分散投資は意味がない?投資目的に応じて考えよう!
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目次

  1. 分散投資とはリスクを軽減する投資方法
  2. なぜ「分散投資は意味がない」と言われるのか?
  3. 本当に分散投資は意味がない?
  4. 分散投資をする際の2つの注意点
  5. 投資先の管理の手間を抑えて分散投資をする方法
  6. 目的に応じた投資手法の選択を

「卵は一つのカゴに盛るな」という投資格言があるように、投資をする上で重要な考え方の一つに「分散投資」があります。

分散によってリスクを軽減して、安定した投資を行うことを目指すという考えに基づくもので、王道的な投資方法といわれることも少なくありません。

一方で「投資の神様」ともいわれるウォーレン・バフェットは、分散投資ではなく集中投資をメインに行うことで巨万の富を手にしています。

神様とも呼ばれる敏腕投資家が分散投資をしていないという事実に直面すると、「分散投資は意味がないのではないか?」と思えるかもしれません。

本記事では「分散投資は意味がない?」という問いについて、その理由やどのような場合に分散投資に意味があるのかを解説します。

分散投資とはリスクを軽減する投資方法

分散投資は、リスクを軽減する投資方法の一つです。具体的に何を分散するのか、分散投資の反対の投資方法はどのようなものなのかを解説します。

分散投資の3つの具体例

分散投資においては、主に以下の3つを複数に分けることでリスクの軽減を図ります。

1.地域を分散して投資する

日本やアメリカ、ヨーロッパなど、投資する地域を分散することで、局地的な経済ショックや金融情勢の変化、自然災害等の影響による資産へのダメージを和らげることができます。

同じ日本国内に資産がある場合でも、資産によっては地域の分散が可能です。

例えば、日本国内で10件の不動産に投資する場合、すべてを東京23区内に持つのではなく、札幌に1件、東京23区内に4件、名古屋に2件、大阪に2件、福岡に1件といった形で分散することで、自然災害や賃貸需要の変化といった市況の変動によるリスクを軽減することができます。

2.商品や銘柄を分散して投資する

株式や債券、不動産など多様な資産に投資することで、特定の市場や銘柄に影響するリスク要因を分散することができます。

異なる値動きをする資産に投資することで、特定の資産の値下がりを別の資産の値上がりで補うことができるからです。

米ドルとゴールドなど、反対の値動きをしやすい資産を保有しておくと、より確度の高いリスクヘッジになるでしょう。

3.同じ商品を異なるタイミングで購入して投資する

同じ商品を異なるタイミングで購入することで、高値圏で買うリスクを軽減できます。投資タイミングを分散することで、その商品の取得単価を平準化できるからです。

例えば、毎月1万円を株式に投資する場合、1ヵ月目の株価が1,000円、2ヵ月目が1,200円、3ヵ月目が800円だったとすると、3ヵ月間で以下のように株を購入することになります。

1ヵ月目: 1万円÷ 1,000円 = 10株
2ヵ月目: 1万円÷ 1,200円 = 8.33株
3ヵ月目: 1万円÷ 800円 = 12.5株

合計30.83株の平均取得単価を974円にできるため、1ヵ月目に3万円を一括で投資する(30株、単価1,000円)よりも安い単価で多くの株に投資できます。

投資タイミングの分散により、価格が上昇している時には購入する株数が少なくなり、下落している時には購入する株数が増えるため、平均購入価格を下げる効果が期待できます。

分散投資の反対は集中投資

集中投資とは、特定の資産に集中的に投資することです。

少ない資産に集中して資金を投下すると、その資産が値上がりした場合のリターンが大きい分、値下がりした場合のリスクも大きくなります。

集中投資では、投資結果が特定の資産の価格変動に大きく左右されるため、ハイリスク・ハイリターンの投資方法になりやすいでしょう。

投資における目利きが優れていて、金銭的にも精神的にも余裕がある投資家は、集中投資によって短期間で大きな利益を上げられるかもしれません。

なぜ「分散投資は意味がない」と言われるのか?

「分散投資は意味がない」といわれる理由の一つは、「分散投資では短期的に大きな利益を出しにくいから」です。

分散投資は、高いリスクを取って高いリターンを狙う投資方法ではなく、リスクを抑えながら長期間をかけて着実にリターンを積み上げていく投資方法です。

分散投資ではリスク回避のために、価格が逆に動きやすい2つの資産へ同時に投資することが多くあります。価格が逆に動きやすいということは、どちらかが値上がりしている時は、もう一方が値下がりしている可能性が高いということです。その結果、両者の利益と損失が相殺されて、資産全体の値動きが緩やかになります。

分散投資によって大きな損失を防ぐ効果が見込める一方で、短期間で大きな利益を出すことは難しいといえるでしょう。

資産の増加に時間がかかりやすいため、「分散投資は意味がない」と言われるのです。

本当に分散投資は意味がない?

