贈与税はいつ払うの?納付書の書き方から納付方法や注意点まで解説
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目次

  1. そもそも贈与税とは
  2. 贈与税の納付期限は翌年の3月15日
  3. 納付書で贈与税を納付する方法
  4. 贈与税を納付する6つの方法
  5. 贈与税を支払う時の注意点3つ
  6. まとめ

「贈与税はどんな税金?」
「贈与税を払うタイミングは?」
「贈与税はどうやって支払えばよい?」

贈与税に関して、このような疑問を持っている方がいらっしゃるかもしれません。

本記事では、贈与税の基本的な内容や納付期限・納付書の書き方、贈与税の納付方法などについて詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

そもそも贈与税とは

贈与税は、個人が財産をもらったときに課される税金です。

個人から個人に引き継がれた現金・預金・不動産・株式・貴金属・生命保険などが課税対象となりますが、法人から財産を受け取った際は贈与税ではなく所得税が課税されます。

贈与税の課税方法は「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類です。

※相続時精算課税
贈与を受けた際に特別控除額や一定の税率で贈与税を計算し、贈与者が亡くなったときに相続税で精算する課税方法のこと。この制度を活用すると、2,500万円までは贈与時に課税されず、相続した時に相続した財産と合わせて相続税として課税される。ただし、適用されるのは60歳以上の父母や祖父母が子や孫に贈与するときに限られる。

暦年課税とは

暦年課税とは、1年間に贈与を受けた合計の金額をもとに贈与税額を計算する方法のことです。贈与税の基本的な計算式(一般贈与)は、以下のとおりです。

(1年間に受け取った財産の合計額-110万円)×税率-控除額

税率や控除額は、課税対象となる財産の合計額(課税価額)によって決まります。課税価額は以下のとおりです。

課税価額税率控除額
200万円以下10%-
300万円以下15%10万円
400万円以下20%25万円
600万円以下30%65万円
1,000万円以下40%125万円
1,500万円以下45%175万円
3,000万円以下50%250万円
3,000万円超55%400万円

1年間の間に500万円の財産をもらった場合の計算式は以下のとおりです。

(500万円-110万円)×30%-65万円=52万円

親や祖父母などの直系尊属から18歳以上の子どもや孫に贈与した財産は特例贈与財産と呼ばれ、一般贈与財産と区別されます。特例贈与の場合は、税率や控除額が異なります。

課税価額税率控除額
200万円以下10%なし
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

以下の場合、贈与税が非課税となります。

・ 贈与税の配偶者特別控除(おしどり控除)を受けた場合
・ 直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合
・ 祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合
・ 父母などから結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合

おしどり控除を受けた場合は、2,110万円を超えた分は課税対象になるので、贈与税が非課税となります。

直系尊属から住宅取得資金の贈与とは、父母や祖父母が18歳以上の子や孫の住宅資金を贈与することで最大1,000万円までの贈与が非課税となります。

住宅資金の贈与を受ける場合、贈与を受けた人のその年の所得が2,000万円以下であることや贈与を受けた年の翌年3月31日までに購入した家に住むことなどの条件を満たす必要があります。

父母や祖父母といった直系尊属から受ける教育資金の一括贈与については、最大1,500万円まで非課税となります。

適用される条件は子や孫の名義で信託銀行などに口座を開設し、その口座に教育資金を入金することです。

教育資金の用途は学校などに直接支払うものとそれ以外のものに分けられ、資金を幅広く利用することができます。

学校以外の用途に使う場合の贈与は500万円が限度となりますので、注意しましょう。

結婚・子育て資金の一括贈与は、父母や祖父母が18歳以上50歳未満の子や孫に最大1,000万円まで非課税で贈与できる仕組みです。

1,000万円のうち、結婚資金に充てられるのは最大で300万円までと定められています。

上記の事例に当てはまる場合は非課税の対象となるため、贈与税を納める必要はありません。

贈与税の納付期限は翌年の3月15日

贈与税の申告と納税は、財産を受け取った翌年の2月1日から3月15日までに行わなければなりません。

贈与税は原則として金銭で納付しなければなりませんが、納税額が10万円以上で3月15日までに納付するのが困難な場合は、申請により納付を延期することができます。

注意しなければならないのは、確定申告と贈与税の申告は別のものだということです。同じ時期に行われるため同じものと勘違いすることがありますが、別々に手続きを行う必要があるため注意してください。

