目次
贈与税は相続税と並んで税率が高い税金として知られています。
それだけに贈与税を何とかして納めずに済む方法はないかとネット検索をしている人も多いことでしょう。
贈与を受けたにもかかわらず申告をせずに済ませてしまうと、脱税や申告漏れを指摘される恐れがあります。それでは実際に贈与税を申告しないとどうなるのでしょうか?
本記事では、考えられる展開やペナルティについて解説します。また、合法的に贈与税をゼロもしくは少なくできる方法を紹介します。
- 贈与税の無申告が税務署にバレる代表的なケース
- 贈与税の無申告に対するペナルティの種類と加算税率
- 合法的に贈与税を節税する方法
贈与税を申告しないとこうして税務署にバレる
ひとつの結論として、贈与税が発生するような贈与を受けたにもかかわらず申告しないと、遅かれ早かれ高い確率で税務署にバレます。
そして無申告だったことを指摘され、ペナルティを受ける恐れがあります。
それでは、なぜ贈与税の無申告が税務署にバレるのでしょうか。よくある3つケースを中心に解説します。
1. 相続税の税務調査で無申告がバレる
相続税の課税対象になるような相続があると申告の義務が生じます。
適法に相続税の申告をしたとしても、何かそこに不自然なことがあったり、確認を要することがあったりすると税務調査が入ることがあります。
税務調査が入ると、被相続人(故人)の銀行口座など財産状況も調べられます。
そのときに被相続人の生前に大きな金額の出金があると「そのお金は贈与されたのではないか?」と疑われる可能性があります。
贈与があったときにはバレずに済んだと思っていても、その後に発生した相続の段階でさかのぼってバレるケースも多々あるのです。
家族間で現金の手渡しをしたからバレないと思うのはハイリスクといえるでしょう。
2. 不動産の購入時や登記時にバレる
受贈者(贈与を受けた人)が、贈与されたお金を元手に不動産など大きな買い物をすると、そのお金の出どころを確認するために税務署から「お尋ね」が届くことがあります。
税務署は常に贈与税に関する情報収集をおこなっています。
ある人が不動産を購入したものの、それが収入に対して不釣り合いな金額だと、「まとまったお金が入ったのでは」との仮説を立てます。
その確認のために「お尋ね」が届き、その回答によっては税務調査が入るという流れになります。
不動産は登記をすることで所有権の移転が明確になるため、大金が入ったのではないかと目を付けられやすいといわれています。
3. 生命保険金で贈与をした場合法定調書からバレる
法定調書とは、さまざまなお金の流れについて税務署への報告をする書類のことです。
法定調書の提出が義務づけられているものには給与所得の源泉徴収票や投資による配当金、利子の支払いなどがあります。
そのなかに「生命保険契約等の一時金の支払調書」があります。これは生命保険の保険金などを支払った場合に提出される支払調書です。
そのなかで保険の契約者と受取人が異なる場合は、生命保険を介した贈与であると見なされ、税務署にバレるというパターンがあります。
4.その他にもバレるケースは多数|税務署に通報されることもある
上記の3つのパターン以外にも贈与税の申告をしていないことがバレるケースは多数あります。
不自然なお金の流れがあれば疑われやすくなりますし、別件で税務調査が入った際に発覚することもあります。
意外に多いのが、贈与や相続の利害関係者のなかに不満を持っている人、妬みの感情を持っている人が税務署に通報するといったケースです。
「人の口に戸は立てられぬ」という言葉もあるように、人の噂話から贈与税の無申告がバレる可能性もあります。
家族間で現金の手渡しをしただけなのでバレないと思うのは早計で、何らかの形で遅かれ早かれバレると思っていたほうがよいでしょう。
贈与税の無申告に対するペナルティの種類3つ
ここまでは贈与税の申告をしなかった場合、そのことがバレる可能性について解説してきました。それでは、本当にバレた場合にはどうなるのでしょうか。
ここでは贈与税の申告をしなかった場合に考えられるペナルティについて解説します。
1. 無申告加算税|うっかり申告するのを忘れていた場合
「申告するのをうっかり忘れていた」という、悪質性が低い場合に適用されるのが無申告加算税です。
「うっかり忘れ」なので、どのタイミングで気づき申告をしたかによって加算税率が異なります。
税務調査の連絡が来る前に自分で気づき、自主的に申告した場合の加算税率は5%ですが、それが税務調査からの連絡後になると10%~15%です。
さらに、税務調査によって無申告が発覚し、指摘されてから申告をした場合は加算税率は15%~20%です。
2. 過少申告加算税|申告額が実際よりも少なかった場合
贈与税の申告をしたものの、申告額が実際よりも少なかった場合は、過少申告加算税の対象になります。この場合も修正の申告をした時期によって加算税の税率が異なります。
税務調査の連絡が来る前に自分で気づき、自主的に申告した場合は加算なしです。
税務調査の連絡後、まだ指摘を受ける前に申告した場合は5%~10%、税務調査で申告されたうえで修正の申告をした場合は10%~15%です。
こちらについても前項と同様に、「バレてから申告」になると税率が高くなります。
