゆえに初心者はどうしても無理な運用を行う傾向があり、最悪の場合は資金の大半を失うほどの損失を被るリスクがあります。
7.暗号資産|FXと並んでハイリスク投資の代表格(ハイリスク)
FXと並んでハイリスク・ハイリターン投資として人気なのが、暗号資産(仮想通貨)です。
ビットコインやイーサリアムといった有名な銘柄の他、特定のネットサービスのために作られた通貨や、ミームコインといって半ばジョークで作られた通貨もあります。
値動きの荒さはここで紹介している資産運用法の中でもトップクラスで、まるでジェットコースターのような値動きをします。
暗号資産の世界では、それまで流通していた通貨が突然無価値になってしまう事件も起きているので、ハイリスクを承知でごく一部の資金を使って「夢を買う」感覚で臨むのがよいでしょう。
8.個別株のデイトレード|株式運用の中でもリスクの高い投資法(ハイリスク)
ミドルリスクの資産運用法として株式投資を紹介しましたが、ここで紹介するのは個別株を頻繁に売買するハイリスク投資です。
短期的な値動きによる利益を狙うため、株式投資やチャート分析、企業業績を読み解くテクニックが求められます。
投資で大儲けした人の中には株式投資で大きな利益を得た人も多く、勉強することをいとわないのであれば、取り組む価値はあるでしょう。
ただし、最初からハイリスク投資に没入するのは危険なので、最初は少額かつ中長期的な視野で投資を始め、慣れてきたら徐々にリスクを取る投資にシフトすることをおすすめします。
9.NFT| 暗号資産の仕組みを応用したデジタル資産への投資(番外編)
NFTは「Non Fungible Token」の略で、「非代替性トークン」と訳されます。
暗号資産の通貨性を保つために用いられているブロックチェーンを応用し、デジタル資産に複製不可能な価値を付与できる技術です。
正当な所有者がブロックチェーンの台帳に記録されるため、この台帳に記録されていない人が持ち主であると主張しても、それが偽りであることがすぐに判明します。
この仕組みを利用して、オンラインゲームやメタバース内のアイテム、デジタルアート、音楽作品などがNFTとして流通しています。
今後はさらに利用が拡大する見通しで、まだ無名のアーティストのNFTを購入した後でそのアーティストが有名になると、「初期作品」として高い値が付く可能性があります。
ここでは資産運用法として紹介していますが、あくまでも番外編です。
応援したいアーティストや「お宝」と思えるデジタル資産などがあれば、それをNFTで持っておくと思わぬ利益が転がり込んでくるかもしれません。
実際の運用では複数の投資を組み合わせよう
資産運用にはリスクが付き物です。リスクを完全になくすことはできませんが、リスクを抑えることはできます。
資産運用は長期的に取り組むものなので、リスクを抑えつつ着実に資産を増やす方法を知っておく必要があります。
1.ポートフォリオとは複数の資産運用法を組み合わせた内訳のこと
資産運用のリスクを抑制するために有効なのが、分散投資です。リスク度が異なる複数の資産運用法を組み合わせて、「攻め」と「守り」に分けるのがセオリーです。
「攻め」のハイリスク運用で損失が出たとしても、「守り」の手堅い運用では資産が残るため、資産の大半を失うことを回避できます。
逆に「攻め」が成功した場合には、資産全体の安全性を守りつつ高いリターンを得られるわけです。
このように複数の資産運用法を組み合わせた内訳のことを、ポートフォリオといいます。
2.コア・サテライト運用は資産運用の代表的なポートフォリオ
コア・サテライト運用は、資産運用の代表的なポートフォリオです。コア(核)にはリスクの低い「守り」の運用方法を配置し、サテライト(衛星)部分にはリスクの高い運用方法を配置します。
コア部分とサテライト部分の運用方法は、1つずつでなくても構いません。資産規模や好みで、コアとサテライトに複数の運用方法を配置してもいでしょう。
3.年代によって適したポートフォリオは異なる
コアとサテライトの比率をどうするかは人それぞれですが、一般的に年齢が高くなるとリスク許容度が低くなるため、コア部分(守りの運用)の比率を高くしていくのがセオリーです。
30代から資産運用を始めた人は、サテライト部分が半分を超えていても問題ないでしょう。年齢が上がるにつれて、徐々にサテライト部分で得られた利益をコア部分に移動し、安全性の高い運用(コア部分)の比率を高めていきます。
最終的にはコア部分が7割程度、サテライト部分が3割程度のポートフォリオを目指しましょう。
4.リスク分散の考え方
分散投資はリスク抑制の基本的な考え方ですが、異なる金融資産に分散していれば何でもよいわけではありません。重要なのは、異なる性質の金融資産に資金を分散させることです。
