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(画像=monoAI technology株式会社)
山下 真輝(やました まさき)
monoAI technology株式会社 取締役
20歳で起業し、広告代理業や店舗ビジネスなど複数の事業を立ち上げ、拡大させた後売却。その後、SBI証券にて資金調達業務などを担当。 イーファクター(現:metaps)に入社し、アプリリワードサービス『metaps』(メタップス)を立ち上げる。2013年、ライヴエイドを創業し、スマートフォンのアドネットワーク事業『Aid』(エイド)をリリース。ベンチャーキャピタルから億単位の資金調達を実現し、2015年に上場企業へ事業売却。 IoTや民泊事業などを手掛けたのち、2021年より現職
monoAI technology株式会社
monoAI technologyは、「先進技術で、社会の未来を創造する」をミッションとし、通信ミドルウェア事業やXRソリューション基盤の開発、AIを用いたソフトウエア品質保証サービスの開発等で培った最先端技術を生かして、数万人規模で同時接続のできるメタバースプラットフォーム『XR CLOUD』を開発・運営しています。

目次

  1. 営業職がいない困難を乗り越えた組織
  2. メタバーズ事業へ舵を切ったことで生まれた組織課題
  3. メタバース業界への注力により、採用活動では応募数が10倍に
  4. 成長の鍵は現場への権限委譲と社員の自律性
  5. ステークホルダーの皆様へのメッセージ

営業職がいない困難を乗り越えた組織

私たちは3年前、コロナウイルスの流行をきっかけに、メタバース分野へ舵を切りました。それまでは、昔ながらのゲーム制作会社のような企業で、社長が個人で案件を獲得してきて、その案件を社員が遂行するという組織であったため、BtoBのビジネスモデルであるにも関わらず営業職が存在しないという特徴的な組織構造でした。しかし、この組織形態には中間管理職の育成が難しいという問題がありました。具体的には、社長から現場に直接指示を行うので、意思決定は経営層のみで行い、その他の社員は経営陣からの指示を聞いて行動することになります。そのため、新しい事業の立ち上げや推進を行うような優秀な人材が育ちにくい環境になっていたのです。

これを改善するために、組織構造に大幅な変更を加えました。階層を明確に設定し、権限委譲を積極的に行うことで、各部門長が自らの判断で意思決定を行うようにしました。最初は力不足な部分があったとしても、役職を預けて責任範囲を明確に定めたことで、現場社員の意識がかわり、徐々に成長してきましたし、経営陣も注力すべき点に集中することができるようになりました。

また、働きやすい環境づくりについては当社の強みだと感じています。私たちの勤務体制は、フルリモートで働き方の自由度は高く働きやすいです。さらに、リモートの弊害であるコミュニケーション不足や社員同士の関係値が希薄になりやすいという点についても、私たちの事業であるメタバースやボイスチャットを活用することで、オンラインであっても、社員同士が隣りに座っている人に声を掛けるような感覚でコミュニケーションを取れるようになっています。むしろ、常に通信をつなぎながらやっているときは、リアルで出社している会社よりもコミュニケーションをとっているのではないかと思います。この社員同士のコミュニケーションの取りやすさはエンゲージメントの向上や、安心して働ける環境につながっていると思います。

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メタバーズ事業へ舵を切ったことで生まれた組織課題

私たちの組織では、メタバース事業への舵取りと共に、組織課題に直面してきました。組織拡大に伴い、明確な責任分担の欠如やコミットメントの不足が顕著になり、業績への影響が出始めました。組織の多様性が高まる中、役割の曖昧さが進捗の妨げとなり、売上向上の障害となっていました。

この課題に対応するため、メタバース分野に精通する経験豊富な人材の採用を目指しましたが、メタバースは新しい分野のため経験者がいませんでした。そこで、多様なバックグラウンドを持つIT人材を幅広く採用する戦略をとりました。具体的には、ゲーム会社やSIer出身者など、メタバースとは関わりがなくても比較的近い業種の人材を積極的に採用しました。