3. 重加算税|あえて贈与税の申告をしなかった場合
ここで紹介している税金のペナルティのなかでは最も重いのが重加算税です。
「バレなければOK」とばかりにあえて贈与税の申告をしなかった場合に適用されます。
無申告であることがバレた場合は40%、申告はしたものの過少申告だったことがバレた場合は35%です。
しかも過去5年以内に贈与税の無申告加算税、もしくは重加算税を課されたことがある場合はそれぞれ50%と45%になるため、「前科」がある人はさらにペナルティが重くなります。
知っておきたい贈与税3つの基礎知識
そもそも贈与税とは、どんな税金なのでしょうか。ここでは贈与税に関する基礎知識をおさらいしておきましょう。
これらの仕組みを理解すると、合法的に贈与税を少なくできる方法への理解も深まります。
1.贈与税の税率|課税対象額が大きくなるほど税率は高くなる
最初に、贈与税の税率を見てみましょう。こちらは、贈与税額別の税率一覧です。
基礎控除後の課税価格 | 一般税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
贈与税には累進性といって、課税対象額が大きくなるほど税率が高くなる特性があります。
親子など直系尊属からの贈与には特例税率が適用され、特例税率のほうが若干ですが税負担は少なめになっています。
2. 贈与税の基礎控除は年間110万円
贈与税には、基礎控除があります。その金額は110万円です。贈与税の課税対象額から一律110万円を差し引くことができます。
年間の贈与額が110万円以下の場合は基礎控除によって全額が差し引かれるため、実質的に110万円以下の贈与は非課税です。
3. 暦年課税と相続時精算課税の違い
贈与税には、暦年課税と相続時精算課税という2つの課税制度があります。
・暦年課税|手続きをしなければ暦年課税が適用される
通常何も手続きをしなければ暦年課税になっており、上記の110万円の基礎控除も暦年課税に適用される制度です。
・相続時精算課税|受贈者の任意によって選択できる
この暦年課税に対して、受贈者の任意によって選択できるのが相続時精算課税です。
贈与時ではなく相続時に課税されるもので、この制度を利用すると最大2,500万円までを生前のうちに非課税で贈与をすることができます。
一度相続時精算課税を選択すると、二度と暦年課税に戻すことはできません。それだけに慎重な判断が求められるわけです。
そこまでして相続時精算課税を選択する人がいるのは、大きな節税メリットがあるからです。
合法的に贈与税を節税する方法を解説
税務署に睨まれることはしたくはないものの、贈与税は税率が高いだけに少しでも税金を節約したいと思うものです。
生前贈与を絡めた相続税対策を考えている人にとっても、贈与税の節税は大きな関心事でしょう。
ここでは、合法的に贈与税を節税できる方法や各種制度を紹介します。
1. 基礎控除110万円を活用し毎年少しずつ贈与していく(暦年贈与)
年間110万円ある基礎控除枠を活用して、毎年少しずつ贈与していく方法です。とてもポピュラーな方法で、暦年贈与と呼ばれています。
あくまでも理論上の計算ですが、毎年110万円ずつ20年間暦年贈与を続けていけば、合計で2,200万円分の贈与を非課税でできることになります。
ただし、この方法にはいくつかの注意点があります。暦年贈与をする場合は、下記の注意点に留意してください。
・暦年贈与3つの注意点
暦年贈与は方法を間違えると一連の贈与が一括のものであると見なされ、基礎控除の活用が認められないことがあります。
それ以外のリスクも含めて、以下の3点に注意してください。
1. 一括贈与と見なされないように工夫する
毎年同じ金額を同じ時期に贈与していると、一連の贈与が一括贈与であると見なされ、節税スキームが無効になる恐れがあります。
そこで時期や金額を毎年変えて贈与するなどの工夫が必要です。
少しだけ基礎控除枠をはみ出して贈与し、そのはみ出した分を申告・納税することで毎年異なる内容の贈与をしている証拠を残すのもひとつの方法です。
2. 贈与を受ける口座は受贈者が管理する
贈与者が管理している口座に入金し、その口座を受贈者に渡す形をとると「名義口座」といって実際の口座管理者は贈与者であると見なされる恐れがあります。
入金される口座は受贈者が管理し、贈与の実態をしっかりと作っておくことが重要です。
3. 基礎控除は受贈者1人に対して年間110万円
年間110万円まで認められている贈与税の基礎控除は、受贈者1人に対して110万円です。
同じ人が複数の人から贈与を受けた場合、その合計が110万円を超えると贈与税の課税対象になります。
2人から110万円ずつ贈与を受けた場合は合計220万円になるため、超過した110万円分は課税対象になります。
2.特例に該当する場合は活用する
贈与税には、さまざまな特例や控除があり、それぞれ条件が定められています。
こうした条件に該当する場合は活用する価値が高いので、このなかに該当するものがないかチェックしてみてください。
1. 住宅取得資金の贈与|子や孫に住宅取得のための資金を援助