「短期的に大きな利益を出しにくいから」という理由で意味がないと言われることもある分散投資ですが、本当に無意味なのでしょうか。

分散投資は本当に意味がないのか、分散投資に意味がある場合とない場合はそれぞれどのようなケースなのかを解説します。

分散投資に意味があるか否かは投資目的によって異なる

分散投資に意味があるか否かは、投資目的によって異なります。

分散投資・集中投資は、いずれも「どのくらいの期間でどのくらいの規模の資産を形成するか」という投資の目的を達成するための手段だからです。

その人の投資目的によって、高いリスクを取ってでも集中投資をするべきか、安全かつ着実に分散投資をするべきかは異なります。

分散投資をする意味がある2つの場合

分散投資をする意味があるのは、以下の2つのような場合です。

1.リスクの軽減を重視して投資をしたい場合

「リスクを軽減し、投資で資産を減らさない」と守備を重視する人には、分散投資は意味があるといえます。

銀行に預けておくだけでは利息がほとんど付かない上に、インフレの進行によって実質的な資産額が年々目減りするため、インフレに負けないくらいのリターンを着実に狙いたいという人は、分散投資によってその目的を達成できるでしょう。

定年退職後にそれまでに蓄えてきた資産や退職金を老後の生活資金のために運用したいという人も、可能な限り資産を失うリスクを抑えた守備的な投資をしたほうがよいため、分散投資には意味があります。

2.長期的に安定した投資をしたい場合

以下の2つの理由から、長期的に分散投資を行うことで、時間を味方につけて着実な投資ができる可能性が高まります。

・世界経済は長期的に見れば安定的に成長を続けているため
浮き沈みはあるものの、世界経済は全体として長期的に安定成長を続けています。

経済ショックや国際情勢の変化などにより一時的な下落や低迷があっても、幅広い資産に長期的に投資を続けるほど、資産を増やせる可能性が高くなるといえます。

・複利運用による効果を最大限享受し続けることができる
複利運用とは、資産運用によって得られたお金を元本に組み入れて、再度運用に回す運用方法のことです。

複利運用のメリットは、運用資金を加速度的に増やせることです。分散投資によって得られた安定的なリターンを再投資することで、複利効果を最大化することができます。長期間にわたって複利効果が働くことで、加速度的に資産を増やせるということです。

複利運用をすることで実際にどのくらい資産の増加が加速するのか、以下の条件でシミュレーションしてみましょう。

・積立額:3万円/月
・年利:3%
・運用期間:10年

上記の例の場合、10年後の運用資産額は約420万円です。

毎月3万円の積立貯金だけをしていた場合の資産額は360万円なので、複利運用をすることで約60万円も差がついたことになります。

複利運用の効果は運用期間が長くなるほど大きくなり、上記の例で複利運用をした場合としない場合の差は、運用期間が20年だと約265万円、30年だと約670万円にもなります。

分散投資をする意味があまりない2つの場合

分散投資をする意味があまりないのは、以下の2つのような場合です。

分散投資をする意味があまりない2つの場合

1.短期間で大きな利益を出したい場合

分散投資では良くも悪くも値動きがマイルドになりやすいため、短期間で大きな利益を出したい場合には適さないでしょう。

株式や債券、不動産など多様な資産に投資するため、値上がりする資産もあれば、同時に値下がりする資産もあります。

分散投資には、異なる値動きをする資産へ同時に投資することで、特定の資産の値下がりを別の資産の値上がりで補うことができるというリスク軽減効果があります。

一方、投資先を分散した結果、値下がりする資産も組み入れられる可能性が高まるため、他の資産の値上がりが相殺されてしまうということもできます。

短期間で大きな利益を出したい場合、リスクを取って今後大きな値上がりが期待できる少数の資産に集中して投資をするほうが、分散投資をするよりも目的を達成しやすいといえるでしょう。