納付書で贈与税を納付する方法

贈与税の納付方法は納付書を使用するものと、納付書以外で納税するものがあります。

ここでは、納付書を使って贈与税を納付する方法について解説します。

1.納付書を入手する

税務署から納付書が送られている場合、それを使って贈与税を納付できます。

手元に納付書がない場合は、税務署か所轄税務署管内の金融機関で納付書を入手します。金融機関に納付書がない場合は、所轄の税務署に問い合わせましょう。

2.納付書の書き方

納付書の書き方は、それほど複雑ではありません。記入すべき項目を7つに分けて解説します。

・年度
「年度」には贈与税を納付する年度を記入します。

令和6年3月10日に納付する場合、会計年度としては令和5年度となるため、年度の場所には「05」と記入します。

・税目番号
税目番号は税によって異なりますが、贈与税の場合は「051」と記入しましょう。

・税務署名
税務署名の欄には、申告先の税務署の名前を記入します。

納付書を税務署でもらった場合、税務署名と税務署番号はすでに印字されています。

申告先以外の税務署で納付書をもらった場合は、税務署名や番号を二重線で訂正して記入します。

・整理番号
整理番号は、税務署が決めた納税者の管理番号です。

整理番号はマイナンバーとは違うため把握していないこともあり得ますが、その場合は記入しなくても問題ありません。

・納期などの区分
納期などの区分の欄には、(自)の欄に贈与があった年を記入します。

月を記入する必要はありません。申告区分については、期限内の申告であれば「4」を記入します。修正申告の場合は「5」と記入します。

・本税・合計額
本税・合計額の欄には、計算した贈与税の金額を記入します。

合計額を書く欄には、必ず「\」を記入しましょう。

・住所・氏名・電話番号
住所・氏名・電話番号の欄には、財産をもらった人(受贈者)の住所・氏名・電話番号を記入します。氏名は漢字だけでなく、フリガナも記入してください。

電話番号は、固定電話でも携帯電話でも構いません。

3.税務署、銀行もしくは郵便局で納付

記入した納付書があれば、税務署・銀行・郵便局で贈与税を納付できます。

贈与税の納付に手数料は不要で、納付後に領収証書が発行されます。納付書を使って納税する際、クレジットカードは利用できないので注意しましょう。

贈与税を納付する6つの方法

贈与税を申告したら、税金を納付します。納付方法は以下の6つです。それぞれの方法について詳しく解説します。

1.「ダイレクト納付」で納付する方法

ダイレクト納付とは、「e-Tax」を利用した口座振替による納付のことです。

e-Taxとは「国税電子申告・納税システム」のことで、所得税や贈与税、消費税などの申告や納税に利用できるシステムです。

e-Taxで申告書を提出し、税務署に「ダイレクト納付利用届出書」(以下、利用届出書)を提出することで納付が可能となります。

手続きを行うと、納税者名義の預貯金口座から引き落とされる形で贈与税が納付されます。納付のタイミングは即時、または指定した期日です。

ダイレクト納付が可能になるまで、時間がかかります。e-Taxで利用届出書を提出した場合は1週間程度、書面で提出した場合は1ヵ月程度です。

贈与税の申告がスタートしてから利用届出書を提出した場合は、期限内に贈与税を納付できないかもしれません。

ダイレクト納付を考えているのであれば、納付期間が始まる前に書面の利用届出書を提出するか、e-Taxで利用届出書を提出するようにしましょう。

2.「インターネットバンキング」で納付する方法

贈与税は、インターネットバンキングやATMを利用して納付することもできます。

利用するには、事前にe-Taxの利用開始手続きを済ませておかなければなりません。利用するための手順は、以下のとおりです。

・ インターネットバンキングの口座を開設
・ e-Taxの利用開始手続きを行う
・ インターネットバンキング経由で納税

ペイジーを利用できる金融機関であれば、インターネットバンキング経由で納付できます。

※ペイジー
ネットショッピングや税金をパソコンやスマホ、ATMなど支払えるサービスのこと。

インターネットバンキングを利用すると、ほぼ24時間贈与税の納付が可能になるので非常に便利です。

3.「クレジットカード」で納付する方法

クレジットカードを使って贈与税を納めることもできます。

インターネット上で行われるクレジットカード決済を利用して、国税庁長官が指定した納付受託者(令和5年度はトヨタファイナンス)が国税を立て替えて納付します。

その後、納税者はクレジットカード会社を通じて納付受託者に納税額を支払います。納付の手順は以下のとおりです。

・ 専用サイトで必要事項を入力
・ 納付の立替払いを「納付受託者」に依頼
・ 納付受託者が納税者にかわって贈与税を納付
・ クレジットカード会社が納税者に立替払い額と手数料の合計額を請求

クレジットカード納付の限度額は、1回の手続きにつき1,000万円以下です。利用可能なクレジットカードは以下のとおりです。

・ Visa
・ Mastercard
・ JCB
・ American Express
・ Diners Club
・ TS CUBIC CARD

上記のカード以外は利用できないので、利用前にカード会社を確認しておきましょう。

納付時にかかる手数料は以下のとおりです。

納付税額決済手数料(税込)
1円~10,000円83円
10,001円~20,000円167円
20,001円~30,000円250円
30,001円~40,000円334円
40,001円~50,000円418円

