不動産とDXで「百貨店冬の時代」を生き残る
その一方で、安定した収益が見込める不動産事業は強化。2021年4月に東京・銀座のショッピングセンター「銀座インズ」の物件賃貸を手がける持ち分法適用関連会社の銀座インズ(東京都中央区)を子会社化している。
東京高速道路(同)から銀座インズ株式17.67%を追加取得し、持ち株比率を現在の33.33%から51%に引き上げた。銀座インズの安定的運営と松屋グループとの全体的な相乗効果を引き出すために、経営権を掌握したのである。
2022年2月には、松屋が銀座4丁目交差点近くに所有するショッピング施設「銀座コアビル」を44億3700万円でヒューリック<3003>に売却。オフィスやクリニックなども入居する、延べ床面積2万3736㎡の複合商業ビルとして建て替える。
「銀座コアビル」再開発事業の一環として、2022年7月に不動産賃貸業の大勝堂(同)の株式を追加取得し、11.77%だった持ち株比率を45.84%に引き上げた。その後、大勝堂に自己株式取得を実施させて完全子会社化している。
加えて「百貨店事業の再定義」を目指すM&Aにも乗り出す。2024年4月下旬にはB4F(東京都渋谷区)からブランド商品を取り扱うECサイト「ミレポルテ」の事業を取得する。松屋は銀座店を中核にした百貨店事業を展開。インバウンド売り上げの増加に対応しつつ、オムニチャネルサービスのローンチに向けた準備を進めている。
B4Fからの事業取得に伴うデジタル人材の獲得で、百貨店のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を進展させ、ユーザビリティとホスピタリティを備えた顧客体験の創出を図る。取得した事業は、松屋の新設する完全子会社が譲り受ける予定だ。
松屋の沿革
出来事(有価証券報告書より) |
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1919年3月 東京市神田鍛冶町において株式会社松屋鶴屋呉服店の商号により資本金100万円をもって設立 |
1924年9月 商号を株式会社松屋呉服店に変更 |
1925年5月 本店を東京市京橋区銀座三丁目に移し、主力店舗として基礎を確立 |
1931年11月 東京市浅草区花川戸に浅草支店を開設 |
1937年10月 株式会社東栄商会を設立 |
1944年4月 横浜市伊勢佐木町所在の株式会社寿百貨店を吸収合併し、当社横浜支店と改称 |
1948年4月 商号を株式会社松屋に変更 |
1956年9月 株式会社アターブル松屋(当時株式会社みずほ、後に商号変更)を設立 |
1961年7月 株式会社シービーケー(当時株式会社松美舎、後に商号変更)を設立 |
1961年10月 東京証券取引所市場第二部に株式上場 |
1971年3月 資本金を19億2,000万円に増資 |
1971年7月 東京証券取引所市場第一部に株式上場 |
1976年11月 横浜支店を閉店 |
1986年11月 資本金を44億7,000万円に増資 |
1987年7月 米貨建新株引受権付社債を発行 |
1991年4月 米貨建新株引受権付社債を発行 |
1996年7月 第1回無担保転換社債並びに2000年7月3日満期円建転換社債を発行 |
2006年4月 株式会社アターブル松屋を会社分割し、株式会社アターブル松屋ホールディングス及び6つの事業会社からなる持株会社体制に移行 |
2008年3月 株式会社シービーケーが株式会社エムアンドエーと合併 |
2008年4月 株式会社スキャンデックスが会社分割を実施し、株式会社ストッケジャパンを新設 |
2011年8月 株式会社ストッケジャパンの事業の全部を株式会社ストッケに譲渡 |
2021年4月 株式会社アターブル松屋ホールディングスが同社の子会社3社を吸収合併し、株式会社アターブル松屋に商号変更 |
2021年4月 持分法適用関連会社であった株式会社銀座インズの株式を追加取得し、連結子会社化 |
2022年4月 東京証券取引所の市場区分の見直しにより、東京証券取引所市場第一部からプライム市場に移行 |
2022年7月 株式会社銀座五丁目管財(株式会社大勝堂から商号変更)の株式を追加取得し、連結子会社化 |
2024年4月 B4FからECサイト「ミレポルテ」の事業を取得予定 |
この記事は企業の有価証券報告書などの公開資料、また各種報道などをもとにまとめています。
文:M&A Online