2.投資資金が少ない場合

投資資金が少ない場合は分散投資をしたくてもできない可能性があるため、分散投資を考える意味がないということもあり得ます。

例えば、株式は原則として1株単位では購入できず、100株単位で購入するのが基本です(証券会社によっては1株単位で購入できる場合もあります)。

投資資金が少ない場合、投資額に対する手数料の割合が高めに設定されていることもあります。

少ない資産をさらに分割して投資をすると、それぞれで割高な手数料を取られ、利益が出ても手数料負けすることがあることにも注意が必要です。

分散投資をする際の2つの注意点

分散投資をする際の注意点は、以下の2つです。

1.投資先を分散しすぎない

投資先を分散しすぎると、資産の管理が手間になったり、目が行き届かなくなったりするリスクがあります。

株式や債券で分散投資を行う場合は、それぞれの値動きや売却のタイミングを管理する時間と手間がかかりやすいでしょう。

不動産で分散投資を行う場合、各物件の管理を委託している管理会社とのやり取りや収支の管理、確定申告などの手間が同時に発生します。

分散投資をする際は闇雲に投資先を増やすのではなく、自分の管理が行き届く範囲に留めることが大切です。

2.似た値動きをする資産ばかりに投資しない

分散投資をする目的は、異なる値動きをする資産への投資によって、特定の資産の値下がりを別の資産の値上がりで補い、リスクを軽減することです。

似た値動きをする資産ばかりに投資すると、一見分散投資ができているように見えても、同じタイミングですべての資産の価格が下落する可能性が高くなるため、分散が不十分といえます。

具体的には、同じセクターの株式や同じエリアにある同じ間取りの不動産、同じ国の通貨建の資産などは、分散効果が低くなりやすいでしょう。

分散投資をする際は、それぞれの資産の性質や特徴に偏りがないかを確かめ、資産全体でバランスが取れるように調整する必要があります。

投資先の管理の手間を抑えて分散投資をする方法

分散投資をする上で手間がかかることに、投資した資産の管理があります。多くの資産に投資するということは、各資産の損益状況や市況も常時フォローする必要があるということです。

一般的な個人投資家にとって、上記のような工程に時間と手間をかけたり、高度な投資判断を行ったりするのは現実的ではないでしょう。

投資に時間と手間をかけられない人でも、資産の管理にかかる工数を減らしつつ分散投資ができる方法を紹介します。

投資信託なら1本で多数の商品に分散投資ができる

投資信託は、投資家から集めた資金を「ファンドマネージャー」と呼ばれるプロが株式や債券などに投資して運用する金融商品です。

投資信託は全世界の資産に分散投資できたり、日経平均やS&P500といった株価指数に連動する商品に投資できたりするため、少額でもさまざまな資産に投資することができます。

投資信託には、以下の4つのメリットがあります。

1.少額から投資ができる

投資信託は、1万円ほどの少額で手軽に投資することができます。

株式や不動産の場合、ある程度まとまった自己資金がないと投資できないため、人によってはハードルが高いでしょう。

自己資金が少なくても投資を始められることは、投資信託のメリットといえます。

2.株式や債券、不動産などに分散投資できる

投資信託では、多くの投資家から少しずつ資金を集めて一つの大きな資金として運用するので、株式や債券、不動産などの多くの資産に分散投資をすることができます。

個人の投資家が自力で株式や債券、不動産などに分散投資しようとすると、まとまった自己資金が必要です。

大きな資産にみんなでお金を出し合って投資するというのが投資信託であるため、一般の個人投資家の資金規模でもリスクを抑えた分散投資ができます。

3.専門家に運用を任せられる

投資信託では、経済や金融、資産運用に精通した専門家が投資家の代わりに運用を行います。

「どの資産を、いつ売買するか」という高度かつ専門的な判断を一般の個人投資家が自身ですべて行うことは難しいため、投資のプロに運用を任せられる点は大きなメリットといえます。

4.資産としての透明性が高い

投資信託は、投資先の資産やその構成割合、過去の値動きが原則として公表されています。

その投資信託がどのような方針で運用をされているのか、その結果としてこれまでにどのくらいのパフォーマンスを上げてきたのかが明瞭です。

投資信託は、決算のたびに監査法人などによる監査を受けているため、その点においても透明性が高い資産といえます。

投資信託にはどんな種類がある?

投資信託には、以下のような種類があります。

・国内株式型
・海外株式型
・国内債券型
・海外債券型
・国内REIT型
・海外REIT型
・コモディティ
・バランス型

国内株式型や海外債券型などのように特定の資産の中で分散投資をするものもあれば、バランス型のように1つの投資信託で国内・先進国・新興国の株式や債券に幅広く投資できるものもあります。

目的に応じた投資手法の選択を

分散投資に意味があるかないかは、その人の投資目的によって結論が異なります。

いつまでに、どのくらいの資産を築きたいのか、どの程度のリスクまで許容できるのかといった点を総合的に勘案して、投資の方針や投資する資産をカスタマイズするとよいでしょう。

(提供:ACNコラム