事業環境の変化に、東証改革が加わる

では、2020年以降、再びMBOが増え始めた理由は何か。

一つは事業環境の変化だ。産業界は未曽有のコロナ危機に直面し、さらにウクライナ戦争に端を発する世界的なエネルギー・原料高が襲っている。こうした中、MBOには非公開化で経営改革への意思決定を迅速化する狙いが込められている。

二つ目は2022年4月の東京証券取引所の市場区分変更に伴い、流通株式時価総額や流通株式比率、株主数などの上場基準が厳しくなったことがある。中堅クラスやオーナー系企業にとっては上場維持のハードルが高まる一方、買収リスクの高まりや物言う株主への対応などにより、上場メリットが薄らいでいる状況もある。

もう一つ付け加えれば、東証市場区分変更に際し、上場維持基準を下回っても暫定的に上場を認める「経過措置」が2025年3月以降に順次終了することが見逃せない。経過措置の終了から1年たっても基準を満たせない場合は上場廃止に追い込まれる。こうしたタイムリミットが迫れば、先手を打つ形で自らMBOを通じて非公開化を選択する動きが広がることが予想される。

◎2024年MBO一覧(6月11日時点)

届出月 企業名 上場先 成否
1月 アオキスーパー 東証S 成立
ペイロール 東証G
ベネッセホールディングス 東証P
2月 ウェルビー 東証P
ローランドディー.ジー. 東証P
スノーピーク 東証P
アウトソーシング 東証P
5月 エスライングループ本社 東証S 進行中
日本ハウズイング 東証S
6月 永谷園ホールディングス 東証P

文:M&A Online