ただ、この採用面でも当初は思っていたよりもスムーズに進まず、苦戦していました。そこで、従来のゲーム会社のようにリファラル採用に頼る文化から脱却し、人事部を新設して攻めの人事戦略を展開しました。ダイレクトマーケティングや採用サイトの刷新、YouTubeやWantedlyなどを活用した積極的な情報発信により、採用活動を強化しました。

これらの取り組みは、組織の多様性を受け入れ、変化に適応しながら人材育成と組織力の強化を目指す当社の姿勢を表しています。今後も、これらの経験を活かし、人的資本経営を推進していきます。

メタバース業界への注力により、採用活動では応募数が10倍に

monoAI technologyでは、最近の採用活動の改革により、顕著な成果が得られました。書類選考の応募数は、これまでの10倍に増加し、新卒採用の応募者数も5倍に跳ね上がりました。メタバースという革新的な業界への注力が、採用市場において大きな優位性を生み出しました。

この積極的な採用戦略により、社内に新しい風が吹き込まれ、より活気に満ちた文化が形成されてきました。しかし、変革の過程では苦労も多く、社員からの反対意見も頻繁にありました。ですが、組織にとって本当に良い変革であれば、最初は反対があっても、実際に実施してみると何も問題は起きず、むしろ「なぜもっと早く実施しなかったのか」という声が上がるほどの肯定的な反応を得ることもありました。

一例ですが、全社員がリアルに集まる納会の企画には、初めは批判の嵐でした。しかし、当社は完全リモート勤務であり、顔を合わせたことのない社員も多かったため、年に一度の対面の機会は価値があると考え、実施してみたところ、社員からの好評を得ました。その結果、以降も継続して開催されることになりました。

組織体制の変更や採用活動の改革においても、当初は否定的な声が多かったですが、新しい試みに対する不安は当然であり、時には強引にでも改革を進めてみる価値があることを実感しました。

成長の鍵は現場への権限委譲と社員の自律性

当社は、これまでの管理スタイルから一新し、各部署により大きな権限と責任を委ねることで、部署ごとに自律的に試行錯誤が繰り返されることを重視しています。過度な経営陣の介入を避け、従業員が自身の目標に向けて自ら考え、PDCAサイクルを回すことができる環境を整えています。これにより、従業員の責任感や意思決定能力が育成され、結果的に管理職としての能力が向上すると考えています。

私たちは、自ら意思決定し、自律的に行動できる人材を育てることが、会社の拡大と未来の成功に不可欠であると考えています。業界の変動が激しい中で、それぞれの組織が独立して行動できる体制をつくることで、迅速な意思決定とそれに合わせた方向転換ができる組織を目指しています。この体制が、社会の変化への対応力と展開の速さを高め、競合優位性になるという考えです。特に、メタバースという急速に変化する業界においては、新しいビジネスモデルの構築と事業展開のスピードが非常に重要です。

したがって、社員に対して期待することは自律性です。会社として設定した目標に対し、部長やマネージャーが、目標達成のために最善な施策や行動を考え、実行に移すことを期待しています。

ステークホルダーの皆様へのメッセージ

私たちがメタバースの分野に挑戦し始めた頃は思うような成果が得られず、自分たちの事業が社会やお客様にとって本当に必要なものであるという自信を持てていませんでした。その結果、社員のエンゲージメントも目に見えて低下していました。

しかし、最近ではメタバースに対する社会の理解度も上がり、市場のニーズにピンポイントで応えることができるようになってきました。この変化は、社員のモチベーションと会社の活気を大きく高めています。これまで必要性を感じてもらうことが難しかったメタバースがBtoB市場で実際に機能し、価値を提供する道が見えてきたのです。

現在は、XR分野のリーディングカンパニーとしての地位を築くことを目標として、XR分野に特化したSIerのような立ち位置を確立し、事業と組織のさらなる成長に取り組んでいます。この分野での独自性と専門性を強化し、上場企業として唯一のポジションを取ることで、安定的な成長を目指します。

私たちはメタバースという未知の領域を探求し、革新的な価値を創造することに全力を尽くします。ステークホルダーの皆様には、これからの我々の進化にご期待いただければ幸いです。

氏名
山下 真輝(やました まさき)
会社名
monoAI technology株式会社
役職
取締役

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