業容が大きく変化

KPPグループが海外でのビジュアルコミュニケーション事業やパッケージ事業に力を入れる選択をしたのは、オーストラリアのSpicersと、フランスのAntalisの子会社化による影響が大きい。

Spicersは商業印刷用紙や包装資材、紙関連製品などを販売しており、2021年12月期の売上高は303億円。

一方、Antalisは紙関連製品の販売のほか、パッケージやビジュアルコミュニケーション事業を手がけており、2021年12月期の売上高は2367億円だった。

KPPグループの2022年3月期には、売上高5634億円のうちの2671億円分を、同期の営業利益93億円のうちの75億円分を両社が稼ぎ出した。

これは前中期経営計画の最終年である2019年3月期の業績(売上高3849億円、営業利益22億円)と比べ、1.46倍の増収、4.11倍の営業増益となり、両社の寄与度が際立つ結果となった。

また事業構成比も大きく変化し、第2次中期経営計画では第1次中期経営計画には無かったパッケージとビジュアルコミュニケーションが13.8%と5.5%を占めた。それまで4事業だったのが6事業に増え、事業の多角化も実現した。

この成功が第3次の中期経営計画に引き継がれ、海外を中心としたパッケージとビジュアルコミュニケーション分野でのM&Aが増えているのだ。

さらにKPPグループは2022年10月に持ち株会社体制に移行し、日本を含む北東アジアを国際紙パルプ商事が、欧州と北米、南米をAntalisが、オセアニアと東南アジア、インドをSpicersが、それぞれ管理する体制を敷いた。

2025年3月期の売上高目標の6500億円のうち、国際紙パルプ商事で3200億円、Antalisで2700億円(欧州2500億円、北米、南米200億円)、Spicersで600億円(オセアニア350億円、東南アジア、インド250億円)を見込んでおり、この目標を達成するためにも、手薄な欧米やアジアでのM&Aを活発化させている。

M&A路線をひた走る

KPPグループは1924年11月に大阪で創業した大同洋紙店が始まりで、今年(2024年)11月に創業100年を迎える。

創業から36年後の1960年に本店を東京に移したあとは、合併を繰り返し、成長してきた。

最初の合併は1975年で、相手は大成紙業だった。1999年には日亜と合併し、社名を国際紙パルプ商事に変更。2006年には服部紙商事と、翌2007年には柏井紙業と、2013年には住商紙パルプと合併した。

2018年に東京証券取引所市場第一部に上場したあとは、M&Aの時代が訪れ、現在はM&A路線をひた走っている状況だ。

第3次中期経営計画の2年目に当たる2024年3月期は、売上高6500億円(前年度比1.5%減)、営業利益170億円(同16.7%減)を予想する。減収減益ながら第3次中期経営計画の目標数字(売上高6500億円、営業利益145億円)を前倒しで達成できる見込みだ。

実は前年度の2023年3月期は、北東アジア、欧州、南米、オセアニアで、紙事業を中心とした販売価格の上昇に伴う一過性の在庫売買益があり、過去最高の業績(売上高6596億5600万円、営業利益204億100万円)となった。このため現中期経営計画は初年度に目標数字を達成したことになる。

2024年3月期は、この一過性の利益がなくなるため減収営業減益となるもので、この流れを受けた2025年3月期の数字は、どのようなところに着地するだろうか。

今後も活発なM&Aが続くようであれば、目標達成の可能性は高いとみてよさそうだ。

M&A Online
(画像=2024/3は予想、「M&A Online」より引用)

文:M&A Online