国や地域の分散やリスク度の分散など、ある資産の価格が上昇しているときにはもう一方の資産の価格が下落するといったように逆相関になっているものを組み合わせると、資産全体の価値が大きく減る可能性は低くなります。
株式投資においても、日本株だけではなく米国株にも投資するなど異なる国を組み合わせることで、特定の国が不安定になり資産を減らしてしまうリスクが回避できます。
とはいえ、分散投資を行うには一定の資金や知識が必要です。「それだけの資金やノウハウがない」という人には、投資信託やETFをおすすめします。
株式で運用する投資信託であれば「株の詰め合わせパック」なので、1本保有するだけ複数銘柄へ分散投資をしている効果が得られます。
日経平均株価は、日本の主要な225銘柄で構成されています。同指数と連動する投資信託やETFを保有するということは、同指数を構成する225銘柄に分散投資をしているのと同じことです。投資信託は分散性の高さも魅力です。
資産運用で知っておきたい優遇制度
当記事で紹介している一部の資産運用法では、税の優遇制度を活用できます。対象となるのは投資信託やETF、株式などです。
知っておきたい優遇制度はNISAとiDeCoなので、両制度について解説します。
新NISA
NISAは従来からある制度ですが、2024年1月から制度が大幅に拡充されたため、新しいNISAは「新NISA」と呼ばれています。
1,800万円までの投資枠が設けられ、NISA口座で運用している投資信託やETF、株式などで得られた利益が非課税になります。
投資で得られる利益には20.315%の税金がかかるので、それが無税になるということは自分の取り分が約2割増えるということです。
証券会社にNISA口座を開設し、その口座で対象商品を購入すると適用されるので、簡単に始められます。
iDeCo
NISAと同様に、iDeCoも運用益が非課税になる制度です。ただし、iDeCoは老後資金作りに特化した制度なので、60歳になるまで引き出せないなどの特徴があります。
一方で、積立金(掛金)の全額が所得から控除されるため節税効果が高く、現役世代のうちに節税をしながら老後に備えることができます。
特に自営業者の掛金上限が高いので、厚生年金のない自営業者などにとってメリットが大きい制度です。
資産運用初心者が知っておくべきポイント4つ
「これから資産運用を始めよう」とお考えの方が、知っておくべきポイントをまとめました。実際に始める際にこれらのポイントを意識すると、より自分に合った運用ができるでしょう。
1.キャピタル重視か、インカム重視か
資産運用で得られる利益は2種類あります。キャピタルゲインとインカムゲインです。
キャピタルゲインは値上がり益など、価格変動による差益です。株や暗号資産の価格上昇によって得られる利益は、いずれもキャピタルゲインです。
インカムゲインは、運用を行うことで自動的に得られる利益です。不動産の家賃収入や株の配当、投資信託の分配金などは、いずれもインカムゲインです。
どちらを選ぶかは好みの問題もありますが、リスクを積極的に取れる若い人はキャピタルゲイン狙いで株価指数へのインデックス投資や個別株投資などに重点を置くとよいでしょう。
年齢が高い人は、自分年金を増強する意味でインカムゲイン重視の運用をおすすめします。
2.最初は少額から始める
投資のリスク分散は、国や商品だけではありません。最初から全額を投資するのではなく、少しずつ投資していくことで、時間軸によるリスク分散も可能です。
初心者のうちに大きな損を被るリスクを回避する意味でも最初は少額から始めて、資産運用に対する理解が深まるにつれて運用額を大きくしていくことをおすすめします。
3.NISAなどの優遇制度を最大限に活用する
先ほど紹介した税の優遇制度は運用益を約2割増やせる制度なので、積極的に活用しましょう。
投資信託やETF、株式で資産を運用する場合は対象になる可能性が高いので、これらの制度を利用することをおすすめします。
NISAとiDeCoはどちらかしか使えないわけではなく、併用も可能です。目的に合わせて両制度を併用するとよいでしょう。
4.自分の強みを活かす
資産運用を行う人の属性によっては、それが強みになることがあります。
例えばサラリーマンとしての勤続年数が長く、収入が安定している人であれば、融資の審査に通りやすいので不動産投資が視野に入ります。
国際情勢や経済ニュースに関心がある人は、FXにチャレンジしてみるのもよいでしょう。
ご自身の強みは何か、どんな資産運用に関心があるかを考えて、より有利な土俵で戦うことを意識してください。
まとめ
資産運用の種類はたくさんあります。多くの選択肢があるのですから、中には自分に合うものがあるはずです。
本文ではリスク度別に紹介しているので、これらをご自身の資金規模や好みで組み合わせて、自分だけのポートフォリオを構築してください。
(提供:ACNコラム)