100万円から始める資産運用!投資をライフワークに
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目次

  1. 日本の年金システムの限界
  2. すぐにつみたて投資をスタート
  3. 家計管理で給料の30%を貯金・投資に
  4. 100万円からの資産運用
  5. じぶん年金で2,000万円を貯める
  6. 長期運用なら2,000万円も簡単に達成
  7. まとめ

資産運用の始め方がわからない人は多いのではないでしょうか。

初心者は少額でコツコツと積み立てていく「つみたて投資」から始めるのがいいでしょう。

そして、同時に100万円を貯めるという目標を設定しましょう。100万円からが、本格的な投資の始まりです。

人生100年時代がやってきています。「老後2,000万円問題」を覚えていますか? 2019年の金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループの報告書で「高齢社会における資産形成・管理」が公表されました。

「老後の30年間で約2,000万円の資金が不足する」というショッキングな内容で、メディアに大きく取り上げられました。

老後に不安を持っている人も多いかもしれません。長期では2,000万円を貯めることを考えてみましょう。長期の資産運用をすれば、2,000万円を貯めるのはさほど難しくありません。

しっかりとした目標を立て、資産運用の仕方と投資に対するスタンスさえ学べば、長いけど楽しい資産運用の始まりです。

日本の年金システムの限界

具体的な投資のアドバイスの前に、日本の年金制度について簡単にお伝えします。

日本には、誰もが入れる公的年金である「国民年金」があります。若い頃から毎月長期で積み立てた資金を公的機関に運用してもらい、老後に受け取るシステムです。

このシステムは積み立てる若者の人数が多く、受け取る老後の人が少ないときはうまく機能します。ただ、高齢化社会で受け取る人のほうが増えると運用が難しくなります。

加えて日本は低金利時代が長く続いたため、利回りを重視する長期運用が難しくなりました。「このままでは日本の年金システムは破綻する」という警鐘を鳴らす経済の専門家もいました。。

実際には、支払われる年金が減ることはあっても破綻することは考えにくいといえます。

とはいえ安心はできない人も多く、「自分の老後資金は自分で責任を持って作ろう」という「じぶん年金」のすすめが老後2,000万円問題の本質といえるでしょう。

あるアンケート調査によると、定年時に2,000万円の貯金があると見込んでいる人は3割程度しかいません(図1)。その差を運用で埋めたいところです。

(図1)満65歳時の預金額見込みが2,000万円以上の方は約3割

すぐにつみたて投資をスタート

思ったらすぐに投資を始めるべきです。つみたて投資を始めるのに多くの資金は必要ありません。大切なのは計画性です。

「何年間投資して、いくらを目標にするか?」など、目標金額と期間についてはしっかりゴールを決めておくことが大切になります。投資できる期間が長ければ、意外と簡単にゴールを達成できることがわかります。

