スカパーJSAT株式会社アイキャッチ
(画像=スカパーJSAT株式会社)
松谷 浩一(まつたに こういち)
スカパーJSAT株式会社
(インタビュー時)執行役員専務メディア事業部門長 兼 経営管理部門長
(現)執行役員専務メディア事業部門長
1965年8月1日生。九州大学大学院 工学研究科修了。1990年に日本通信衛星株式会社(現スカパーJSAT株式会社) 入社 。 2024年より取締役 執行役員専務メディア事業部門長 兼 経営管理部門長。(現任)
宇宙事業とメディア事業を両輪とする国内唯一の事業会社です。宇宙事業では30年以上にわたり静止軌道衛星を保有・運用し、現在はアジア最多17機の静止衛星を介して「スカパー」の伝送や航空機・船舶向けインターネット回線、災害時のバックアップ回線など様々な衛星通信サービスを提供しています。また、超スマート社会の実現に向けて、すべての空間を対象とした革新的な通信ネットワーク及び地球規模のデータ収集ネットワーク構築を推進しています。メディア事業では、有料多チャンネル放送サービス「スカパー」、動画配信サービス「SPOOX」に加え、光回線を経由した地上波・BSならびに「スカパー」の再送信サービスを提供するFTTH事業にも取り組んでおります。また、保有する様々なアセットを活用してお客様の課題解決を支援するメディアソリューション事業にも進出し、ビジネスの多角化を目指しております。

変革期を生き抜いたスカパーJSAT

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(画像=スカパーJSAT株式会社)

ーー人的資本経営におけるこれまでの取り組みについて教えてください。

まずはスカパーJSATの変遷からお伝えします。スカパーJSATは、1985年に衛星会社として設立され、1989年に最初の衛星が打ち上げられ、事業が始まりました。バブル崩壊前に事業を開始し、事業統合をしながら拡大していく間、失われた30年と言われる時代がありましたが、スカパーJSATはその最初の頃から事業を成長させていくことにフォーカスをしていました。しかし、事業を始めて30年以上が経過し、ビジネスフィールドも含めて変革が必要となってきました。その変化のひとつとして、世の中では人的資本が重要視されており、スカパーJSATもそのフェーズに入っています。その変化に伴いビジネスドメインや戦略が変わることで、今までの人材戦略や企業文化ではギャップが生じるでしょう。そこで、組織や個人の行動、スキルやアビリティも変えていく必要があります。

その上での取り組みとして、人事制度の変更を行いました。これまでの年功序列的な制度ではなく、職務級に移行することで、職能と役割、能力を分け、マネジメント職は、そのレベルに応じた報酬が支払われるようにしました。また、ジョブ型雇用制度も導入されています。一方、制度を変えるだけでは十分ではなく、個々人が自らスキルアップを図らなければなりません。そのため資格取得を推奨し、セミナーを開催して動機づけを図ることも重要だと考えています。

また、スカパーJSATではリモートワークを認めており、週に何回出社するかというルールも設けていません。加えて働き方改革の一環として、子育てや介護を抱える従業員に対しても柔軟な働き方が可能になっています。実際に、コロナ禍でリモートワークが普及したことで、休職せずに働ける従業員が増えました。これにより、会社としても従業員の能力を継続的に発揮できるようになっています。今後は個人の能力スキルの定義から、実際の数値化までを可視化するタレントマネジメントシステムを導入することで、更なる働き方改革を進めていく予定です。

時代の変化に応じた新しいリーダーシップとは

ーー人的資本経営においてどのような点に苦労していますか。

一番ハードルが高いと感じているのは、中間管理職層のリーダーシップやマネジメントスキルを向上させることです。

日本の企業は、終身雇用制度が主流で、入社時から定年までの給与分の資産があり、それを毎年企業で取り崩していくというスタイルが一般的でした。しかし、画一的な同質性が求められる時代から、現在は多様性が求められる時代へと移り変わっています。これに対応するためには、中間管理職が多様性を受け入れ、それぞれの個性や状況を考慮した上で組織全体をまとめる力が必要です。そのため、中間管理職の研修が重要であると考え、組織のメンバーの心理的安全性を担保しながら、組織の生産性を向上させるにはどうするか、などマネジメント研修に力を入れています。合わせて、これまでの画一的で平等なマネジメントから、各従業員の事情に合わせたうえでの公平なマネジメントへとシフトすることが求められているため、評価制度も変わってきています。これにより、評価者である中間管理職にも大きな負担がかかりますが、このハードルを乗り越えることが企業文化改革において最も重要だと考えていますし、中間管理職が力を発揮することで、組織全体が実質的に動くようになると考えています。

スカパーJSATが目指す次のステージ

ーー取り組みに対してどのような変化がありましたか。

まだ始まったばかりですが、徐々に従業員の意識が良い方向へ向かってきていると感じます。次のステップをよりうまく回すためには、中間管理職の部分がうまく回ることが重要です。 100%の正解はないので、様々な気づきを活かして、人事制度の改善や研修の教育プログラムを見直す必要があります。そのうえで、組織で必要なスキルやアビリティ、コンピテンシーをうまくマッピングし、人材ポートフォリオを作ることが重要です。これらの方向性を従業員一人一人に示し、各組織がそれに向かって動いていければと思います。

自らのキャリア設計と企業との対話

ーー従業員に対してどのようなことを期待しているのでしょうか。

私たちが従業員一人一人に期待することは、自分のキャリアを自分で築くことです。会社と従業員はお互いに支え合っており、私たちはその場を提供し、従業員は能力を発揮する場です。だからこそ、どんどん自分で能力を開発していってほしいと思っています。また、不満や不足している部分があるならそれを解消できるような建設的な意見を求めています。

そして、管理職の方々には、彼らの動きが会社の成長に大きく影響し、部下たちにも良い影響を与えると考えているため、積極的に自分の能力開発に取り組んでほしいと思っています。そのため会社としてリーダーとしての素質やマネジメントスキルを学べる環境を提供していくことは継続していきたいと考えています。

スカパーJSATからステークホルダーの皆様へメッセージ

ーーステークホルダーの皆様へメッセージをお願いします。

まずは取引先様に対してです。組織の人材戦略の変革など様々な取り組みを通してのスカパーJSATの変化は、従業員一人一人の取引先様との接し方やご提案の中で現れるものであると考えており、お客様からは良い変化があったと感じていただけるように尽力していきたいと考えています。スカパーJSATから良い提案をさせていただいたり、成果として現れることで、取引先様から今まで以上に信頼されるようになりたいと考えています。

また投資家の方にとっては、結果が数字として現れることが重要だと考えています。売り上げや利益が増えることがなければ、人的資本経営と言っても評価されません。お客様に提供している価値を評価していただけることによって、利益が上がることになり、最終的には数字で結果を出して株主様からも良い会社として評価されることを目指しています。

これからもスカパーJSATが提供するサービスの価値を高め、ステークホルダーの皆様に評価されるよう努力してまいります。どうぞ宜しくお願い致します。

氏名
松谷 浩一(まつたに こういち)
会社名
スカパーJSAT株式会社
役職
(インタビュー時)執行役員専務メディア事業部門長 兼 経営管理部門長
(現)執行役員専務メディア事業部門長

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