事業承継マッチングプラットフォーム「relay」を運営するライトライト(宮崎市)は17日、一般財団法人KIBOW(東京都千代田区)が運営する「KIBOW社会投資ファンド」との共催で、「成果報告会2024〜事業承継が地域に与えるインパクトとは〜」を開いた。
全国の自治体から注目される「relay」
「地域に、光をあてる。」をミッションとする同社が事業承継をきっかけに、住みたい人が住みたい町に住み続けられる、持続可能な地域の未来を実現するための道筋と具体的な取り組みや、現在の進捗状況、社会的インパクトについて報告した。
イベントでは事例報告のほか、連携自治体とのパネルディスカッションや事業承継経験者とのトークセッションなどがあり、オンラインを含めて170人の参加者が熱心に話を聞き入っていた。
冒頭、ライトライトの齋藤めぐみ取締役がrelayの成果を発表した。自治体連携では初めての事例となった宮崎県高原町では、事業承継に取り組んだ8件中、書店や中華料理店、カフェなど4件が事業承継に成功。残る事業も事業承継や第二創業に向けて準備が進んでいるという。
同えびの市や鹿児島県大崎町、鳥取県などの自治体と連携した事業承継では、ビジネスだけではなく移住支援など生活を含めた全面的なサポートを受けられることから後継者候補も多い。自治体にとっても現役世代の移住や地元産業の振興、雇用の維持・創造といった豊富なメリットからrelayへの関心が高まっているという。
「事業承継の障壁には何があるか?」との質問に対しては「譲渡する側の意向のすり合わせや、引き継ぐ側の資金不足などが障壁となる事例が多い」(齋藤取締役)、「デューデリジェンス支援はあるのか」との質問には「弁護士パックや社内の事業承継士による支援を受けられる」(同)など、活発な質疑応答があった。
地域を守るためにも事業承継は重要な取り組み
パネルディスカッションでは宮崎市の串間豊農政部農業振興課課長補佐兼園芸係長、新潟県糸魚川市の杉本晴一産業部商工観光課企業支援係主事、熊本県あさぎり町の岩本祐一郎商工観光課参事の3名が登壇。
宮崎市の串間課長補佐は「農業の事業承継でrelayを活用し、農業についての情報発信を強化できた」と評価する。糸魚川市の杉本主事は「地域課題として事業承継があり、地元企業とのプラットフォームづくりに取り組んでいた。新潟県がrelayと先行して連携しており、導入はスムーズだった」という。あさぎり町の岩本参事は「県を含めて地域全体が連携しているということが、事業承継に有利に働く」と指摘した。
地域の課題としては「目に見える形で事業が消えると町の活力が落ちる」「新たな企業誘致も必要だが、地域に必要な企業が消えるのは深刻だ。事業承継の重要性はますます高まっている」「農業の事業継承は環境や国土を守るという側面もあり急務だ」などの意見が出た。
登壇者からは「自治体側も事業者と同じ目線で、中長期的に事業承継を進めていく必要がある」「行政が関与することでマッチング事業者も声がけがしやすくなり、事業承継の実績も上がるのではないか」との声も。また、糸魚川市では事前アンケートを実施したところ想定以上の回答が寄せられ、これをもとに6件の事業承継希望案件の掘り起こしを成功させたという。
行政から見た事業承継の注意点については、「他人に事業を譲ることへの恥ずかしさがまだ根強い。成功事例を増やすことで事業承継に前向きの雰囲気を醸成することが必要」「商工会との連携を強化するためにも、自治体は事業承継支援策を事前にちゃんと説明しておくべきだ」「オープンネームは効果があるものの、事業譲渡の公開に抵抗感がある事業者もいる」といった指摘があった。