50,001円以降も10,000円を超えるごとに手数料が加算されます。正確な手数料を知りたい方は、国税クレジットカードお支払いサイトで確認してください。

4.「コンビニエンスストア」で納付する方法

QRコードを使ってコンビニエンスストア(以下、コンビニ)で贈与税を納付することもできます。

納付に必要なQRコードは自宅のパソコンなどで作成でき、国税庁長官が指定した納付受託者であるコンビニで納付できます。コンビニ納付の手順は、以下のとおりです。

・ 自宅でQRコードを作成して出力
・ コンビニの端末でQRコードを読み取らせて納付書を出力
・ コンビニの窓口で納付

コンビニ納付用のQRコードは国税庁のサイトで作成できます。利用できるコンビニは以下の4つです。

・ ローソン
・ ナチュラルローソン
・ ミニストップ
・ ファミリーマート

ローソン・ナチュラルローソン・ミニストップは「Loppi」端末設置店のみ、ファミリーマートはマルチコピー機設置店のみでQRコードを出力できます。

ただし、納付できる金額は30万円までなので、それ以上の場合は他の方法で納付しなければなりません。

「スマホアプリ」で納付する方法

贈与税、国税スマートフォン決済専用サイトを利用して納付することもできます。

利用の手順は、以下のとおりです。

・ 専用サイトへアクセスする
・ 利用するPay払いを選択して納税する

利用できるPay払いは以下のとおりです。

・ PayPay
・ d払い
・ au PAY
・ LINE Pay
・ メルペイ
・ Amazon Pay ・ 楽天ペイ

アカウントの残高が不足していると支払えないため、事前にチャージしておきましょう。

納税金額の上限は30万円であるため、それを超える場合は他の方法で納付しなければなりません。

「金融機関または所轄の税務署の窓口」で納付する方法

従来どおり、納付書を使って現金で納付することもできます。

その場合は、指定されている金融機関か所轄の税務署の窓口で現金を納付します。窓口納付を選択すると、クレジットカードでは納付できません。

贈与税を支払う時の注意点3つ

贈与税を支払う時に注意すべき点が3つあります。

延滞利子がかかる点と物納ができない点、払い過ぎた贈与税の更生請求ができる点です。それぞれの内容を見ていきましょう。

1.期限内に支払えない場合は延滞税がかかる

期限内に贈与税を納めなかった場合は、延滞税を支払わなければなりません。

税務署に申請して延納が認められた場合でも、利子税を支払わなければなりません。ここでは、延滞税と利子税について解説します。

・延滞税

納付期限までに贈与税が納付されなかった場合は、延滞利子に相当する延滞税が自動的にかかります。延滞税が適用されるのは以下の場合です。

・ 贈与税の申告で確定した金額を期限内に納付しなかった場合
・ 期限後申告書や修正申告書の提出後に納付すべき税金がある場合
・ 更生または決定の処分を受けて納付すべき税金がある場合

これらに該当する場合は、法律で定められた国税の納付期間の翌日から支払われるまでの日数に応じて延滞税が課せられます。

令和3年1月1日以降の延滞税の税率は、以下のとおりです。

納付期限の翌日から2ヵ月を経過する日まで年7.3%
2ヵ月を経過した日以後年14.6%

・利子税

贈与税を期限までに納付することが難しい場合、一定の条件を満たすと5年以内の分割払いで延納できます。延納の条件は、以下のとおりです。

・ 納税額が10万円以上
・ 金銭で一括納税が困難である理由があること
・ 担保を提供すること

延納する税額が100万円以下で延納期間が3年以下の場合、担保は不要です。

延納を認めてもらうためには、贈与税の納付期限(3月15日)または延納申請の期限日までに延納申請書と担保提供書類を税務署に提出しなければなりません。税務署長が提出書類を確認し、延納の可否を決定します。

延納が認められた場合でも、延納することになった税金に年率6.6%の利子税がかかります。

2.贈与税では物納が認められていない

贈与税は必ず金銭で納付しなければならず、物納は認められていません。

贈与税に限らず、原則的に国税は納付期限までに金銭で納入しなければならないと定められています。物納(現物で納める)が認められているのは、相続税だけです。

3.払い過ぎた贈与税の更正請求はできる

贈与税や相続税を払いすぎた場合は、更生請求ができます。更生請求とは、税額が多すぎた場合に減額を求めて行う手続きのことです。更生請求の提出時期は、以下のとおりです。

法定申告期限更生請求の期限
平成22年分の申告法定申告期限から1年以内
平成23年分以後の申告法定申告期限から6年以内
※後発的な理由で構成請求を行うときは、それらの事実が生じた翌日から2ヵ月または4ヵ月後

まとめ

今回は贈与税の支払期限や納付書の書き方、納税方法、支払う時の注意点などについて解説しました。

個人が110万円以上の財産をもらった時に納める税金であるため、あまりよく知られていないかもしれません。

しかし、自分で申告しなければならず、高額の贈与を受けると贈与税も高額になるため、税額の算出方法や手続きについて知っておかなければなりません。

今回の記事を、いざという時に役立てていただければ幸いです。

(提供:ACNコラム