じぶん年金をサポートするために、国はNISAやiDeCoといった税制優遇制度があります。「税制優遇」といっても、投資初心者はピンとこないかもしれません。

株や債券など投資で運用益(キャピタルゲイン)が出た場合、通常その利益には約20%の税金がかかります。

ところがNISAやiDeCoだと、その約20%が免税となります。20%は投資では非常に大きいといえるでしょう。

また、iDeCoに関しては年間の投資額を年間所得から控除できます。つまり、課税対象となる年間所得が減らせるので、所得税や住民税が軽減されるメリットもあります。

まずは、できる限りNISAとiDeCoのつみたて枠を使い切るのが得策といえます。

家計管理で給料の30%を貯金・投資に

NISA、iDeCoなどのつみたて投資をフルで使ったら資産運用は終わりというわけではありません。

家が欲しい、留学したい、起業したい、FIREしたいなどの夢があれば、それ以外の資金が必要です。長期つみたて運用以外が本当の資産運用のスタートといえます。

まずは、自分の年齢によって、いつまとまった資金が必要かなどのライププランを立てます(図2)。

ライフプランに応じて、給料の何割を投資や貯金に回すかの「家計管理」をするのがおすすめです。

(図2)ライフプランのイメージ

本格的に運用を開始するにあたって、貯金や運用に回すお金を少しでも増やすライフスタイルを確立することです。

給料のうち、どれくらいの割合を貯金や投資に回すのがよいのでしょうか。総務省が実施している家計調査で貯蓄率がわかります。

2022年度の勤労者世帯(単身世帯を含む総世帯)では、給与等の収入から税金や社会保険料を差し引いた手取り収入にあたる可処分所得は43万5,001円でした。

うち、消費支出は27万3,417円。可処分所得から消費支出を除いた額は16万1,584円です。これが貯金額です。投資にも回せる資金ではないでしょうか。

(図3)家計管理の徹底が資産運用を最大化

貯蓄率は約37%です。年齢が高くなると、ライフプランの変化とともにお金がかかるイベントが減るため、貯蓄率は減る傾向があります。

同じ家計調査では、29歳以下が46.9%、30代44.2%、40代40.8%、50代34.5%です。最低でも、可処分所得の3割は貯金や運用に回したいところです。

むしろ、資金管理で最初に貯金・運用に回す金額を決め、その差額を消費に回してはいかがでしょうか。若い方なら、5割を貯蓄に回せるはずです。

家計管理ができるようになれば、投資資金のベースとなる100万円はすぐに貯まります。サラリーマン家庭が貯蓄に回す額の平均は月16万1,584円です。

NISAとiDeCoがマックスで月に12万7,000円。よって、最低でも約3万円は貯金できます。貯蓄率を高めにすれば、100万円はすぐではないでしょうか。

投資リテラシーを身につける

貯金・投資で資産が貯まるような家計管理とともに身につけたいのが「金融リテラシー」です。

長期運用の考え方、リスクの取り方、短期運用の方法、投資知識などの金融リテラシーを初心者のうちから高めておくことが、長い投資ライフの支えになることは間違いないでしょう。