贈与者から見て子や孫に対して、住宅取得のための資金を援助する場合は「住宅取得資金の贈与」が適用され、最大で1,000万円までの贈与が非課税になります。
子や孫がマイホームを建てる際、マンションなどを購入する際に有効です。なお、住宅取得資金の贈与は期間が限定されており2026年12月31日で終了です。
2. 教育資金の一括贈与|子や孫に教育資金として贈与
贈与者から見て子や孫に対して、教育資金として贈与をする場合は「教育資金の一括贈与」が適用され、1,500万円までが非課税になります。
大学などの入学金、授業料、学費などに用いる資金が対象ですが、学校に直接支払うお金以外にも習い事や学習塾に支払うお金も対象になります。
3. 結婚・子育て資金の一括贈与|子や孫に結婚や子育てのための資金を援助
贈与者から見て子や孫に対して、結婚や子育てのための資金を援助する場合は、1,000万円までの贈与が非課税になります。
結婚や子育てにはお金がかかるので、親や祖父母から援助を受ける人は多いと思います。対象となるお金の使い道の範囲が広いので、適用しやすい特例といえます。
4. おしどり贈与|2,000万円まで非課税で贈与ができる
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、配偶者へ自宅や自宅購入資金を贈与した場合、基礎控除額(110万円)のほかに2,000万円まで非課税で贈与ができる特例です。
正式名称は配偶者控除ですが、婚姻期間が20年を超える夫婦が対象となっているため、オシドリになぞらえて「おしどり贈与」とも呼ばれています。
3. 日常的に生活費を渡している場合は贈与税の対象にならない
夫婦や親子、兄弟姉妹などの近親者が生活費のために日常的にお金を渡している場合は、贈与税の課税対象とはなりません。
もちろん「日常的な生活費」の常識的な範囲を超えると認められない可能性が高くなるため、生活費の名目で受け取ったお金で投資をするなどといったことはできません。
対象となるのは日常的な生活費や教育費、介護費、お小遣いなどです。
4. 相続時精算課税制度の3つメリット
受贈者側が選択して手続きをすると、暦年課税から相続時精算課税に切り替えることができます。
相続時精算課税を選択すると贈与時には最大2,500万円分までが非課税になり、2,500万円を超えた分についても税率は一律20%になるため比較的低率です。
贈与時には非課税となりますが、この贈与分は相続時に精算されるため、相続時精算課税と呼ばれています。
贈与時に課税されないだけで相続時に精算されるのであればメリットがないように見えます。
しかし、以下のような場合は相続時精算課税を選択したほうがメリットは大きくなります。
1. 今後値上がりしそうな財産を生前のうちに贈与して相続財産の増大を防ぐ
2. 資産を生み出す不動産などを生前贈与して贈与者(被相続人)側の財産増大を防ぐ
3. 一時的に価値が暴落した株式などを価値が低いときに贈与する
贈与税に関する疑問や不安がある方におすすめの対処法3つ
すでに贈与を受けた財産があるものの申告をしていない、今後贈与を受ける予定がある、といったように贈与税に関する疑問や不安がある方もいることでしょう。
のなかで、「このままではまずいかも」と思ったら、以下の3点を理解し、可能なものは実践しましょう。
1. すでに贈与を受けている場合|課税対象であるかを確認するか税理士に相談をする
すでに贈与を受けて申告をしていない場合は、その贈与が贈与税の課税対象であるかを一度チェックしてみてください。基礎控除の範囲内であれば申告の必要はありません。
それ以外にも生活費として受け取ったお金であれば贈与と見なされないため、「課税対象であるか否か」をチェックすることから始めましょう。
もし課税対象であると思われる、もしくは疑わしい場合は、できるだけ早めに税理士に相談しましょう。
ペナルティの章で解説したように、時期が早く自主的な申告であればペナルティを軽くすることも可能です。
2. 贈与者が存命の場合|一度返却し再度合法的に贈与を受ける
贈与を受けた事実はあるものの、贈与者が今も存命である場合もあります。
この贈与が課税対象だと思われる場合は、一度贈与者に返却して再度合法的に贈与を受けるのが無難です。
合法的な贈与については当記事で解説している暦年贈与や各種特例の活用などを参考にしてください。
3. すでに贈与財産を使ってしまっている場合|できるだけ早く税理士に相談
課税対象と思われる財産の贈与を受けたものの、すでにそのお金を使ってしまっている場合も、できるだけ早く税理士に相談し、申告することをおすすめします。
そうすることでペナルティを軽くできる可能性があります。
まとめ
贈与を受けたのに贈与税の申告をせずに放置しているといつかはバレてしまい、思わぬペナルティを受けてしまう可能性があります。
家族間で現金の手渡しをしただけ、と思っていても税務署の目は節穴ではありません。
仮にバレなかったとしても、いつバレるかと思いながら不安を抱えて生活をするのも精神衛生上よくないでしょう。
当記事では合法的に贈与税をゼロもしくは少なくできる方法を解説しているので、こうした方法を活用しつつ、賢い節税を心がけましょう。
(提供:ACNコラム)