100万円からの資産運用

長期運用なら、NISAとiDeCoのつみたての投資枠をフルに使うことで、ある程度の老後の資金作りはできます。

長期投資では、比較的リスクの低い商品で長期運用を行い、大きな利益獲得を目指します。商品を保有し得られる配当や分配金も長期投資においては重要です。

長期投資のメリットは、短期的な市場の値動きに左右されにくいことです。忙しい人でも対応できるのでスタートしやすいでしょう。

ただ、iDeCoに代表されるように長期のつみたて投資は解約しにくいため、資産が短期的に急上昇したときに利益を確定しにくいというデメリットがあります。

平成バブルをまたいで日本株を長期投資していたら高値では売れず、定年時に日本株が半値以下になっていたというケースも見られます。

つみたて投資だけでは、運用とはいえません。じぶん年金以外の資金運用の目的があるなら、つみたて以外の運用を始めましょう。

短期投資のメリットとデメリット

NISAとiDeCoのつみたての投資枠をフルに使ってからの資産運用ですから、当然短期運用になります。

短期投資の場合は、株式などの値動きが大きいハイリスク商品へ資金を投入し、細かく売買を繰り返しながら利益を積み重ねます。

売買のタイミングが結果を大きく左右するためリターンは大きいのですがリスクも高くなります。

NISAの成長投資枠である年間240万円までの投資枠の範囲ならキャピタルゲインが非課税ですので、この範囲内から始めましょう。

成長投資枠では、金融庁に認可された米国株や世界株の投信、個別株でも米国株や日本株、さらにレバレッジがかかったETFなどにも投資できます。

注意したいのは、短期運用は損失が膨らんだ場合の損失リスクが大きく、下がったからといって塩漬けにして長期で保有すると資金効率が悪くなることです。

最初に投資の期間や損失の許容量などを決めて、その範囲内で損失確定のロスカットなどを設定するようなスキルを高めましょう。

投資のスタイルを決めてブレない投資を心がける

投資には、ファンダメンタルズ投資とテクニカル投資があります。株式投資で例えましょう。

企業の株式に投資するときに、企業業績の伸びや新製品の販売増を予想して投資するのがファンダメンタルズ投資です。

債券や為替の場合は、景気動向や金融政策、財政政策といった経済の基礎的条件がファンダメンタルズです。

テクニカル分析は、過去の株価の動きをもとに今後の値動きを予想して投資法です。株は、必ず上げ下げがあります。

株価チャートや移動平均線などを分析して、過去にも似たようなパターンがあれば未来も同じようになると予想して投資します。

難しく考える必要はありません。自分の会社が属している業界が好調なら同じ業界を買うこともファンダメンタルズです。

チャートで売られすぎだと思い、その銘柄がトレンドに戻るのを狙うような投資がテクニカルです。運用では、両方をミックスするのが一般的です。

いろいろ試してみて、自分に合いそうな投資スタイルを確立していきましょう。その上でブレない投資を繰り返していれば結果がついてくるでしょう。

どんなスゴ腕投資家でも、投資した銘柄のすべてで利益を上げることはできません。短期投資では、自分の決めた期間で効率的な利益確定、損失回避のロスカットがしっかりできることが重要だといわれています。

テンバガーの夢

株式投資では、株価が10倍になった銘柄をテンバガーといいます。テンバガーは投資家の夢です。テクニカルで10倍になる銘柄を探すことは、なかなかできません。

典型的なテンバガーは、企業業績が大きく変わる銘柄です。画期的な新商品や優れたビジネスモデルがある会社です。

例えば「業務スーパー」は安さとユニークさからメディアで取り上げられ、業績も急拡大しました。

業務スーパーを運営する神戸物産(3038)の株価は、2016年の安値197円から2021年の高値4,660円まで上がり、20倍以上になりました。このような企業に投資することは、ファンダメンタルズ投資の夢です。

忙しくて投資に充てる時間が少ない場合は、ファンダメンタルスでちょっと長めの期間で投資をして、夢を追うのもよいでしょう。

じぶん年金で2,000万円を貯める

じぶん年金作りを補助するためのツールとして国が用意したのがNISAやiDeCoです。

税制優遇や税制控除があり、無駄なく長期の資産形成ができます。こういった制度をうまく利用することが、長期運用のコツです。

非課税ツールNISAとiDeCoの魅力

iDeCoは国が認定した投資信託を毎月買うつみたて投資です。20歳から65歳まで参加資格があり、60歳までは解約できません。

前述のとおり税制優遇があり、投資額を所得から控除できるので減税効果もあります。

年間の最大投資可能額は、加入資格によって変わります。年金が国民年金しかないような自営業者は最大で月に6万8,000円、年間81万6,000円です。

多くのサラリーマンには厚生年金もあるので、最大で月2万3,000円、年間27万6,000円です。

自分の加入者資格を確認して、できれば枠を使い切りたいところです。なお、iDeCoは基本的に解約できないので、無理な金額で運用はしないようにしてください。

NISAは18歳からで、キャピタルゲインが0になる税制優遇があります。短期で利益を確定しても、年間の投資枠内なら税金がかかりません。

年間の投資枠は、つみたて投資枠が月10万円、年間120万円です。その他に、年間240万円の成長投資枠があります。

成長投資枠では、投信や株をスポットで売買できます。両方使えば、年間360万円です。しかし、NISAの場合は生涯で1,800万円という上限があります。有効枠を最大限使ってNISAでつみたて投資をすれば5年間で無課税枠はなくなります。

(図4)NISAとiDeCoの比較

NISA、iDeCoを使い倒す

初心者なら、最初にiDeCoのつみたて枠を全部使うのがよさそうです。次にNISAのつみたて枠を使うのが長期運用の王道です。

前述しましたがiDeCoは基本的に60歳になるまで途中解約ができません。余裕のある範囲にしておけば、むしろ資金が少ないときは解約できないことも長い目でみると悪くないでしょう。 iDeCoは、収入が増えたら増やしていくとよいといえます。

iDeCoとNISAのつみたて投資枠をフルに使ってからが、新たな資産運用かもしれません。

長期運用なら2,000万円も簡単に達成

長期運用なら2,000万円の達成はそれほど難しくはありません。

サラリーマンで最大の拠出枠27万6,000円を使えば、リターンがゼロだとしてもiDeCoでは45年継続で1,242万円、35年でも966万円も貯まります。

NISAでは年間120万円のつみたて枠を10年間やるだけでも、リターンがゼロだとしても1,200万円になります。

両方の枠を使えば、2,000万円を貯めるのが難しくないことがわかるでしょう。実際には、それに運用リターンが加算されます。

複利のマジック

長期運用のメリットは複利効果です。複利とは利息を再び運用に回して、さらなる利息を得ることです。

元金が増えた分にも利息がつくので、長期になるほど資産の増加額が増えます。毎年元本だけに金利がつくのは単利です。

100万円をつみたてではなく一括購入のスポットで投資したとします。金利がなければ、20年経っても100万円です。単利5%だとすると、20年後には200万円になります。

複利5%の場合は、20年後には約265万円になります。単利と複利の差は、運用期間長いほど広がっていきます。複利は、長期運用の最大のメリットです(図5)。

(図5)100万円が利回りによっていくらになる?

リスクを避けて収益を安定化

金融商品にはリスクがあります。リターンが高い商品ほどリスクも大きくなります。そのリスクを減らすのが長期投資です。

過去60年の東証1部上場銘柄全体の年間のリターンを投資期間別に見たグラフが(図6)です。1年投資の場合は最高72.1%高、最低40.6%安ですから、その差は112.7%です。

(図6)投資期間別に見た株式投資の年平均収益率

10年投資では最高22.8%高、最低6.8%安、20年投資では20.5%高と4.7%安、40年だと最高10.4%高、最低でも4.6%高です。40年の平均は6.9%です。

長期運用によりブレが少なくなり収益が安定します。これが長期投資の魅力です。

短期投資では長期の安定収益でなく、短期的な利益を狙います。ただしその分リスクも大きいので、利確、ロスカットなどのスキルが重要になります。

長期積立投資の試算〜1億円も夢じゃない

NISAの最大枠のように毎月10万円のつみたて投資ができれば、利回りが3%であっても投資期間10年未満で1,000万円以上の資金が貯まります。

NISA枠を超えれば利益に課税されますが、3%のリターンで30年間投資すれば税引き前で5,827万円、7%で30年間なら1億2,200万円と、1億円を大きく超えます。(図7)

(図7)毎月10万円ずつ積み立てて投資した場合

前のセクションで、株式投資の40年のリターンが6.9%だったことを伝えました。30年では6.4%です。30年間、日本株にひたすら10万円をつみたてていれば1億円になります。

長期投資でのドルコスト平均法の強さ

つみたて投資を毎月続けると、買いコストが下げることができます。

価格が変動するものを同じ金額ずつ買っていくと、高いときには少ない量を買い、安いときには多くの量を買うことになるので平均単価が下がります。これを「ドル・コスト平均法」といいます。

ある株式の価格が折れ線グラフ(図8)のように4ヵ月で上下したとします。4ヵ月の平均は1,000円です。

(図8)定額投資の効果

平均株価=(1,000+1,500+500+1,000)÷4=1,000円

毎月100万円ずつ投資していくと、高いときは少ない株数、安い時は多い株数を買えるので、合計で4,666株買えました。4ヵ月の平均買いコストは857円になります。

買付単価 400万円÷4,666株=857円

これが、ドルコスト平均法での長期運用の強みです。

長期運用なら不人気の金融商品を狙うのもあり

長期運用のデメリットは、短期的な急騰局面で利益を確定しにくいことです。

40年の株の例では、10年間で7割も上げたことがあったのに、40年のリターンは結局6.9%でした。

10年間で4割も損したことがあったことを考えると仕方ないのですが、7割も上げるようなときにさっさと利益を確定して、後は安全資産で運用するという選択肢もあったはずです。もちろん、どこまで上がるか判断するのは非常に難しいです。

100万円からの短期運用ではそのことを考慮して、上がっている資産はどんどんトレードをして利益を積み重ねて、下がっている資産を長期で買い続けるのが正解かもしれません。長期運用と短期運用が補完し合うのがベストです。

過去のパターンを見ると、上げが大きい市場やセクターに長期資金の全額を投入するような資産運用は避けたほうがよさそうです。

まとめ

100万円から始めるおすすめの資産運用の方法を解説しました。

まずはNISAつみたて投資から始めて、その欠点を補うために短期投資を始めてはいかがでしょうか。

いずれにしても「上げっているから買う」というノリだけでトレードをせず、ブレのない運用方針を取ることをおすすめします。

(提供:ACNコラム